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チートヒーラーの僕、救った相手に惚れられてしまう件〜転移前から相思相愛の氷魔法使いと、ハーレムパーティーで魔石の陰謀を追う〜  作者: 黒倉ばくら
第二章 ゴブリン討伐と花咲か少女

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第24話 ゴブリンの巣へ

「私は巣には行きません。ここに残ります」

出発の直前になって、何でもない事のように諏訪部が言う。

「え、ええ~~っ!?どどど、どうしてですかぁ~~!?」

「……なんでおまえがびっくりするの」

「メイリン、何も聞いてないですぅ~~!」

「わざと言わずにおきました。君は追い詰められるほど実力を発揮しますからね」

「なんでニコニコしながら言うんですかぁ……?タクト様、ひどいですぅ……」

微笑む諏訪部をぎろりと睨み付け、ドンがドスの利いた声で言う。

「……オイ、どういう冗談だテメェ」

「冗談ではありません。少し気になることがあるので」

「テメェ、まさか昨日の襲撃でビビったんじゃねェだろうなァ!?」

ドンの怒号にも、諏訪部は眉一つ動かさない。

「違います。まあ、好きに勘ぐればいい。……霧原君、少しいいですか」

「はい?」

「識別タグを一枚貰えますか?」

「はい、どうぞっす」

諏訪部はそれに自分の魔力を込め、視線で貼るように促してきた。鮮やかな緑色に光り出したタグを右腕に貼り付ける。

『聞こえますか?』

「うわっ!?え!?な、なんか聞こえる!?」

僕がきょろきょろとあたりを見回すと、先輩とリィはそっと僕から距離を取った。

「……急にどうした、ハルト」

「ペプシ君、ついに狂ったか……」

「違いますよ!今、耳元で諏訪部さんの声が!」

『タグを通じ、魔力で君の鼓膜近くの空気を振動させています。射程はほぼ無制限という事でしたね?遠隔の連絡手段として問題なさそうだ。学院もよいものを発明する』

「あの、ぞわぞわするんで普通に喋って貰っていいですか?」

「おっと失礼。実戦の前にテストをさせてもらいました。……それで霧原君、恩寵の余裕は十分ですか?」

「…………?あ、治癒魔……奇跡のことっすね。はい、万全っす!」

「十数人が同時に戦闘になった場合、君一人でヒールを担えますか?この質問には正直に答えて下さい」

「十数人?僕たち6人しかいないっすけど……」

「質問に答えて下さい」

「うーん……よっぽど劣勢の戦いでなきゃ、大丈夫だと思います」

「昨日村人たちを治癒する様子を見ていても感じましたが、やはり既に中堅以上の実力はあるようですね。では君の祈りを込めた識別タグを5枚貰えますか」

「………?はい、どうぞっす」

「どうも。それでは失礼」

「待たれよ!本当に来ないつもりでござるか!」

テケテケの声を無視して、諏訪部は宿屋の方へと歩いて行った。

「一体どうしちゃったんだろ、諏訪部さん」

「……なるほど、そういう事か」

「あ、先輩なにか気付いたんですか?」

「ああ。だが困惑する君の顔を見て優越感に浸りたいから教えてやらない」

「もうっ……」

「クソがっ。おいオメェら、さっさと出発すんぞ!あんな臆病者のマロード、いてもいなくても変わらねェ!」

「……ち、違います!タクト様は臆病なんかじゃありません!きっと……きっと私たちには分からない、深い考えがあるんです!」

「ああそうだな、オレぁあの魔法使いよりはバカだ。だがな、仲間も、受けたクエストも放り出すような冒険者はろくなやつじゃねェってこたぁ分かるぜ。違うか?」

「そ、それは……うぅ~~」

僕は言い争う二人の間に割って入り、ドンに言う。

「まあまあ……それくらいに。メイリンさんに当たっても、しょうがないじゃないっすか」

「ケッ……」

不機嫌そうに顔をしかめたまま、彼は勝手に進み始める。それを追って僕たちも歩き始めた。

・・・・・・

数時間歩いて、ゴブリンの巣の近くにある丘までたどり着いた。茂みに隠れながら、様子を伺う。

「歩哨がいるでござるな。ひい、ふう……二匹でござるか」

「ん。エイア、わたしが矢を撃ったら合わせて。下のやつたのむ。」

「エイア様お願いします、と言ったら考えてやる」

「今はそういうのいらない」

「……分かったよ、つまらんやつめ」

リィが弓を構え、先輩が詠唱を始める。高台のゴブリンの首に矢が突き刺さるのと同時に、入り口の横にいたゴブリンが氷漬けになった。

「ヒュゥ、やるじゃねぇの。ルーキーのパーティーにしちゃ、息が合ってるな」

「行こう。スカウトのわたしが一番前。ついてきて」

「オイオイ、しゃしゃんじゃねェぞルーキー!たかがゴブリンの巣に、偵察なんざ要るかよ!」

「普通ならそう。でも、こいつらヘン」

「何がだ?」

「リィは、昨日の襲撃のゴブリンの動きが不自然なほど統率されていたと感じているようです。ぜひ経験豊富な先輩方のご意見も伺いたい」

「あ?んぁー……昨日はやつらより火事の方に気を取られてたからなぁ。おいテケテケ、テメェなんか気付いたか?」

「むう……言われてみれば、まず焙烙小鬼を投げ込み、しかるのち混乱に乗じ攻め込むというのは、彼奴らにしては上等すぎる戦略だったような気もするでござるな」

「確かに……前にゴブリンどもの群れと戦った時は、グレネードも他のも一緒くたに襲ってきたよなァ……爆発で仲間のゴブリンどもを盛大に吹っ飛ばしてて、戦いの最中だってのに笑っちまったのを覚えてるぜ」

「納得したか。ならついてこい」

「まァ、昨日やつらと戦ったのはテメェらだしな。信じてやるぜ、でかスカウト」

「任せろ」

先頭をスカウトのリィ、そのすぐ後ろをドン、テケテケ、メイリン、そして一番後ろを僕と先輩、という陣形で巣穴に入る。薄暗い洞窟に足を踏み入れると、すぐに強烈な悪臭が漂ってきた。

「ふぎゅ!……く、くちゃいですぅ~~!!」

「騒ぐな」

リィに叱られ、メイリンはしゅんと肩を落とす。

「す、すみませぇ~~ん……」

「これ、糞尿のにおいっすか?正直、かなりきついっすね……」

「ああ......気が滅入る」

げんなりしている僕たちを、前衛のドンは笑い飛ばしてきた。

「ハッ、根性ねぇなお前ら。こんなもん、酒場近くの路地裏に比べたらくせェ内にも入んネェよ」

「然り。心頭滅却すれば火もまた涼し、でござる」

警戒を解かずに進むリィの歩調に合わせて、じりじりと前進していく。薄暗く息苦しい洞窟は、不気味なほど静まり返っていた。

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