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チートヒーラーの僕、救った相手に惚れられてしまう件〜転移前から相思相愛の氷魔法使いと、ハーレムパーティーで魔石の陰謀を追う〜  作者: 黒倉ばくら
第二章 ゴブリン討伐と花咲か少女

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第19話 揺れる馬車と七人の冒険者

荷台の上から見える風景がゆっくりと流れていく。腰かけた荷台から揺れが直接伝わってきて、お尻が痛い。幸運にも天気は晴れで、雨に濡れる心配はしなくてもよさそうだ。

荷台に向かい合って座った僕たちは、村に到着するまでの間に簡単な自己紹介をすることになる。最初に口を開いたのは、意外にもあのオールバックの男だった。

「私は諏訪部拓斗。ティン最王手の金融機関である諏訪部銀行の頭取、諏訪部栄一の最も優秀な息子です。得意とするのは、圧倒的な破壊力と範囲を持つ風魔術……詠唱にやや時間がかかるが、なに、そんなものは些細な事です。各員、戦闘では私の盾となるよう努めなさい」

「メイリン・ブラックブライアです!スワベ家のメイドです!え、えっと、斧を使います!」

「オレァ、ドン・バルタザール!ケンカと料理の腕ならだれにも負けねェ!戦いじゃ魔法だの武器だの、まどろっこしいモンは使わねぇ。男なら体一つで勝負だぜ!」

「拙者、テケテケ・モーサンと申す。ティンより遠く東方の国、ムイニーから武者修行に参った。我が刀に切れぬもの無し。……好物は団子でござる」

「魔法使いの霧原晴人っす。治癒と光の魔法が使えます。転移してきたばかりでまだ右も左も分からない新米ですが、精一杯頑張ります」

「同じく、魔術師の藤原永愛だ。使うのは氷と重力魔法が主だが、必要なら大抵の魔法は使いこなせる自信がある。だが、今回ばかりは先輩たちの背中を見て学ばせてもらうよ」

心にもない謙遜を言って、先輩はニヤリと笑った。

「………………リィ?リィの番だよ」

「……なにが」

「自己紹介!」

「リィ。ダガーと弓。探索は任せろ」

「ダガーと弓だァ?テメェその図体でスカウト志望かよ。クラス選び間違えてンじゃねーの?」

リィはじっとドンを見た後、不意に猛烈な速さで腕を動かした。ダガーが鈍くきらめき、ドンのブーツのすぐそばに突き刺さる。

「どわぁッ!?テメ、何しやがる!オレの足に穴空ける気かァ!」

「……ドン、待て。ダガーの先をよく見るでござるよ」

ダガーの先には、はりつけにされたムカデのような虫が、紫色の体液を流しながら肢をばたつかせていた。

「……っ、こいつァ毒虫か……」

「気を付けろ。噛まれるとめちゃくそ痛い」

「……フンッ。ルーキーの割にはやるじゃねーの」

「るーきーじゃない。私はリィ」

「わーったよ!よろしくな、でかスカウト」

「ん。よろしくな、筋肉」

二人は握手を交わす。リィがドンに認められたことに安堵していると、諏訪部が話しかけてくる。

「君、霧原君と言ったかな。少しいいですか」

「はい、なんっすか?」

「先程君は『治癒と光の魔法』が使えると言いましたが、正確には『治癒の奇跡』と『光魔法』が使えるという事でいいですか?」

「どっちも魔法っす。……あの、自己紹介するとみんなに同じこと聞かれるんですけど、そんなに治癒の魔法って変なんですか」

「変ではなく、存在しないものです。私は学院で五年間学んだが、治癒の魔法など聞いたこともない」

「そんなこと言われても……使えるもんは使えるんっす。えい」

「……疲労が回復した。だから何ですか?これが魔法だという証明にはならない」

「僕、教会にいた事なんてないっす。なんなら神様の名前も知りません。奇跡なんて使えるわけないっす」

「ふん……ああ、思い出しました。転移者の中には、稀に教会の手ほどきがなくとも奇跡を操れる者もいると聞いたことがある……。君もそうなのでしょう」

「そうかなぁ……」

諏訪部は一人で勝手に納得してしまった。

「ペプシ君、助けてくれ……。馬車に酔った……うぷ」

........と、先輩のものとは思えない弱弱しい声が聞こえた。

「わ、わ、吐くのはまずいっす!」

「背中さすってぇ……」

「今行きます!……すんません、諏訪部さん。失礼します」

「構いませんよ、早く行ってあげなさい。馬車を汚されてはたまらない……」

真っ青な顔の先輩の背中を、癒しの魔力を込めた手で撫でる。少しづつ先輩の顔色が良くなり、浅かった呼吸が穏やかに戻っていく。

「ありがとう……落ち着いた。お礼に私の身体を好きにできる権利をあげよう」

「あ、間に合ってます」

「……君は本当に男子高校生なのか?性欲はないのか?」

「ありますよ。でも先輩の事はガチで好きなので、冗談でそういうこと言われても拒否るっす」

「恥ずかしがるくらいはしてくれたっていいだろう」

「そういう所は先輩以外に見せたくないんで」

「恐るべき貞操観念だな……」

「割とこじらせてます!先輩を好きになったことから色々察して欲しいです!」

「ふむ、納得しかない」

僕たちが下らない会話を交わしている間に、隣でリィはすやすや寝息を立て始めていた。馬車に合わせてリィの頭もがくがくと揺れ、口の端からよだれが垂れている。

「この凄まじい揺れの中眠るとは........中々の大物だな」

「はい。リィってかわいいっすよねえ……」

「散々私一筋のようなことを言った直後にそれか。この浮気者め」

「んー、なんていうか、赤ちゃんみたいじゃないっすか。ついお世話してあげたくなるというか」

「お世話、か……」

先輩は横目で隣を見ると、リィのよだれを服の裾で拭いた。

「ぐへ……にくぅ……」

寝言を呟きながら、リィが先輩にもたれかかる。

「お、おい。……困ったな、これでは動けない」

「ふふ、微笑ましい光景っす」

「笑うな!……まあ、確かに……少しはかわいい、かもな」

・・・・・・

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