<EP_027> セブンカードスタッド・ポーカー
プレシーズンマッチから一週間後、夜間練習が終わり、監督室へと戻ってきた平瀬を迫水は訪ねた。
デスクに脚を投げ出したまま平瀬は天井を見上げていた。
「どうです?順調ですか?」
「順調っちゃ順調だけどよ……」
平瀬はぶっきらぼうに答える。
「それは良かった。先日のSRC広島との練習試合も快勝でしたしね」
「ふん、あんなのは勝って当然だ……」
仏頂面のまま平瀬は答えると、脚を戻して、引き出しを開ける。
「迫水、ちょっとやるか?」
「お付き合いしますよ」
ニヤリと笑ってトランプを手にした平瀬に、呆れたような表情で迫水はソファへと腰掛けた。
「お前が親で良い」
平瀬は迫水の前にトランプを置いて対面に座る。
迫水はトランプを切り、三枚のカードを伏せて滑らすと、手元にも三枚伏せた。
「選手枠はもう一つ余ってたよな?」
「ええ、一応は……」
手元のカードを確認しながら、平瀬は聞く。
「一人、獲得して欲しい選手がいる」
「誰です?」
平瀬がチップを一枚投げ出すと、迫水もチップを投げる。
「窪田だ。窪田敏充を獲得したい」
「窪田?あの窪田ですか?」
迫水は驚いた表情で、カードを表にして一枚差し出し、自分の前にも置く。
平瀬はチップを投げると指をクイクイと曲げる。
「そうだ。元日本代表の窪田だ。今、FC今治で燻ってやがる」
「先輩、そりゃ無理だ。窪田の年俸は高すぎる」
配られたカードを見て、平瀬は更にチップを投げる。
「完全移籍させろとは言わねぇ。一年のレンタルで良い。獲得して欲しい」
「レンタルでも無理だ。スタックが尽きてしまいます。そうなればテーブルにも座れない」
平瀬の手招きに迫水はカードを配りながら、呆れた顔をした。
「はんっ、手持ちのカードが揃わなきゃ勝負すらできねぇんだよ。勝負できないテーブルに座る意味もねぇだろ」
配られた札と手持ちの札を見て平瀬はニヤリとほくそ笑み、さらに大幅にレイズしてきた。
迫水は大きく息を吐くと、平瀬の前へ最後のカードを配る。
「獲ってきてくれるよな?」
そう言うと平瀬は手持ちのチップを全て場に投げ出した。
「いいでしょう。先輩の手札を見せて貰いましょう。コール」
迫水もチップを差し出す。
迫水の眼の前にはJのスリーカードとダイヤのQ。
平瀬の前にはダイヤの三、四、五、そしてワイルドカードのハートの二が並んでいた。
「よし、ショーダウンだ」
平瀬の声とともに迫水は伏せていた札を表にする。
「フルハウス。先輩は?」
迫水の言葉に平瀬は手札を机に投げ捨てる。
見れば、一番高い役でもストレートであった。
「チっ、降りると思ったのによ。とりあえず、窪田の獲得の件は頼んだぜ」
「とりあえず、打診だけはしてみますよ」
迫水は眉をハの字にしながら、散らばったトランプを片付けていった。




