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チートヒーラーの僕、救った相手に惚れられてしまう件〜転移前から相思相愛の氷魔法使いと、ハーレムパーティーで魔石の陰謀を追う〜  作者: 黒倉ばくら
第一章 異世界と死体漁りの少女

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第5話 途切れた日記

受付で適性検査の結果を話すと、街路の清掃作業や、酒場の店員などの職を勧められた。受付の女性の視線に憐れみが混じっていたのは、僕の気のせいではないだろう。

「ハルトは私の手伝いをする」

「あくまでも一時的に、な。その後は私の研究助手に永久就職だ」

「ああ、既に保護者の方を見つけていたのですね。それなら安心です」

「保護者って……魔法が使えないだけで子供扱いっすか……」

「失礼いたしました。ただ、魔法適性の低い転移者は援助なしにトイボクスでの暮らしに適応するのが困難だと言われております。今後も御二方と行動を共にされることを推奨いたします」

そんなふうにやたら心配されながら学院を後にする。その後はリィに案内してもらって市場へ向かい、お金を借りて当面の食糧や生活に必要な品を買い揃えた。色々巡っているうちに日が暮れ、リィの家へ戻って夕食を作ることになった。

「おなかすいた。ごはんまだ?」

「今帰ってきたところでしょ!」

「そうだっけ。おなかすいた」

「わかったから!どれだけ腹ぺこなのさ!」

「この家、暗いな。ペプシ君、ちょっと光ってくれ」

「嫌ですよ!今天井光らせるんでちょっと待ってください。てか、なんでついてきてるんっすか?学院が寮を準備してくれてるんじゃ?」

「ペプシ君の~手料理が~食べたぁ~い♡」

「なんすかその喋り方……きしょいっす」

「うるさい早くしろ殺すぞ」

「落差!態度の落差が大きすぎる!………はあ、この人たちと話してても疲れるだけだ。さっさと作ろ……」

買ってきた食材を切り、火を通し、煮込む。

「リィ、この頭が三つある魚って、どうやって切ったらいいの?」

「ぶった切れ」

「三枚おろしにして骨と内臓を取り除くね……」

「リィ、この芋思ったよりも固いんだけど、じっくり火を通した方がいいかな?」

「しらない」

「小さめの賽の目切りにしてよく煮込むね……」

「…………あ。さっきの魚、内臓に毒がある」

「もうフライパンに入れちゃったじゃん!!それ早く言って!!」

「死にはしない。たぶん」

「こんなところで生きるか死ぬかのスリルを味わいたくないよ!!内臓は取ってあるけど念のためよく水洗いしておくね!!」

大騒ぎしながらも、何とか魚のソテーと野菜のスープを作る。初めて見る食材ばかりだったので、正直上手くできたか自信はない。でもまあ、食べられないって事はないだろう、たぶん。

「にくは?魚よりにくの方がよかった」

「リィは食べるもの偏りすぎ。てか、せめて食べてから文句を言ってもらってもいいっすかね?」

「ファンタはないのか、ペプシ君」

「あるわけないでしょ!」

「魚料理とよく合うんだがな。まあいい、いただきます」

「あれ、仮面外さないんっすか?食べづらくないです?」

「……ああ、そういえば話していなかったか。あの日、屋上から落ちた君は、地面に激突する寸前に光に呑まれて消えた。私はそれを追って飛び降りた訳だが……少々、転移のタイミングが遅かったようでね。地面に激突した後で、こちらへ送られたんだ」

「え!?大丈夫だったんですかそれ!?」

「そりゃあぐちゃぐちゃのボロボロさ。教会の奇跡とやらで傷は治ったんだが、少々顔が崩れてしまってね。半分は人様に見せられるようなものではなくなったから、こうして仮面で隠している」

「そんな……先輩の顔に傷がつくなんて、人類の損失っすよ……」

「君、そんなに私の顔が好きだったのか。照れるぞ……そして全くもって同感だ。私のデスマスクはルーブルに寄贈予定だったんだがな。まあこうして生きているんだ、それでいい」

二人とも食べ始めると静かになって、あっという間に僕の作った料理を平らげてしまった。

「ごちそうさま。こういうのが家庭料理というやつなんだな。私は大変満足した」

「魚、ちょっと生っぽかったっすね。次はもう少し焼いてみます」

「そうか?おいしかったよ」

「まずい。おかわり」

「はいはい……」

ご飯を食べ終わると、先輩は何かあったらいつでも声をかけてくれ、君が呼ばなくても勝手に会いに行くがな、と言って戻っていった。

「ハルト。あのまろーどには気を付けろ。あいつは、ダメ」

「ダメってなにが?」

「あいつ……なんかヘン」

「そりゃ、かなりヘンだけどさ。いい所もいっぱいあるんだよ、先輩」

「そういう事じゃない。……においがおかしい」

「……?」

・・・・・・

「ハルト」

「んー、なに?食器洗い中っす」

「寝る時は私の部屋の隣の部屋のベッドを使ってもいい。二つあるから好きな方でいい。でも、汚したらぶったたく」

「わかった、ありがとう」

「もっと喜べ」

「ええ……ありがとうございます、リィ様」

「ん……」

リィは何か言いたげにまごまごしたあと、結局何も言わずに自分の部屋へ引っ込んだ。

食器を片付け、ダイニングを少し掃除した後、リィの言っていた部屋の扉を開ける。長い間誰も入っていなかったのか、中はかび臭い空気が漂っていた。

「ここ……リィの両親の部屋?」

リィがなにを言おうとしたのか、なんとなくわかった。僕は短い間で、予想以上にリィから信頼されていたみたいだ。

花柄のクロスがかけられたサイドテーブルの上に、古い日記があった。ほこりを払って読んでみると、それはリィの母親のものだった。リィの両親は考古学者だったらしく、小さい彼女を連れて世界各地の遺跡を飛び回っていたようだ。半分は古代文明についての考察、もう半分は娘の成長への喜びで埋まったその日記は、魔術学院が管理している、何かの遺跡へ向かう所で途切れていた。『遺跡の一部に崩落の危険アリとのこと。念のためリィを教会に預けておく』とある。

「まさか、その遺跡でリィの両親に事故が……?」

先輩のケガのこととか、リィの両親のこととか、そういう悲しいことが頭の中をぐるぐる回って、その夜はなかなか眠れなかった。

・・・・・・


ここまでお読みいただき、ありがとうございます。気軽に感想をいただけると励みになります。


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