<EP_061> 王の旅立ち
「GM。おかえりなさい。どうでした?」
早島に戻ると、京子たちが集まってきた。
「なんとか、お前らも再雇用の方向でまとまった。給料は面談次第ってことだがな」
一同は胸を撫で下ろす。
「給料上がるかなぁ」
「下川。外資は厳しいぞ。成果を出さないと簡単にクビを切られるからな。覚悟しとけよ」
「え?マヂっすか?」
迫水の首をかき切るポーズと下川の声に全員が笑い声を上げる。
「あの……GMはどうなるんです?」
京子の言葉に全員が笑い声を止め、一斉に迫水を見る。
「俺か?俺も続ける予定だ。だから、みんな、これからも頼むな」
全員が歓声をあげた。
「あの……GM。優勝パレードとかしないんですか?」
一通りの話が済むと京子が尋ねてくる。
「ん?そんな金ねぇよ。余った金は返しちまったからな」
「でも、せっかく優勝したんですよ。何かしません?」
素っ気ない言葉に、京子はなおも食い下がってくる。
「そうだなぁ……」
迫水が考えあぐねていると、スマホが鳴った。
「はい、迫水です。これは井納会長。お世話になっております。……はい、ジャガーズは来季もSBジャガーズ早島として活動していきます。……はい。私も引き続きGMとして働かせていただく予定となっております……はい。来季もよろしくお願いいたします……」
井納との電話の最中、ネームプレートがカタンと音を立てる。
「……あの、井納会長。新GMとして、一つご提案があるのですが……」
冬の西日がネームプレートに反射してキラリと閃いていた。
翌日、迫水は青木と平瀬とともに関西国際空港にいた。
「来てくれたんですか、GM。監督、キャプテンまでわざわざ来なくても良かったのに」
「なに、どうせ暇だからよ」
沢田の言葉に平瀬が皮肉を言う。
「サワ、あっちはゴリゴリの肉弾サッカーだ。お前の足技でキリキリ舞いさせてやれ」
「はい。がんばります」
平瀬と沢田が拳を合わせる。
「サワ、かなり寒いらしいからな。体に気を付けてな」
「はい。キャプテンもお元気で。でも、俺がいないからって、すぐに降格とか止めてくださいよ」
「言うじゃねぇか。大丈夫、そんなことさせねぇよ。こっちは気にせず、思いっきりプレーしてこい」
青木と沢田が拳を合わせる。
「沢田、しっかり活躍してくれよ。お前が活躍してビッククラブに行ってくれないと、これがウチに入らん」
迫水は胸の前で親指と人差し指で円を作る。
「そうですね。頑張ります」
「よろしく頼む」
沢田の手を握り、肩を叩く。
「なあ、沢田……サッカーは好きか?」
「ええ、今は大好きです」
覗き込む迫水に沢田は満面の笑みで即答した。
「そうか、その気持ち、忘れんなよ」
迫水の出した拳に沢田が拳を合わせた。
「じゃ、行ってきます」
大きく手を振って、沢田が搭乗口へと消えていく。
(頑張れよ、沢田)
手を振って見送ると、ネームプレートがシャラシャラと鳴った。




