<EP_047> 取材
ジャガーズは二十六節を終え、十五勝七敗四引き分けの首位となっていた。
迫水の元にサッカーライターの林から「ジャガーズ好調の要因を取材したい」との申し出があった。
応接室にて、林はレコーダーを起動させる。
「迫水さん。今季のジャガーズの快進撃は目覚ましいものがありますね」
「ありがとうございます。地域の皆様に支えられ、平瀬監督の元で選手たちが頑張ってくれた結果ですね」
迫水が平瀬の名前を出すと林の目が鋭く光る。
「その平瀬監督なのですけど、どう考えていらっしゃいますか?」
「どうと言いますと?」
「『ラフプレーぎりぎり』、『ルール範囲ぎりぎり』、『アンチフットボール』、『勝てば何でも良いのか』など、色々言われています。これについて、フロントとしてどう考えているのかお聞かせください」
丁寧に話してはいるが、林の言葉にはトゲがあった。
「戦術に関しては監督に全てお任せしていますので、私から言うことはありません」
「では、平瀬監督の勝利至上主義をフロントとしては肯定すると?」
「そうなりますね。彼らはプロですから。試合に出て、勝つことが仕事ですからね。逆にお聞きしますが、プロにとって勝つ以外の仕事ってなんでしょうか?」
「プロとしては、やはり観客に夢を与えることが仕事だと思いますね。何をしても勝てば良いという姿勢は、プロの仕事ではありません」
林は責めるような口調で話してくる。
「そうでしょうか?では、プロレスのヒールはプロではないと?もちろん、サッカーはプロレスではありません。プロレスラーなら、負けるための試合というのもあるかもしれませんが、サッカーにはそれがない。ならば、勝つことが大事ではありませんかね」
「しかし、今の勝つために何でもするジャガーズを見て、子どもたちが、あんな選手になりたいと思いますかね?」
「そんなことは無いと思いますよ。選手たちを見てください。ジャガーズの選手たちは、街の人々に丁寧に挨拶をし、ファンサービスだって積極的です。これはアウェイの試合でも同じです。それはSNSを見ていただければわかるはずだ。プロスポーツ選手が直接優しく接してくれれば、子どもたちだって、憧れると思いますよ」
少しづつ苛立ちを隠せなくなる林に、迫水は穏やかに返した。
林は苛立ちを押し殺しながら話題を変えてきた。
「迫水さん。あなたは選手たちに移動時のユニフォーム着用や清掃活動などのボランティア活動をさせていますよね。選手たちを酷使しすぎではありませんか?」
「選手たちはプロ契約です。プロスポーツ選手は個人事業主です。個人事業主である以上、自分を客に売り込むために休んでいる暇はないですよね」
「しかし、そうは言っても、あなたと選手は雇用主と労働者の関係でもある。その理屈は通用しませんよ」
林の意見に、迫水は余裕の笑みを崩さずに答えた。
「林さん、あなたは誤解なさっているようだ。確かに、選手たちには、朝夕の駅前での挨拶やボランティア活動をお願いしています。しかし、選手たちの拘束時間は、朝九時から十三時までと十八時から十九時までの五時間の練習時間で、朝夕の駅前でのチラシ配りやボランティア活動はシフト制にしています。試合翌日は休みにしています。調べて貰えば分かりますが、普通の企業と較べても、余程ホワイトですよ」
スラスラと並べ立てる迫水に林は黙り込んでしまった。




