表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
28/65

<EP_028> サッカーが大嫌いな男

翌日、迫水は愛媛へと向かった。

応接室に入ると、明らかに不機嫌そうな窪田敏充が座っている。

迫水の異形に窪田は目を見開くが、すぐに元に戻り、顔を背けた。


「やぁ、窪田くん。時間を取ってしまって申し訳ないね。私はこういう者だ」

対面に座ると名刺を滑らせる。

窪田は差し出された名刺を見ようともしない。

迫水はそんな窪田を見つめたまま、動かずにいた。


「で、JFLのGMが俺に何のようだ?」

沈黙に耐えられなくなった窪田が口を開く。

「もちろん、キミを獲得するために来たんだよ。FC今治に打診したら『本人の意向を確認してくれ』と言われてね」

「ふん、なら答えはノーだ。俺は窪田敏充だ。JFLになんて行けるかよ」

「やれやれ、散々な言われようだね」

「はん、アンタらの噂は聞いてるぜ。俺を客寄せパンダに使おうってんだろ?アンタのそのスーツに俺の顔でも貼るつもりかい?」

背け続ける窪田の顔を、迫水は興味深そうに覗き込んだ。

「窪田くん……キミはサッカーが好きかい?」


「あ?サッカーが好きか?嫌いだね。大嫌いだ」

窪田は答えを吐き捨てた。

「ふむ。嫌いか……なら、なぜサッカー選手を続けているんだい?」

「ふん、最近、サッカーの野郎がおちょくってきやがるからさ。舐められっぱなしで終われねぇんだよ」

窪田は苛立ちを隠さない。

「それはキミが試合に出られないからかい?ベンチを温めてるだけで、サッカーを見返せるのかい?」

「アンタには関係ないことだ。俺は客寄せパンダになんてなるつもりはねぇよ。とっとと帰れ」

「平瀬隆造がキミを欲しいと言っている」

立ち上がろうとした窪田に迫水は指を組んで告げた。


平瀬と窪田が大学生の時にコーチと選手の関係だったことは既に掴んでいた。

窪田は平瀬の元で頭角を顕し、そのまま日本代表へと上り詰めていったのだ。


「平瀬さんが?」

「ああ。是非ともキミを獲得してくれと打診された。だから、私は来たんだ。平瀬監督からの伝言だ。『こいつを見せれば、俺が何を求めているのか、窪田なら分かる』と言っていた」

平瀬の名前に足を止めた窪田へ迫水はタブレットを取り出す。

画面には、沢田と猿島のシーンが映っていた。

鮮やかな速攻による得点の場面と、その後のカウンターの失敗シーンが繰り返される。

窪田の瞳孔がわずかに開き、直後に口端が非対称に吊り上がった。

「なるほどな……おもしれぇ、行ってやろうじゃねぇか、岡山によ」

「ありがとう」

迫水が立ち上がり、右手を差し出すと、窪田も立ち上がって握り返してきた。


正式契約は後日ということでFC今治を出た。

迫水はスマホを取り出す。

「……先輩。窪田の意思は取り付けました。ただ、困ったことが起きまして……詳しくは早島に戻ってから話します」

迫水は目頭を指で揉み、顔をしかめながら告げた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ