13「白銀の豺虎vs海賊①」
――金属音が観光船の中で鳴り響く。
観光客は悲鳴を上げて逃げ惑い、各々が救いを求めている。
「ウテナ……」
僕は海賊船の方で今も尚戦っているであろう少女の名を呼ぶ。
海賊船にはリキアも向かったが、ウテナは無事なのだろうか。
「余所見してていいのかい?」
「誰だ……っ!!」
僕は声のした方を向く。
そこには眼帯をした女がいた。
女は笑みを浮かべ、僕の方へと歩み寄ってくる。
「坊やの相手はこのあたしだ。他の女ばかり気にかけていては足元掬われるぞ?」
「――っ!」
その瞬間、女は襲いかかってきた。
そして剣を僕へと向かって振り下ろしてくる。
「龍神剣ナハドメレクっ!!!!!!!!」
龍神の力が宿る剣が僕の手元へ現れ、女が振りかぶってきた剣を弾き返す。
「へえ、凄いもの持ってるじゃん」
「確かに凄いけどね」
僕はそう言いながら女と真っ向から斬りかかった。
女も同様、剣を構えて斬りかかってくる。
高い金属音が鳴り響き、僕と女は互いに歯を食いしばる。
「まだまだだよ!!」
「うぐっ……!!!」
女は剣を離し、その際によろめいた僕の横腹を思いきり蹴りつけた。
勢いよく僕は観光船の壁に叩きつけられ、痛みに唇を噛み締める。
「そらそらぁ!!!」
「ぐはぁっ!!」
僕は頭を掴まれて壁に叩きつけられる。
壁がその衝撃で破壊され、破片を血で澱ませる。
「もう一丁!!!」
女は僕の頭を壁と密着させたまま走り、壁を壊していく。
そしてそのまま投げ飛ばし、僕は力なく甲板と衝突した。
「あ、ああ……」
痛みのあまり意識が遠のいていく。
体も思うように動かず、視界がぼやけていく。
駄目だ。こんなとこで倒れていたら……まだみんな戦っているというのに。
もう無理なのかな。このまま僕は死ぬのだろうか。
「其方は諦めるのが早い」
「エルヴィット、さん……?」
珊瑚色の髪をした少女が、薄らとだが僕の視界に入り込んだ。
それに僕は安堵し、微笑む。
「ごめん……少し挫けてた」
「ん……さあ反撃にいくぞ」
向こうから女がやってくる。
それを前に、僕はふらふらと立ち上がる。
頭の怪我を眩い光が治癒し、僕は最良のポジションを取り戻した。
「おいおい、可愛い女の娘がいるじゃないか」
「丁度いいところに来たな、クラック。あの吸血鬼を相手にしてやってくれよ。あたしはこの可愛い少年と戦うから」
「最初からそのつもりだ……おじさんは華奢で愛くるしくて小動物みたいなこの娘を犯すとしよう」
巨漢の男が現れ、そしていやらしい視線をエルヴィットに向ける。
それにエルヴィットはドン引きした顔をし、
「余は貴様などには負けぬぞ……いや負けたくない」
「それはどうかなぁ……可愛い娘ちゃん」
二人の会話を横目に、僕は女を睨む。
「さて、パーティーの始まりだ!!!!」
女がそう叫び、火蓋が切られた。
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「アタシは雑魚の相手なのかな……」
レイラは凍らされた海賊の下っ端達を一瞥し、溜め息を吐いた。
彼女としては、もう少し強い敵と戦いたいという願望が強いため、退屈しているのだ。
「ねぇねぇ」
どこからか幼女の声がし、レイラは周囲を見渡す。
「誰かな……もしかして敵?」
「お姉ちゃんはさ、痛いの平気?」
「平気って……ぐああああああっっ!!!!!!!」
レイラは突然と現れた激痛に悲鳴を上げる。
頭が割れそうなほどの重い痛みが全身を駆け巡り、思考を苦悶が占領する。
「直接斬ってあげるよ」
「――!?」
すると、突如として青髪の幼女が現れた。
彼女は眼帯をしており、二つの人形を抱きかかえている。
そして幼女はレイラに歩み寄り、両腕に触れた。
その瞬間、レイラの両腕が千切れた。
「ああああああっっっ!!!!!」
「ふふふ、可愛いね」
絶叫が観光船に轟き、それに幼女は嬉々とする。
この幼女は異常だ。
「『霖氷鋭刃』!!!」
「へぇ……」
レイラは痛みに苦しみながらも魔法陣を展開し、氷の刃を幼女目がけて飛ばした。
しかし、幼女に氷の刃が直撃する寸前――
「グルオオオオオオオオオオ!!!!!!!」
幼女の抱きかかえていた一個の狼の人形が、氷の刃を全て喰らった。
「何なの……あれ」
レイラは唇を噛み締め、痛みと格闘しながら再び氷の刃を飛ばす。
しかし、今度はもう一個の熊の人形が、氷の刃を腕で打ち砕いた。
熊と狼の人形は、それぞれ不整合に縫い合わされた顔面でレイラを睥睨している。
「これやばいかも……」
レイラは迫りくる危殆に苦笑いした。
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「ウテナをばらばらに斬り裂いたこと。そして海へ蹴り飛ばしたこと……その罪が如何に重いか分かるか?」
「分かるも何もあるかよ」
「話にならないな」
私は空間魔法を使ってウテナを甲板の上へ連れてきては、密かに治癒魔法をかける。
流石に肉体への損傷が大きすぎる。妖魔と言えど、ここまでの傷を癒すのには時間がかかる。
「折角、大将軍様がオレのところへ遊びに来てくれたわけだ。歓迎しねぇとな!!」
「款待など必要ない」
私は『魔殲球』を唱え、漆黒の球体を多数、男に飛ばす。
しかし男はそれらを異常な体の動作で躱し、大鎌を振りかぶった。
精練された動きだ。この男は海賊であるだけ、数々の死線を乗り越えてきたのだろうな。
「だが――」
私は自身の靴先に氷の刃を付け、
「相手の機微な動作にも目をくれないとな」
「がはっ!!」
そして男の腹を蹴り上げた。
男は雲に衝突するほどの高さまで蹴り上げられ、大量の血を吐く。
「ほう……まだ生きているのか」
「死斬!!」
「必殺技の技名か? だがその技は弱すぎて話にならん」
男の振り下ろした大鎌を一本の指で受け止め、私はそのまま男を再び蹴り飛ばした。
今度は空のほうではなく海賊船の手摺りに衝突し、男はそのまま口と腹から滔々と血を流している。
そして私は男を観光船の上へと蹴り飛ばした。
私は観光船の甲板へと着地して男へと歩み寄り、
「体の節々が砕けているだろうに……根性だけは認めてやる」
私は男の胸倉を掴んで、視線を合わせる。
「――だが、帝国に背くとはどういうことか……一度身を持って知る必要があるだろうな」
男を甲板に叩き付け、中の客室まで墜落させる。
私は客室へと着地し、続けて男を壁に向かって蹴り飛ばす。
再び男の体から大量の血が流れ、そのまま勢いよく壁を砕いて別の客室へと飛ばされる。
「弱すぎるぞ……最強の海賊と謳われていたのは嘘か?」
「嘘、なんかじゃねぇよ……」
「まだ話す気力があったのか」
「馬鹿だな、オレがてめぇにやられてる間何をしてたか分かんねぇだろ?」
「な――」
男はニヤリと、不敵に笑った。
その瞬間私の右腕が血飛沫を上げて、ぼとりと床へ落ちた。
「オレは人の体の一部を切り落とすのだけは一流だからな……」
私は傷口へ火を浴びせて止血させ、男を睨視する。
「少しずつてめぇの腕を刻んでいたんだよ……気付かなかったか」
「ふふっ……ふははっっ!!!! 面白いじゃないか、凶賊よ」
こんなのは初めてだ。
私の右腕が斬られるとは、毛頭考えていなかった。
「殺すのは惜しい……だからこそ、交渉をしないか?」
「交渉だと……?」
私は指を立て、
「私と私の仲間が貴様ら海賊団に勝利すれば、貴様は私の仲間になれ」
「命令口調なのが癪だが、いいぜ。だけど、オレらを甘く見るなよ?」
そんな会話を終えると、私は魔法陣を展開し、男は大鎌を持って立ち上がった。
「ここからが本番ってことよ!!!」
男はそう叫び、私へと飛びかかった。
どうも、焼き鮭です。
もし
「面白い!!」「海賊団との戦いはどうなるの!?」「自分もリキアにぼこぼこにされたい」
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