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チートヒーラーの僕、救った相手に惚れられてしまう件〜転移前から相思相愛の氷魔法使いと、ハーレムパーティーで魔石の陰謀を追う〜  作者: 黒倉ばくら
第一章 異世界と死体漁りの少女

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第15話 ギルドマスターの試練、報われる少女

「ギルドマスター、ゾラ・ヴァーミリオンだ。おめぇがあのリィ・ミストルードか?」

「そーだ」

「カーッ、バッキャロー!おめぇのせいで俺ァ大損じゃねえかよ!」

まさかまた怒られる流れだろうか。必殺のジャパニーズ・ドゲザをいつでも繰り出せるよう構える。

「俺ァな、おめぇが教会に偽の身分を伝えてる引退した冒険者だって方に賭けてたんだ。それがおめぇ、こんな乳くせェガキだったとはよ……」

「お前の勝手な賭けなんか知らない。ガキって呼ぶなジジイ」

「なぁにぃ〜〜?」

「じ、ジャパニーズ•ドゲザ!」「ガハハハッ!!肝の座った嬢ちゃんじゃねぇか、気に入ったぜ!済まねぇな、あんまり驚いたもんでよ。……長ぇ間、うちの若いモンの面倒を見てくれてありがとよ」「面倒とか見てない。金のため」

「金ぇ?金ならうちに入って魔物退治でもしてた方がよっぽど稼げるだろうがよ」

「私は魔法が使えない。ソロじゃ、ギルドには入れなかった」

「いや、おめぇ今パーティー組んで……ん、そういや誰だ、そこのボウズは?」

「あっはい。わたしは魔法使いハルト、戦いはできませんが、癒しの術が使えます」

「ほう?で、なんだって床に倒れてやがるんだ。腹でも痛てぇのか?」

「大丈夫です!わたしはとっても元気です。ソファにすわります」

「くすくす……ハルト、ビビり過ぎ」

「う、うるさいな……」

「……まァとにかく、リィ、おめぇくらいの年頃の冒険者は新しいモンが見てぇ、強え魔物を倒してぇ、金持ちになりてぇ、有名になりてぇって欲でギラついてるモンだろ。そうでなきゃ、そもそも命がけでダンジョンに挑んだりしねぇ。ダンジョンでの救助ってのは危険や労力の割に金にならねぇ。腐った死体なんかも運ぶから心も削れる。なんだっておめぇは、半分慈善事業みてぇなことを五年も続けた?」

「……はじめてあそこに入ったとき、罠にかかって死んでたやつをみんな無視してた。見てたのに、見えないふりをして。それがなんかすごいむかついた。だから、みんなわたしが助けることにした」

「不義への怒りか……うーむ、ますます気に入った!おめぇみてぇにまっすぐな人間は、最近めっきり減っちまった。魔物は増えるわ、俺たちティン人とマロード連中の仲は悪くなる一方だわで、いったいこの国ァどうなっちまうのかねぇ」

「知らん。わたしに聞くな」

「ちょっとリィ、失礼だよ……!」

「おお、すまねえ。年を取ると、つい話がそれちまっていけねえ。忘れねえうちに渡しとくか……ほらよ、受け取りな」

「なにこれ」

「知らねぇのか。ギルドのメダリオンと言やぁ、特別偉ぇ事をした奴にだけ渡される名誉の証だぞ。分かるやつに見せりゃ、一発でそれなりの扱いをしてもらえるはずだぜ」

「わかった。いばりたい時に見せる」

「ガハハハ!よく分かってるじゃねぇか!とりあえず酒場の主人にでも見せてみな!俺ァそれで十年分の酒代をツケにしてるぜ!」

「十年分……にく、食べ放題……!」

「ダメだからね。お店の人に迷惑かけないようにしようね」

「んで、おめぇらギルドに入りたいんだって?リィは当然合格として、そっちのボウズは……」

「はいっ!わたしは魔法使いハルト。戦いはできませんが、癒しの術が使えます」

「そりゃもう聞いたよ。どうも頼りねぇなあ……」

「ハルトはわたしがいないとなんにもできない。だから、わたしがしっかり守る」

「うむ……よしハルト、一発俺に殴られろ!それが加入試験だ!」

「ええええ!?いやいやいや、わたしは魔法使いハルト、癒しの術は使えますが、戦いはできません!!」

「そいつはもう聞き飽きた!黙って構えろ!」

「そんなぁ……」

「ハルト、諦めろ。冒険に困難は付き物」

「しょっぱなから困難がデカ過ぎないかな……!?」

「歯ァ食いしばれ!目を閉じるなよ!」

振り上げられた岩のような拳が、猛烈な勢いで向かってくる。……と、その矛先はぷるぷる震えている僕ではなく、なぜかリィに向いた。

「…………っ!?」

勝手に身体が動き、覆いかぶさるようにして彼女をかばう。

「ううっ……!……あ、あれ、痛くない」

「……ガハハハッ!根性見せたな!ようし、合格!」

寸止めした拳を引いて、ギルドマスターは豪快に笑った。

「よ、よかったぁ~~……」

「いいか、パーティってのは命を預け合う関係だ。これからも、お互いを助けるって覚悟を忘れるんじゃねぇぜ」

「はい!」「ん」

「受付へ戻りな。おめぇらの登録証は用意させておいた」

リィが扉を開けようとした時、座ったままのギルドマスターが言った。

「なァ、嬢ちゃんよ。なんで避けなかった?」

「遅すぎ。当てる気ないのバレバレ」

「フッ。おめぇ、相当強くなるぜ」

リィは肩越しに振り向くと、ニヤリと笑い返した。二人の間には、強者の間でだけ交わされる独特な何かがあって、弱者の僕はただまごまごしていた。

「こちらがお二人の登録証になります。ギルドのメンバーであることを証明するために各所で必要となりますので、常に携帯し、無くさないように注意してください」

「無くすなだって。リィのも僕が持ってよっか?」

「ばかにするな」

『死神の手を払う者 リィ・ミストルード』

『新しき風72549 ハルト・キリハラ』

「この、名前の前に書いてあるのってなんですか?」

「それはメンバー一人一人に与えられる称号です。名誉あるメンバーを讃えるため、また同姓同名の方の混同を避けるためのものです」

「ハルトの称号、だっさ」

「確かにモブ感が半端ないね……なんか管理番号みたいなの振ってあるし……」

「ルーキーには、一律で新しき風の称号が与えられます。ご了承下さい」

「やーいやーい、72549、72549~~」

「番号で呼ばないでよ!僕にはハルトって名前があるの!」

「大きな功績を挙げ次第、それに沿った称号をご用意させていただきます」

「マジっすか!なんか、称号が付くようなクエストありませんか!?」

「少々お待ちください。……では、このゴブリン掃討のクエストなどいかがでしょうか。巣穴に入り込んでの戦闘が予測されますが、既に二つの中級者パーティが参加することが決まっています。危険は少ないでしょう」

「やりますやります!やらせてください!リィもいいよね、ねっ?」

「やだ。もっとからかいたい」

「そんなぁ……お願いだよ~~」

「しょうがない、ハルトはわがまま」

「やった!で、どんな称号が貰えるんですか!?」

「現在ですと、ゴブリンバスター1536です」

「……え?」

「ゴブリンバスター1536、です」

「プヒッ……ヒヒヒヒヒッ……。しょぼ……」

「しょぼくないもん!」

「1536」

「うっ!ううっ……」

「大変仲がよろしいようで。それでは、一週間後の早朝に街の南門へ向かってください。そこでギルドの手配した馬車に乗り、巣穴近くの村まで移動していただきます。クエスト中は原則他のパーティーの方々とまとまって行動することを推奨しておりますが、強制ではありません。他のパーティーとご相談の上お決めください」

「ハルト、わたしやる気でてきた。道具を買い足しに行こう」

「絶対1536って呼びたいだけじゃん、僕を……」

野営のための道具や保存食、ダガーにショートボウ、何束かの矢などなどを買って帰る。新しい道具をたくさん買って、リィはほくほくしていた。

「リィって弓も使えたの?」

「ん。前使ってたやつをダンジョンで無くして、めんどくさいから買い直してなかった」

「めんどくさいって……ちょっと意外だな。リィってダンジョンに関わる事には細かいイメージがあったから」

「……前のは、お母さんのお下がり。なんとなく、新しいのを買う気になれなかった」

「……そっか」

「わたしは弓が上手い。期待するといい」

「うん。それにしても……リィ、今日は良かったね」

「ん。試験の手間が省けた」

「それもあるけど……リィがずっと続けてたことが、認められて良かったなって思ってさ」

「あ……。ん」

リィはハッとしたように目を見開いた後、うつむきながら、ぽつぽつと話し始める。

「みんなわたしの事なんか、忘れてると思ってた。それか、金をふんだくってくる、やなやつだと思ってるって。……でも、違った。私の事を覚えてて、感謝してくれるやつもいた。そういうの、嬉しい、なんか」

「うん。ずっと前から、リィは独りじゃなかったんだよ。そうやって気付かないうちに、誰かと繋がっていたんだ」

「…………。ん……」

リィはうつむいたまま上目遣いにこちらを見て、もじもじしていた。

・・・・・・

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