14「白銀の豺虎vs海賊②」
「――お姉ちゃん、大丈夫?」
青髪の幼女は心配するような面付きでレイラを見つめ、そして近付いてくる。
レイラは両腕を再生させ、
「君みたいな妹は欲しくないよ!!」
そう言って幼女と甲板を凍らせた。
しかし幼女は氷を砕いて復活し、何事もなかったかのように再びこちらへ歩み寄って来る。
「効かないよ……?」
幼女は顔を歪ませ、狼と熊の人形を操ってレイラへと襲わせた。
レイラは熊の突進を避けたが、狼によって右半身を食い千切られる。
「ああっ!! まだ……!」
レイラは右半身を集中して再生させ、そして氷の刃を熊に飛ばす。
熊の全身に氷の刃が突き刺さったが、熊はこちらを振り向いて平然としていた。
「お姉ちゃんにはわたしを倒せないよ? 本当に勝てないよ?」
「それはどうかな……アタシだって君には負けないよ?」
互いにそう言葉を飛ばし、睨み合う。
最初は幼女が動いた。
幼女は甲板に手を触れ、甲板を破壊してその破片をレイラへと投げつける。
レイラは破片を躱したが、狼と熊の突進に気付けずに真っ向から喰らった。
「ああっっ……!!!!」
レイラは吐血し、甲板の上に倒れる。
「残念……だったね」
「熊さんと狼さんが!!」
レイラは確かに突進を喰らい、吹き飛ばされた。
しかし、突進を喰らった瞬間に熊と狼の体に触れて凍らせていたのだ。
幼女は凍った熊と狼に駆け寄り、氷を砕こうとする。
だが、熊と狼が入った氷はばらばらに砕け散り――狼と熊は姿を消してしまった。
「――う」
幼女はばらばらになった氷の破片に手を置き、今にも泣き出しそうな顔をする。
「うわあぁぁぁぁあああああぁあぁあああああああんんっっ!!!!!!!!!」
幼女はその場で膝を付いて泣き叫ぶ。
その現状にレイラは困惑し、
「泣いても無駄だよ……もう、その子達は戻らないんだから」
「お姉ちゃんの意地悪っ!! よくも、よくも……!!!!」
「ごめんね」
レイラは幼女に手を翳し、
「お姉ちゃん、そんな優しくないから」
幼女を凍らせた。
「まだ幼いのに……」
そう言いながら、レイラは踵を返す。
直後、背後から氷が砕ける音がした。
幼女は熊と狼の人形と同じように、氷の破片となって消えたのだ。
レイラはその音を聞いて唇を噛み締め、トウマ達の方へと急いだ。
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「――っ!!」
「坊や、動きが遅くなってきてるよ?」
「なんのこれしき……!!!!」
僕は女の凄まじい攻撃を防ぎ、腕と足に走る痛みに唇を噛み締める。
「はあああっ!!!!!」
「おおっ、やるじゃん」
僕は女に剣を連続として叩き込み、その際に出てきた懐へ飛び込んだ。
それに女は慌てた素振りをする。
「ちょっ、坊や――流石に抱き着くのは……」
「『龍鬼耀戴』!!!!」
「――!?」
隙を見せた女を、多数の斬撃が襲う。
女は体がばらばらになり、それぞれの部位が大量の血を吹き出す。
「いくら敵であっても、隙を見せたら死ぬよ」
死体と化した女を後に、僕は近くで戦っているはずのエルヴィットへと目をやった。
しかし、どこにもエルヴィットの姿はなかった。
「エルヴィットさん!? エルヴィットさん!!!」
彼女の名を叫びながら、僕は甲板の上を走っていった。
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~トウマが女を倒す少し前~
「――キミ、やるね」
「うるさいのじゃ!!」
「そういうツンツンしたところも可愛いねぇ……おじさん好きになっちゃいそうだよ」
「ひぃっ……気持ち悪いのじゃ!!!」
余は自身の手を噛み、出血させた。
そして血を硬化させて楔のような形にし、巨漢に向けて発射する。
「ふん!!!!!」
巨漢は手に持っていたハンマーを振り回して楔を砕き、そのまま余の方へとハンマーを振り下ろしてくる。
しかし、先ほど砕かれたはずの血の楔が、小さくなってしまったがそれでも浮遊して再び巨漢を襲った。
「のぉっ!!!」
巨漢も流石にこれは予想していなかったのか、全身を楔によって突き刺される。
「まだ……まだおじさんはキミのことを諦めてないよ!!!」
「いい加減諦めろ!!!」
余は硬化したまま巨漢へ突き刺さっている血の楔を更に砕いて、硬化を解除する。
その瞬間、巨漢は自身の胸に触れて悶えだした。
「がああああっ、息が、できない……くる、しい……」
「余の血がお前の血管に流れ込んでしまったからのう」
余の血は人間に注げば毒となる。
即ち、先ほど余が撃ち込んだ血の楔の硬化を解除し、直接血管に流し込むことで心臓を破壊したというわけだ。
「残念じゃったな……余をただの『可愛い娘』などと呼んだ罰だ。ただ、余の血はくれてやる――それだけは感謝するのじゃな」
「ま、だ……」
巨漢は大きな音を立てて倒れる。
余はそれを後ろにトウマの方へ加勢しに行こうとした。
「誰じゃ」
「――」
余は妙な気配を感じ、声をかける。
「流石はエルヴィットだ……俺の気配に気付けるとは」
聞いたことのない男の声がし、余は声の主がいる方へと目を向ける。
そこには仮面を被った男がいた。
「何故余の名前を知っておる?」
「言っておくが、俺はこの世界に棲む全生物の名を知っている」
「それはどういうことじゃ」
「分からんのか?」
仮面の男に、余は警戒心を滾らせる。
「俺は死神だ」
「死神じゃと?」
「そうだとも……吸血鬼であるエルヴィットだからこそ、俺のことが見えた」
「出鱈目を言うなっ!!!!」
余は血の楔を男に放つ。
しかし、楔は男に触れる直前――見えざる壁に衝突するかのごとく砕け散った。
「俺と戦うつもりか?」
「其方が敵であるのならばな!!!」
「はぁ……俺は戦いになど興味はない。このデブが死んだから、ここに来ただけだ」
男は巨漢の死体を浮かばせ、異空間へと送った。
「ほら、俺が死神であることが分かっただろう?」
「確かにそうじゃな……」
本当はよく分からんのじゃが。
面倒ごとは控えておきたいからこそ、適当に返事をするかのう。
「余はここを去るが、死神である其方はどうするのじゃ?」
「死期が近い者のところへと行くだけだ。単純な話だろ?」
余はそんな話をする男を置いて、トウマの方へと向かう。
すると、
「――あなたが死神ですか」
「ちっ、魔王の右腕か」
余の前に、突如として黒髪の少女が姿を現した。
一見ウテナかと思ったが、髪形がツインテールなので違った。
その少女は、何故かは分からぬが死神の男を睨んでいる。
「魔王の右腕じゃなく――マキナと、そう呼んでくれると嬉しいのですが」
「面倒だ。どう呼ぼうが俺の勝手だろ?」
「あのぅ……」
余は気まずくなり、マキナと名乗る少女に声をかける。
「余は帰っていいじゃろうか?」
「おやおや、可愛らしい少女じゃありませんか……大変魔王さまも喜ばれ――いや、それはないですっ!!」
「いや、本当に帰っていいじゃろうか」
「いえ、駄目です。私のことをあなたは見た。つまり、あなたを生かして帰すわけには生きませんので」
すると、余とマキナ、死神がいた空間が歪み――
「『亜空転移』」
マキナの魔法により、別の空間へと移動してしまった。
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「――これは!?」
私は途轍もないほどに強い魔力の反応を感じ、甲板の方へ目をやる。
これほどの魔力を含む強大な魔法を使うことができる者が、あそこにはいたのか。
「まずいな……」
エルヴィットとトウマ、レイラが危ういかもしれない。
私は一刻も早く、この男を倒して三人のいる方へと向かわねば。
「余所見してんじゃねえよ!!!!」
「したところで貴様に負けるわけがない」
私は左手から暴風を放ち、男を吹き飛ばす。
「私は今客室にいるからな……誰が何をしているのか確認ができん」
いざという時のために、全員へ『眼惰留怏』をかけておけばよかった。
それが私のミスだ。
「へっ、オレをコケにしやがって」
「黙れ。貴様が私よりも本当に弱いからそうなっているのだろ」
「今度こそは……奥の手を使ってやる!!!」
すると、男が鎌で自身の腹部を斬り裂いて腸を取り出した。
男は腸を投げ捨て、そして一つの肉塊を取り出す。
「何だ、それは……?」
「へっ……とっておきの武器だぜ」
その肉塊をかじり、男は悶え出す。
「堕天使ルシファーの力か」
人肉でできた触手、そして翼を生やし――男はニヤリと笑った。
どうも、焼き鮭です。
もし
「面白い!!」「登場人物なんか増えてて草」「自分もリキアに暴風でいじめられたい」
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