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62 ダウジングペンダント?

「この岩盤には間違いなくサファイアが含まれています! それもかなり高品質と思われますよ! ただ―――何とも言えない場所にありましたね。どうしますか、ケントさん?」

「確かに坑道沿いの壁際では掘ろうにも下手をしたら崩落の危険性がありますね」

 興奮を隠せないマルセルさんだったが、周囲を確認すると何とも言えない表情をされた。

 普通に考えてこんなところを掘削してしまったら、これまで作った道がどうなることやら。

 そのために迂回路を別に作るか、諦めるか。

 それはご領主様の判断だ。

 俺にはもっと大事なことがある。

 あまり信じたくないが、猿ぐつわサファイアにはダウジングペンダントの力が秘められていたらしい。


 俺がつい先日、ダウジングペンダントでも作ってみるかと思った時に求めたのは女性らしい気品だったのだが、これにはまったく正反対の下品さしかない。

 だがイリスお嬢様の反応からすると、ロッドより遥かに強い力を秘めていそうだ。

 ロッドは俺がひん曲げたからダメになったなんてことはない・・・・・・多分。


 ユーリお嬢様に確認をしてもらうまで分からないけど、怪しい猿ぐつわを持たされるのは絶対嫌がるだろうな・・・・・・だってお嬢様の中身は、俺の大切な愛読書ですら不浄と言って処分をしたダ女神様だし。

 マルセルさんとイリスお嬢様も俺の言葉を待っているようだが、どうしても手にしている怪しげな物体へ視線が行ってしまっている。

 気持ちは分かるけどそんなマジマジと見つめられると照れるだろう。

 ・・・・・・好きで持っているわけじゃないから。


「―――その猿ぐつわは一体何ですか?」

 これをわざわざ何処からか持ち出して来た人に尋ねられるのはとても心外だが、想像だにしないことが起こったのだからしようがないか。

 俺は今の時点で考えついていることをマルセルさんとイリスお嬢様へ伝えた。

「まだ秘密にしておいてもらいたいのですが、サフィールロッドの代わりになるものだと思います」

「ロッドのですって!?」

 マルセルさんの後ろに隠れていた真正お嬢様が身を乗り出して顔を輝かせている。

 サフィールロッドは一対しかないので、それと同じものがあればサフィールに成れる者がもう一人増えるとでも考えたのだろう。

 さっきは投げ棄てたのに、どうやら現金さはユーリお嬢様といい勝負だ。

 しかし今はまだダメだ。

 俺は大きな釘を刺させてもらうことにした。


「僕がイリスお嬢様のぐちゃぐちゃに曲げられたサフィールロッドを何とか直しはしましたが、完全に状態を戻せた自信はありません。もしこの先ロッドが壊れでもしたらこの猿ぐつわの出番が来ます。万が一に備えてこれは使うべきではありませんし、確かお嬢様はさっきこれを放り投げられましたよね?」

「うっ」

 俺は猿ぐつわを見せるだけで噛ませることもなくお嬢様を黙らせる。

 ・・・・・・上手いこと言ったつもりはないぞ?


「マルセルさん、新たな鉱脈らしきものをイリスお嬢様が見つけ出されて、イリス様も僕も目的を達成できました。この結果にご領主様もお喜びになられるでしょうし、坑道を出ましょう」

「しかしまだ原石は―――」

「大丈夫です。これがあります」

 今度は不思議そうなマルセルさんに満面の笑みで猿ぐつわを見せる俺。

 ・・・・・・絶対におかしな奴だ。


 これで俺の悩みと暫く抱いていた疑問は解決したのだが、今ここで新たな難題が発生したことに気づいた。

 ダウジングで機能するほど優れた石をこの猿ぐつわは備えている。

 これを使わない手はないのだが、残念ながら腕輪のように手首を通すことはできないから咥えて気を溜めて―――絶対に嫌だ。

 ならば指の二、三本でも穴に入れて―――想像しただけで怪しすぎる。

 そうなると可能なのは普通に握り締めるくらいだ。

 本音はそれさえも嫌だけど、ダ女神様のために頑張って猿ぐつわと添い寝をすることにしよう。

 しかしその姿、絶対人に見られてはならない。


 俺はその日から戦々恐々として寝不足の日々が続いた。

 お蔭でこっちが体調不良になりそうだ。

 そんな俺の気苦労も知らず、ダ女神様の御言葉は相変わらずだった。


「其方、どうせ気を溜めて此方へ渡すなら、もっと良質で大量に持ってくるがよい。何じゃこの穢れた器と淀んだ気は?」

 あれから毎日猿ぐつわの革バンドをグルグルと手首へ巻くたび、ダ女神様は俺へ文句を言っておられる。

 マルセルさんはニコニコ顔で楽しそうにその遣り取りを見ておられるし、侍女様は想像通り鬼の形相だ。

 俺だけ何だか頑張り損な感じ。

 それでもダ女神様が元気になられて本当に良かったと思う。

いつもお読みいただきましてありがとうございます。

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