<EP_049> 岡山ダービー
「♪ジャガーズ ジャガーズ 大健闘♪こんにちは、早島の誇り、ジャガーズ早島で〜す。♪ジャガーズ ジャガーズ 大勝利♪今週末、天皇杯二回戦にて、”早島の誇り”ジャガーズ早島とファジアーノ岡山の岡山ダービーが、JFE晴れの国スタジアムにて開催されます。♪ジャガーズ ジャガーズ 大健闘♪この岡山ダービーを制し、ジャガーズの底力を見せるためにも、早島の皆様の多大な応援をよろしくお願いいたします。♪ジャガーズ ジャガーズ 大勝利♪皆様の熱い応援で、ぜひ私たちジャガーズに勝利をお願いいたします……」
レモンイエローに染まった早島の街をジャガーズのバスが疾走していく。
その姿に、子どもたちが声を上げていた。
岡山ダービーの開催ということで、当日の岡山は興奮に包まれていた。
ファジアーノ岡山はJ1に所属する、ジャガーズから見れば完全に格上の存在である。
スタジアムはファジアーノのチームカラーである真っ赤に染まっていたが、ゴール裏の一部に、少しだけレモンイエローの一団が見えた。
「おい、てめぇら、何ビビってんだ」
緊張を隠せないでいる選手たちに平瀬が檄を飛ばす。
「てめぇら、ファジアーノって何か知ってるか?雉だってよ。俺たちは何だ?ジャガーだ。肉食獣だ」
平瀬の言葉に選手たちの中に苦笑いが生まれる。
「相手はJ1と言っても、俺たちとそこまで差があるわけじゃない」
選手内で唯一J1出場経験のある窪田も檄を飛ばしていく。
「そうだ。それに、アイツらは俺たちを見下してる。どうせ、出てくるのは一軍半以下の補欠どもだ。公式戦にもそこまで影響はねぇ。容赦なく削っちまえ」
平瀬の言葉は、選手たちの野生を呼び起こす咆哮だ。
「いいか、俺たちは肉食獣だ。ヤツらの喉元を食い破れ!」
指揮官に野生を呼び起こされた選手たちがピッチへと飛び出していった。
試合が開始されるとジャガーズは防戦一方だった。
青木を中心としたディフェンス陣は粘り強く守っていく。
しかし、前半の三一分に、ディフェンス陣の隙を突かれ、ゴールを許してしまう。
一瞬だけ空いたスペースにボールを流し込まれ、そこから立て直すことができずに崩されたゴールだった。
(これが、J1との差か……)
実力の差を見せつけられ、ジャガーズサポーターとジャガーズディフェンス陣の顔が曇る。
「おらぁっ!お前ら前を向け。まだ一点だ」
青木が大声をあげ、手を叩いてディフェンス陣に檄を飛ばした。
前半四二分、相手フォワードに青木がチャージしてボールを奪う。
相手は倒れたが、笛は鳴らない。
青木はすぐに、沢田へとボールを預ける。
沢田は前を向き、チャージしてくる相手を交わすが、たちまちに囲まれてしまう。
最前線の窪田はディフェンスが付いており、猿島の前方にも突進を警戒した選手が残っていた。
沢田が誰もいない左サイドへと蹴り込むと、トップスピードで駆け上がってくる鷹野がいた。
「いけー、鷹野ちゃーん!」
応援席の女将さんの声が聞こえた気がした。
鷹野はボールに追いつくと、中央の窪田へと切り返す。
窪田はジャンプする前に、チラリと猿島を見た。
相手ディフェンス陣が駆け込んでくる猿島に意識を飛ばした瞬間、前へと落とす。
飛び込んできた沢田が、右脚を振り抜くとファジアーノゴールにボールが突き刺さった。
「♪ジャガーズ ジャガーズ 大健闘♪ ♪サーワダ サワダ 大勝利♪」
スタジアムの一角から大歓声があがった。




