61 真正お嬢様の災難再び
「なかなか珍しいと言うか、興味深い物をお持ち下さってはおられるのですが、上手く使いこなすのはかなり難しいですね」
「そう―――ですか」
シュンとしてしまった執事さんに、俺が何に使うつもりと考えて用意をしたのか是非聞きたかったがぐっと飲み込んだ。
その代りに名誉挽回の機会を与えた。
何だか俺って偉そうだな。
「この道具はともかくイリスお嬢様に適当な原石を見つけてもらえるようお願いしてもらいたいのですが、新しいロッドを使ってみないかと聞いてもらえませんか?」
「イリス様に?」
「ええ、直したところなので、最後に使ったイリス様にどれくらい反応が違うか試してもらいたくて。きっとイリスお嬢様も嫌とは言いませんよね」
「・・・・・・なるほど。前に壊した責任を取って直ったかの確認を手伝えと迫りつつ、実際に物を見つけさせて上前を撥ねるわけですね。さすが性悪ケントさん」
「そ、そんなところです」
事実そのとおりですけど、マルセルさんにだけは言われたくないです。
「分かりました。ちょっと頼んできます」
そしてこちらも名誉挽回とばかりにえらく意気込んだ真正カーリー様やって来て、嫌味も言わず承諾をしてくださった。
イリス様のせいでロッドが壊れ、再発掘が急遽中止になったとされていることに強く責任を感じていたのだろう。
そこへ付け入る俺って、やっぱひどい奴だ。
うん、間違いない。
この確認には実は他の意義も見出しているが、まだ時期尚早と考えているのでマルセルさんには伝えていない。
とにかく今はイリスお嬢様が使えるかが大事なのだ。
確認の場は、ユーリお嬢様が復調されたら発掘する予定だった新たな横穴を指定した。
もちろんマルセルさん経由でだが、まがいなりにもユーリお嬢様を助けた者として俺もそこそこ意見が通るくらいにはなっていると自負があった。
指南役としてではないところが何とも微妙ではある。
しかし俺なんかよりイリスお嬢様の第一御息女としての力がものを言い、その日の午後早々に目的地へ入れることになった。
世の中そんなものだ。
俺達が山へ登る前に、予行演習と称してマルセルさんが軽く埋めた猿ぐつわサファイアを、新生ロッドで見事に見つけ出された時のイリスお嬢様の嬉しくなさそうな表情は、なかなか見ものだった。
やはり根性の悪さでは、執事さんには絶対勝てないと確信した。
しかし山へと入ってからは、思ったようにはサファイアの反応をイリス様は見つけ出せなかった。
ロッドの再生に失敗したかとの嫌な予感が俺の脳裏をよぎる。
そこそこの位置なら分かるが、必要な深さまでは探れないものを作ってしまったか。
考え込んだ俺の様子を見たマルセルさんが、あの猿ぐつわを取り出してイリスお嬢様から少し離れた坑道の端にあった深めのくぼみに置かれた。
・・・・・・まだ持っていたのか。
「イリス様、もう一度試してみてください」
ニコニコ顔の執事さんとは正反対の嫌々顔のお嬢様は、激しくロッドを交差させて反応を見せて下さった。
「大丈夫そうですよ、ケントさん」
「ありがとうございます」
「じゃあイリス様、ついでに拾って来てください」
「ええっ、嫌よっ。マルセルが取りに来なさいよ!」
少し胸を撫で下ろした俺に笑顔を見せながら、マルセルさんはイリス様にさらっといつもの意地悪を言われた。
口では文句を言いつつ、汚らわしい物を持つかのように猿ぐつわの革紐の端っこを指でつまむカーリーお嬢様。
自責の念からか、言われたことを聞いてしまう異常に弱い立場へ自分を追い込んでいるみたいだ。
ちょっと気の毒になってきたな。
確かに変な形だし、一度土に埋められて汚れているから気持ちは分かるけど、そんな持ち方をしなくてもと思っていたら、急にイリスお嬢様が悲鳴を上げて猿ぐつわを突然こちらへ投げ捨てられた。
「きゃあっ!!!」
「どうしましたか!?」
「き、急に激しくブルブルブルって!? な、何なのっ!!」
マルセルさんがイリスお嬢様に駆け寄り、俺は飛んできた猿ぐつわを恐る恐るつついてみた。
これってバイブ内蔵なのか?
それはすげーヤバいかも。
―――などと考えている場合ではないので手に取ってみた。
別におかしなところはないが、そもそもがおかしなものだ。
俺はイリスお嬢様と同じように、ぷらーんぷらーんとサファイアの部分を下に向けて動かしていて閃いた。
「あ!?」
「どうかしましたか?」
マルセルさんの声へ俺は黙って頷き、すっかり怯えてカーリーがわずかに震えているお嬢様へ急いで尋ねた。
「イリス様、ビンビンじゃなくて、ブルブルしたのですね?」
「そ、そうよ」
「どこですか」
「そ、そこよ」
あくまでロッドの反応確認をすると言っただけなので掘り起こすことは許されていないが、当然持って来ているツルハシで俺は指差された付近を慎重に掘った。
後で埋め直すことを考えて、なるべく大きな穴にはならないようにも注意した。
そしてイリスお嬢様の肩を抱いてやって来たマルセルさんが、大きく目を見開いて息を飲んだのが分かった。
少し砕いた岩の中から鮮やかな蒼い縞模様を見つけたのだ。
お読み下さいましてありがとうございます。




