<EP_025> 居酒屋
ガイナーレ戦の一週間後にSRC広島を招いて行われたプレシーズンマッチは三対二でジャガーズの今季初勝利となった。
終了後、青木は鷹野、工藤、納谷を食事に誘う。
早島の隣の中庄は学生街であり、学生相手の安い居酒屋が多い。
四人が行きつけの居酒屋に入ると中は週末ということもあり学生たちで賑わっていた。
四人は座敷席へと座る。
「今季、初勝利に乾杯!」
納谷の言葉とともにジョッキを鳴らすと一気に半分程度を飲み干す。
「ぷはぁ〜、どうなることかと思ったけど、とりあえず初勝利したことは良かったな」
「ああ」
試合で一ゴール一アシストを決めた工藤は上機嫌だったが、青木の顔は暗かった。
「どうしたんです、キャプテン。勝ったんだから、もっと明るい顔をしましょうよ」
暗い顔をしている青木に納谷が笑顔を向けると、青木が顔を上げて、三人を見渡した。
「なぁ、お前ら、どう思う?」
「どうって?」
「客の数が少なくなかったか?」
「どうですかねぇ?去年も同じぐらいじゃないんですか?」
「納谷は去年はピッチにいたからな。鷹野、お前はどう思う?」
「どうでしょう。俺は売り子をしてましたけど、グッズショップに来る人は増えてると思いますよ」
「そうですよ。お客さんの声援だって、結構聞こえてきてたじゃないですか」
「ああ、確かに声は良く聞こえたけど、空席が目立つっていうか、そんな気がするんだよ」
「確かに……」
青木の指摘に工藤も同意する。
店内に貼られたジャガーズのポスターが目に入る。
「あんなに頑張ったのになぁ」
「やるだけ無駄だったのかなぁ」
誰かが呟いたその言葉に、卓を囲む空気が一瞬重くなった。
「これで、開幕して去年と同じだったらガッカリだよな」
納谷が枝豆を口に放り込み、納谷は店員へビールのおかわりを注文する。
「GMも何考えてんだか、あの格好で歩いて恥ずかしくないのかね」
「あのおっさん、変に夢見がちなとこあるからな……」
ネームプレートだらけのスーツを来て、笑顔で街を歩く迫水を思い出し、全員が静かに笑った。
「で、でも、チームは強くなったと思いますよ」
場の空気を振り払うように、鷹野が少し大きな声を出す。
「まぁな。沢田の加入がデカい」
「ああ。悔しいがアイツはモノが違う。来季辺りはJに引っ張られるだろうよ」
工藤がフッと息を吐き、青木がジョッキを呷る。
「沢田だけじゃない。猿島もだ。納谷、とっとと治さねえと、お前の居場所が無くなるぞ」
「大丈夫。開幕には間に合わせる。そうすりゃ、猿島なんかに負けねぇよ」
「そうしてくれ。俺も相棒がいなくて寂しいぜ」
届けられた新しいジョッキを納谷と工藤が合わせる。
「お前が前線からプレスをかけてくれないと、俺たち守備陣に負担がかかるんだ。頼むぜ」
「わかってますよ」
納谷と工藤は去年までツートップを組んでおり、終盤で納谷は怪我をしたのだ。
怪我自体は治っているものの、納谷の調子は上がらず、猿島の台頭もあって、今季はベンチ外であった。
「そういや、この前の夕方の挨拶の時、沢田の野郎、女子高生と写真撮ってたぞ」
「やっぱ、イケメンは違うねぇ」
納谷の軽口に工藤が合わせていく。
「真野ちゃんも、沢田にメロメロだしな」
青木もニヤリと笑って続ける。
「え、そうなんですか?」
鷹野が目を丸くする。
「ん?なんだ、鷹野。お前、真野ちゃん狙ってんのか?」
「ダメだぞ。真野ちゃんは我がジャガーズの数少ない癒しなんだ。独り占めはよくない」
「鷹野の場合は、まずレギュラーを獲らないとな。今のままじゃ、愛しの真野ちゃんは沢田に獲られるぞ」
「そ、そんなんじゃないですよ」
三人のツッコミに少し顔を赤くした鷹野に三人は大笑いをあげた。




