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12「獅子奮迅」

 「船……」

 

 黒髪をなびかせながら、ウテナが呟く。

 実は今、私達『白銀の豺虎』は観光船に乗っているのだ。

 

 「ウテナは船に乗るの初めてなのか?」

 「うん……ずっと村にいたから」

 

 トウマとウテナがそんな会話をする。

 私はと言うと、観光船の中で焼き鳥を食べていた。

 

 「朝食は作っていないからな……ここで食べないと後々腹が減るぞ」

 「レイラ、リンゴジュース注文してくる!!」

 

 私は焼き鳥をかじり、口の中で転がす。

 ああ、やっぱり焼き鳥は美味いな。

 

 「んん♡ やっぱりこれは美味しいのう」

 「エルヴィット、それは血か?」

 

 エルヴィットが飲んでいる赤い液体を見て、私はそう尋ねた。

 

 「そうじゃ。吸血鬼だから血を飲むのは許してほしいのじゃ」

 「そうか……あまり血を飲まない種族なはずなのに、ちゃんと飲むのだな」

 「今日飲めば後一か月はもつぞ。余はこう見えて小食じゃからな!」

 

 エルヴィットは小さな胸を張り、そう言った。 

 

 「普通の吸血鬼はどれくらい飲むのか?」

 「一週間に一回ぐらい飲むかな。まあ余の一族での話じゃが」

 「確かにエルヴィットは小食だな。だから――」

 「ど、どこを見ておる!!!」

 

 私はエルヴィットの胸を見ながらそう言った。

 それにエルヴィットは気付き、顔を赤くして胸を隠した。

 

 「そこもまた良いのだ」

 「よ、余は嬉しくなどないわっ!!」

 

 エルヴィットはそう言いながらレイラの方へと逃げていく。

 そんな様子を私は微笑みながら見置き、そして焼き鳥をもう一口かじった。

 

 「一つ気になったんだが、エルヴィットが飲んでいるその血はどうしたんだ?」

 「観光客の者達から少しずつもらったのじゃ……流石に誰かを殺して啜るなどはできないからの」

 「ほう……そういうことも考えていたのだな」

 

 私は「偉い偉い」と褒めるばかりにエルヴィットの頭を撫でる。

 

 「リキア、エルヴィットちゃんのこと可愛がりすぎじゃない? 好きなの?」

 「さあ、どうだろうな……」

 

 レイラの問いかけに、私は微笑を返す。

 すると、エルヴィットが顔を更に赤くし、

 

 「こ、怖いこと言うな……!!」

 「そういうところも愛くるしいのだ、エルヴィット」

 「うぅ……」

 

 そんな会話をしていると、不意にトウマが慌てた様子でこちらへ走ってきた。

 

 「どうした、トウマ」

 「海賊団の船が観光船と衝突したんだ! 急がないと観光船の中に攻めてくる!! 今はウテナが応戦してるけどそろそろまずいかも」

 「なるほど……エルヴィット、レイラ、行くぞ」

 「そうじゃな」

 「うん!」

 

 $ $ $ $ $ $ $ $ $ $

 

 「――ああっ!!」

 

 ウテナは吹き飛ばされ、口から血を吐く。

 

 「おいおい……てめぇもオレを満足させてくれる相手じゃねぇのかよ」

 

 大鎌を構えた男はウテナの腹を踏みつけ、舌打ちをする。 

 そして後ろから襲いかかってきた機械の青年を吹き飛ばし、頭を掻く。 

 

 「何回もしぶてぇな……弱ぇくせに」

 「ここで俺は倒れるわけにはいかない。俺は必ずお前を断罪する」

 「そうかよ……つまんねぇ奴がつまんねぇことほざくな!!」

 

 男は青年を蹴り飛ばし大鎌で機械の腕を切断した。

 ばちばちと電流の流れる音がし、腕は海賊船の甲板に落ちる。

 

 「やはり部品を交換しておくべきだったか……」

 「部品とかきめぇな。人間は人間だから面白ぇっていうのに」

 

 男は鎌を持ち上げ、

 

 「血も出ねぇし、痛みに泣け叫ばねぇし……つまんねぇな」

 「械瑩かいえい術式展開『業火』」

 

 青年が放った火炎を切り裂いた。

 

 「械瑩術式展開『神速』『豪腕』」

 

 青年は男に殴りかかり、腹、腕に拳を打ち込む。

 しかし、男には全て躱され――そして反撃として大鎌の一撃を振るわれた。 

 

 「おお、速ぇ」


 だが、目にも留まらぬ速さで青年は移動して大鎌を躱し、男を海の方へと蹴り飛ばした。

 男は海へと落下し、そのまま呑み込まれてしまった。

  

 「――痛ぇなぁ……」

 

 男は跳躍して海賊船の中へと戻り、濡れた髪を手で掻き上げた。

 

 「てめぇ、雑魚のくせにやるじゃねえか」

 「俺はエルヴェル帝国騎士団隊員――ザギンクだ」

 「名は聞いてねぇんだが」

 「お前を裁く者の名だ――胸に刻んでおけ」

 

 青年は両足を発行させて凄まじい速度で男の方へと走った。

 

 「流石はサイボーグと言ったところか……」

 

 男はその場から動かずに、ウテナの方へ目をやる。

 ウテナは血を吐きながら立ち上がり、男を睨んでいた。

 

 「それにあの嬢ちゃんも復活、か――」

 

 男は口角を上げ、大鎌に魔法陣を展開させた。 

 

 「オレの相棒が唸るぜ……死ねってな」

 

 男は駆け、そして青年とウテナを一瞬にして切り裂いた。

 青年は首だけが甲板の上に転がり、ウテナは両手と両足を切断、上半身を袈裟切りされて同じく甲板の上に転がった。

 

 「うぅ……」

 「嬢ちゃん、まだ生きてんのか……すぐ楽にしてやんよ」

 

 男は大鎌の刃先をウテナの喉に突き付けたところで、ある異変に気が付いた。

 

 「おいおい……そんなのありかよ」

 「――っ! 『魔手』!!」

 

 体を再生したウテナは立ち上がり、魔法陣を展開した。

 その後闇色をした無数の腕が甲板を突き破って現れ、男目掛けて伸びていく。

 男はそれに口元を狂気で歪ませ、大きく跳躍して腕を躱した。

 

 「気持ち悪ぃな」

 

 男は大鎌を振り、襲いかかってくる全ての腕を切断した。

 すると、男は目を見開き、

 

 「本体が乗り込んでくるとはな」

 「『魔斬まざん』……!!!」

 

 ウテナが跳躍して、男を引っかく素振りをすると同時に、男を漆黒の斬撃が襲った。

 それに反応が追いつかず男は正面から斬撃を喰らってしまった。

 

 「ぐ――っ!!!」

 「『魔絃まげん』」

 

 すると、男の鼓膜へとどこからか優雅なバイオリンの音色が滑り込んできた。

 男はそれに聞き惚れてしまいそうになり――

 

 「――洗脳なんて効かねぇよ!!!」

 

 大鎌で自身の腕を傷つけ、意識を取り戻した男はウテナを海へと蹴り落とした。

 

 「ああっ!!」

 

 ウテナは悲鳴を上げ、海の底へと落ちていった。

 

 「けっ、結局は満身創痍かよ」

 「それはどうかな」

 「あん?」

 

 凛とした声音がかけられ、男は声のした方を向く。

 

 「――ちっ、相手が悪ぃな」

 「私の仲間へ手を出した罪、償うのだな」

 

 男は舌打ちし、声の主から目を逸らす。

 そう、声の主は――、

 

 「【戮殺姫】こと大将軍リキアが、貴様を裁きに来た」

 

どうも、焼き鮭です。

もし

「面白い!!」「リキアの活躍が見たい!!」「自分もリキアに裁かれたい」

と思った方はブックマーク、そして↓の☆を押して作品の評価をしていただけると幸いです。

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