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チートヒーラーの僕、救った相手に惚れられてしまう件〜転移前から相思相愛の氷魔法使いと、ハーレムパーティーで魔石の陰謀を追う〜  作者: 黒倉ばくら
第一章 異世界と死体漁りの少女

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第17話 君は英雄になれ、ペプシ君。

僕は先輩に連れられ、学院の前の芝生の生えた広場までやってきた。

「このタグを君の服に張り付けて、私の魔力を注ぐ」

「はい」

「周りに何もない場所……んん、あそこがいいな。行ってくれ」

「はい」

「そして、君へ魔法をぶっ放す」

「はい。……はいいっ!?」

先輩から巨大な魔力の塊が放たれ、ぐんぐん迫ってくる。その輝きで視界が真っ白に染まった瞬間、死んだ祖母が川の向こうで手招きしているのが見えた気がした。

「うぎゃああああああっす!!」

「ふっ、くくくっ……ははははっ!!いい声で鳴くじゃないか、ペプシ君」

「あ、あれ?生きてる……」

僕の周囲半径3メートルほどは氷の海と化し、膨大な魔力が渦巻き、凍える風を起こしてうなり声を上げている。巻き上げられた氷の欠片が頬に当たってちくちくした。通りがかった人たちが何事かとこちらを見てざわついているのが聞こえる。

「これが識別タグの効果だ。便利なものだろ?」

「……もしこの紙切れが不良品だったら、僕どうなってたんっすかね」

「大丈夫だ、ギリギリ死なない程度の威力にしてある」

「ギリギリってなんっすか!?安全マージンはたっぷり取ってくださいよ!!てかなんでこんな危険な方法で試したんですかねえ!?僕の命かける意味ありました!?」

「びっくりさせたかった」

「しましたよ!死んだおばあちゃんの顔見えましたよ!川の向こうに!!」

「ふっ、ふふふっ……やはり君は素晴らしい。いつも期待を裏切らないな」

「もうっ……」

「自分の魔力を込めた識別タグを付けた対象は、極めて高い精度で選択的に魔術の対象としたり、あるいは逆に対象から外したりすることができる」

「へー。じゃ僕なら、離れてても簡単に回復がかけられるってことですか?」

「その通りだ。しかもだな、一度タグに魔力を込めさえすれば、それが切れるまではどれだけ遠くに離れていても魔法がかけられるというんだ。どうだ、すごいだろう!」

「そうっすね。すごいのは先輩じゃなくてこれを作った人ですけどね」

「いーーーや私がすごいんだ。軍向けに開発された試作品を拝借してきたんだからな。中々苦労したんだぞ」

「…………先輩。逮捕されたら、僕は巻き込まないでくださいね」

「なんだとこの薄情者が。共犯者として名前を挙げたうえであることないこと喋ってやるから覚悟しろ」

「最悪っす……」

「ささ、君も使ってみたまえよ。遠慮なく私に魔法を浴びせるといい」

「はい。全身ピッカピカの電球人間にしてやります」

「え……普通は害のない治癒魔法を使うだろ。鬼畜だな君は」

「どの口が言うんっすか?これですか?ん?」

「ひゃめろ〜のびる、伸びてしまう〜」

「もうっ……」

「私の美貌が崩れたらどうする?もちろんその時は責任取って結婚だからな。では、私のタグに魔力を込めてくれ」

彼女の肩に貼られたタグに魔力を流す。

「あー……なんか、繋がった感じがするっす」

「識別タグから自分の魔力を感じるだろう?それを意識して魔法を撃てば、位置に関係なく魔術の対象にできる」

「了解っす!早速やってみます!」

先輩は頷くと楽しそうに走っていき、街路樹の後ろに隠れた。

「えい」

「……オーケーだ!今、治癒の魔法がかかった!」

「分かりました!次は外してみます!」

街路樹と、辺りの芝生をぼんやりと光らせる。木の後ろからこちらを覗いた先輩には、魔法はかかっていないようだ。

「成功っすね!次はどうしましょうか?」

.........と、周りの学院生たちが、冷たい目でこちらを見ていることに気付く。

「.........場所、変えましょうか」

「なに?あんな有象無象どもの視線など気にするな」

「いや、普通に迷惑になっちゃうんで」

「訓練所は嫌だぞ。狭くて思い切り遊べない」

「遊ぶって言っちゃってるよこの人……。じゃ、街の外の誰もいない所まで行って、原っぱかなんかでやります?」

「少々面倒だが……まあ、君と二人きりになれるなら悪くないか」

・・・・・・

誰もいない原っぱで、先輩と日暮れまで魔術の練習をした。辺りの地面では僕たちの魔法が混じり合い、あちこちに生えた氷の柱が、内側に小さな光球を閉じ込めて美しく輝いている。

その真ん中で僕と先輩は体育座りして、沈み始めた太陽を眺めていた。

「……ああ、楽しいな」

「ですね」

「こんな時間が、ずっと続けばいいのに」

「続きますよ」「続かないよ」

「なんでっす?」

「いつか、私が終わらせるから」

「…………?……はっ!せ、先輩、まさか浮気!?」

「そもそも付き合っているのか?私たちは」

「ええっ!?そんなあ……」

「ははっ、嘘だよ。大好きだ。私は君だけを愛す。永遠に……」

「僕も好きです!先輩一筋っす!」

「……ありがとう。まあ、さっきのは臆病な女の下らない戯言として聞き流してくれたまえよ。あるいは君ならば、私の思い描いているものとは別の未来を掴み取れるかもしれない」

「うす!元の世界に戻って、先輩と一緒に暮らして、普通に幸せになるっす!」

「はは……普通に、か。君の普通は、私にとっての特別だ。いつだってそうなんだ……」

長い沈黙の後、先輩があたりを見まわした。真似してみると、氷の柱たちはすっかり夕日に染まり、赤く輝いていた。

「君は英雄になれ、ペプシ君。あの星の炎より、強く輝く英雄に……」

「英雄?いやー……そういうのは向いてないっす」

「なれるさ、君になら」

うつむいて、微笑みながらそう呟いた先輩の瞳には........祈りにも似た、真摯な光があった。

・・・・・・

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