<EP_021> 早島の怪人
「GM!見ましたか!?」
ラッピングバスが走って数日、朝のチラシ配りから戻ってきた迫水に京子が興奮気味に駆け寄ってきた。
「ん?何がだ?」
「これですよ、これ!」
京子は興奮した様子でラッピングバスを映すSNSを見せてきた。
「スゴいインプレッションですよ」
興奮気味の京子が操作すると、「今日、ヤベェのを見たw #公式が病気」「ヤバい、あの音楽が頭から離れない #黄色い洗脳バス」「なんかヤバいチームが出てきた #フロントがあたおか」といった言葉が流れていく。
「へぇ、なかなか良い反応じゃないか」
迫水はニンマリと笑った。
「公式でもじゃんじゃん流せ。今は少しでも反応が欲しい」
「はい。でも……」
京子が少し顔を曇らすと、事務所の電話が鳴る。
「お電話ありがとうございます。ジャガーズ早島事務所でございます……は、はい……申し訳ございません……はい。私どもの広報活動の一環でございまして……はい、はい……ご理解いただけると……はい。申し訳ございません……はい。貴重なご意見ありがとうございました。失礼いたします」
京子が恐縮した言葉遣いで、電話口の相手に謝る。
「クレームか?」
「ええ、昨日だけで六件もありまして、日に日に増えています」
「内容は?」
「『うるさい』とか『ふざけているのか』といったものがほとんどです」
「そうか。それだけ、ジャガーズの認知度が上がってるってことだな」
曇った顔の京子とは対照的に迫水は笑う。
「もう、笑ってる場合じゃないですよ」
京子は頬を膨らませるが、迫水は顔色一つ変えなかった。
「それで?スポンサーの反応はどうだ?」
「ええ、むしろ上がってまして、昨日だけで、これだけ……」
京子が持ってきた書類には数件の名前が載っていた。どれも月一万円程度の小口スポンサーだ。
「結構、増えたな。もう、スーツに付ける場所が無いぞ。肩口にもつけないといけないな」
迫水は嬉しそうに引き出しからネームプレートを取り出す。
「GM、まだ付けるんですか?」
「もちろんだ。俺たちにとっては貴重なスポンサー様だぞ。真野、彼らのロゴを送ってくれ」
「はぁ……言うと思って、もう刷ってます」
添付された二枚目には新しいスポンサーのロゴがカラー印刷されていた。
「さっすが、京子ちゃん。仕事が早い」
上機嫌でハサミを取り出し、切り抜いていく。
「GMも割と話題になってますよ。『早島駅にヤバい人がいる』って……」
「おお、俺も有名人になったものだな」
「#早島のネームプレート男」というハッシュタグと共に駅前でチラシを配る迫水の盗撮写真をチラ見すると、ネームプレートを肩口に突き刺していった。




