表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
チートヒーラーの僕、救った相手に惚れられてしまう件〜転移前から相思相愛の氷魔法使いと、ハーレムパーティーで魔石の陰謀を追う〜  作者: 黒倉ばくら
第二章 ゴブリン討伐と花咲か少女

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

22/27

第22話 襲撃

激しい振動と、大きな音で目が覚める。

「っ!」

目の前をリィが黒い風のように駆け、部屋を飛び出していく。

「あ、リィ、ちょっと待ってよ!」

追いかけて外へ出ると、澄んだ夜の空気が肺を満たした。

村が燃えている。風に乗って悲鳴が聞こえる。丘を登って一人の男がやってきた。

「出て来るんじゃない!隠れろ!爆弾っ……大砲だ!!誰かが村に大砲を打ち込んでる!!」

「ええっ!?」

と、夜闇に一つ、二つと小さな明かりが付き、暗い空に歪んだ弧を描く。

そのうちの一つが、こちらへ向けって落ちてくる。

「伏せろ!!」

そう叫んだリィは僕と男を引き寄せると、ものすごい力で押し下げてかがませ、自分の身体でかばった。

耳をつんざくような轟音と衝撃、爆風。……恐る恐る目を開くと、少し先の地面に大きな穴が空いていた。炎が巻き上げた風が焦げた肉の臭いを運ぶ。穴の周りには、バラバラの肉片が飛び散っていた。

「おぇっ……」

「この尖った耳……ゴブリン!夜襲だっ!!」

「……え、あ、これグレネードゴブリンってやつ!?こんな威力高いの!?」

「あれ!」

リィの指さす方を向くと、村の入り口の方に、炎の明かりを反射してきらきらと光る何かがいくつも動いている。

「剣……?冒険者……?」

「違う、ゴブリンの群れ!行くぞ、ハルト!」

「う、うん!」

丘を駆け下り、燃える家々と、悲鳴を上げて逃げ惑う村人たちの間を抜けて走る。

「ヒィィッ!くッ、来るなァッ!」

「ギャギギャギャッ!!!」

入り口には十数匹のゴブリンの群れが押し寄せており、それを見張り番が槍で懸命に追い返そうとしていた。だがついに槍を掴まれ、引き込まれて、倒れた所を袋叩きにされる。

「死ねッくそゴブリン!」

リィが群れに突っ込み、血飛沫をいくつも上げながら、ゴブリンたちの間を縫って見張り番のもとへ向かう。

「ハルト!」「う、うん!」

後からのこのこ付いていく。リィはかがんで見張り番の様子を見ていた。

「死んでる、治して!向こうのやつ倒してくる!」

「え、あ、うん!……うっ、か、顔がぐちゃぐちゃにされてる……」

動揺からコントロールが上手くいかず、かなりの魔力を無駄にしながら蘇生する。鈍く頭が痛んだ。

「……っ!!アあっ!!ああああああああ!」

ぴくんと身体を跳ねさせた見張りは、言葉にならない声で絶叫しながら暴れだす。

「し、しっかり!しっかりしてください!!」

「嫌だ!!!なんで、死にたくない……!!」

「あなたは生きてます!槍を持って、リィと一緒に戦ってください!」

「うう、ああっ、なんで……なんで……」

「だ、ダメだ、錯乱してる……」

後ろで物音がした。嫌な予感に振り向くと、二匹のゴブリンが茂みから出てくる。

「た、立ってください!ゴブリンが来ます、逃げないと!!」

「嘘だ……死にたくない………………」

「ううっ……こ、こうなったらっ!」

見張り番の槍を拾い、腰だめに構えて前へ一歩進む。

「やああああっ!!」

やけくその突撃は幸運にも、一匹の喉を貫いた。ゴブリンは血の泡を吹いて痙攣し、動かなくなる。

「ギギャギャギャ!!」

もう一体が怒り狂って剣を振り回しながら襲い掛かってくる。とっさに魔法の閃光で怯ませたが、死体から槍が抜けず、攻撃ができない。もたもたしているうちにゴブリンは視界を取り戻し、腕に向かって剣を振り下ろしてきた。槍から手を放してかわそうとするが、間に合わず深く切りつけられる。血が噴き出し、激痛が走った。足がもつれて倒れる。

「ひいっ……!」

怯える僕を見て、ゴブリンはにたりと笑う。

「ギャギィィィ!」

ゴブリンが武器を振りかざすのを見て、僕は思わず目をつぶった。

ヒュオオオオオ......!

凍てつく風が吹き抜け、頬にちりちりと冷気を感じた。

「.........?」

恐る恐る目を開けてみると、剣を振り上げたままの姿勢で、ゴブリンが凍っている。駆け寄ってきた先輩が、真っ青な顔で僕の身体を助け起こして言う。

「ハルトっ!血、血がっ……!は、早くポーションを……!」

動揺しながらローブの中を漁る先輩に言う。

「大丈夫です、今、自分で治すんで……」

「ああ、そ、そうだったな……君はヒーラーか……」

ハッとしたように先輩は言って、僕が傷を治すのを心配そうに見つめていた。

「先輩……遅いっすよ」

「すまない、眠っていた。……くそっ!君を守ると誓ったのにこのザマだ……!」

「先輩、僕のことより、向こうでまだリィが戦ってるんです!助けてあげてください!」

「……分かった、加勢する!」

二人がゴブリンを倒すまでの間、僕は苦労して槍を引き抜き、泣き続ける見張り番をなだめていた。

しばらくして戦闘の音がやみ、二人が戻ってくる。リィの外套と先輩のローブには、凍った血肉の欠片がこびりついていた。

「こっちはおわり」

「まだグレネードゴブリンを投げてるやつがいるはずっす!」

「それは私が吹っ飛ばしておいた。崖の上から投げているのが分かったから、崖ごとな」

「あ、そうなんすか。すご」

「一応この辺を見て回りたい。ハルト、明かりになって」

「了解っす」

「では、私は消火を手伝ってこよう」

僕たちは二手に分かれ、進み始めた。

・・・・・・

「まろーどの世界でも、ハルトやエイアくらいの年のやつが戦うことあるの」

二人で村の周りを見回っていると、リィが言う。

「ううん、全然そんなことない。僕たちは高校生だったから……朝から夕方まで勉強して、その後は夜まで部活……決められた趣味の活動をしてた」

「ふーん。つまんなそう」

「うん。つまんなかった」

じっと夜の闇を見つめながら、リィが呟く。

「エイア、素人じゃなかった」

「素人?なんの?」

「命の取り合い」

思わず彼女の方を見る。その横顔からは、何の表情も読み取れない。

「それ......どういうこと、リィ」

「わたしにもわからない。でも......エイアからヘンなにおいがする事と、繋がってる気がする」

「せ、先輩は......。先輩は、悪い人なんかじゃないよ」

「ん。わたしもそう思う。隠してることがあるなら、話したくないってこと。エイアが話したくなるまで待とう」

「......うん。先輩を信じてくれてありがとう、リィ」

「別に......」

歩みを進めると、村の裏手の崖に真新しい崖崩れの跡があった。

「これ、先輩が一人でやったのかな」

「ん。あっちの岩が凍ってる。そっちの隙間からゴブリンの腕が出てる」

「うわっ、ほんとだ……」

「……生き残ってるやつはいないみたい。戻ろう」

「了解」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ