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チートヒーラーの僕、救った相手に惚れられてしまう件〜転移前から相思相愛の氷魔法使いと、ハーレムパーティーで魔石の陰謀を追う〜  作者: 黒倉ばくら
第一章 異世界と死体漁りの少女

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第12話 冷たいアイスと、温かい時間

先輩にリィを連れて行ってもらった後、近所の魔導具屋に行く。ダンジョンで無免許ヒールを繰り返して稼いだお金で、洗濯機を買うためだ。……と言っても全自動のやつは金貨50枚くらいして高すぎるし、そもそもリィの家には水道が通っていない。なので、魔力を充填すると自動で回転する洗濯樽を買うことにした。

店員に荷物運びを呼んでもらい、荷車に乗って家まで帰る。小さくてかわいい馬ですねと言ったら、コレはロバロだよと笑われて恥ずかしかった。

リィの部屋に散らかっている服を集め、粉石鹸と一緒に洗濯樽に入れる。井戸と家を何往復もして水を入れ、樽に魔力を込める。

「すげー、ほんとに回りだした。圧倒的な文明の力を感じる……。でも、すすぎの時に水変えなきゃなんだよな。……水道って神だったんだなー……」

腕が痛くなるまで水を運び倒し、なんとか洗濯を終える。家の横にある木と木の間に古いロープが張ってあるのを見つけ、服を干していく。

「お父さんっ!!」

「えっ!?……あ、リィ、おかえり。おー、さっぱりしたじゃん」

リィは振り向いた僕を見ると、がっくりと肩を落とした。そうして悲しそうな顔のまま、黙って家に入っていく。

「リィ……?なんだろう、呼び間違えたのが恥ずかしかったんかな……先生をお母さんって呼んじゃう的なあれかもな、うん」

しばらくして、ぜえぜえと息を切らしながら先輩がやってくる。

「先輩、お疲れ様です。リィ、大人しくお風呂に入りましたか?」

「……まあ、多少ぐずられたがね。アイスを口に突っ込んでやったら素直になったよ」

「アイスなんて売ってたんですか?」

「魔法でちゃちゃっと作った」

「あれ、そのでっかい袋はなんっすか?何か買ったんですか?」

「ミルクとクリーム、卵に砂糖に塩だ。帰ったらリィとアイスを……いや、それは今はいい。君の姿を見るなりリィが猛烈に走っていったんだが、一体どういうことだ?」

「全然わかんないっす。なんかしょんぼりして家の中に入っちゃいました」

「明らかに様子が変だ。見に行った方がいい」

「……確かにそうっすね。行ってみるっす」

リビングにリィはいなかった。

「リィの部屋の扉が閉まってる……多分あそこっすね」

「施錠されているな。おいリィ、どうした?」

「……なんでもない」

「嘘をつけ。なんでもないなら、そうして引きこもる理由もないだろう」

「……なんでもない!」

「君な……理由も教えずぐずっていては、対処のしようもないだろ!」

「まあまあ、先輩……ここは穏便にいくっす。……リィ、大丈夫?具合悪いの?」

「うるさい!全部ハルトのせいだ!!」

「えっ。な、なんでぇ……?」

「あっちいけ!」

「取り付く島もない、か。しょうがない、落ち着くまで待とう」

先輩と椅子に座り、リィが出てくるのを待つことにする。

「僕、なんかリィが怒るような事しちゃったかな……」

「さあな」

「ダンジョンで足手まといになってた?僕と一緒にいるのがずっと嫌だった?それともまさか……こっそりハンバーグに野菜を混ぜたのがばれたとか!?」

「やめろ。本人の口から事情を聴かないまま勘ぐったって、疲れるだけだ」

「それもそっすね……」

「床に氷の台座を作って……と。この上に置いておけば、しばらくは傷まないだろう」

氷の塊にアイスの材料を乗せると、先輩は懐から小さなバイアルに入ったポーションを取り出し、それを飲み干した後、大きく伸びをする。

「んーっ……じゃ、私は寝る。リィが出てきたら起こしてくれ」

「すんません、付き合わせちゃって」

「誤解するなよ。私はこれっぽっちもリィの事を心配していない。ただ、アレと一緒にアイスを作ると約束をした……それを果たしたいだけだ」

そう言うと、先輩はテーブルに突っ伏して寝息を立て始めた。

「寝るの早っ。……素直じゃないなあ、先輩も」

・・・・・・

「んぁ……?」

物音に気付いて顔を上げる。辺りはもう暗い……気付かないうちに眠ってしまったようだ。口の端のよだれを拭き、寝ぼけながら天井に魔法をかける。

「……っ!」

ミルクの瓶を手に持ったリィがぎくりとした顔でこちらを見る。

「あ、リィ。良かった、出てきたんだ。……先輩、起きてください、リィが来ましたよ~」

「ぐおおおお……なんら、世界が揺れる~」

「僕がゆらしてま~す」

「ぐおおおお……はっ。……なんだリィ、やっと起きたか」

「や、それは先輩でしょ。リィは寝てたわけじゃないと思うっすけど……」

気まずそうにうつむいて黙っているリィに、先輩は何事もなかったかのように言う。

「では、アイスを作ろう。今から氷の塊を作るから、それをダガーで適当な大きさに砕いて深い器に入れてくれ」

「ん……」

「僕もやるっす!」

氷の欠片を器に詰めた後、塩をかける。アイスの材料を入れたコップを器の中に入れ、コップの中身を木のスプーンで混ぜる。

「おお……!固まってきた!すごい!」

「こっちも固まってきたっす!ははっ、なんか普通に楽しいっすねこれ」

「二人ともガキだな……」

「あー、そーいうこと言うと先輩にはアイス分けてあげないっす」

「な、なに……?悪かった……」

「許すっす!」

出来たアイスをスプーンに掬い、先輩に差し出す。

「はい、あーん」

「……うん。甘くてうまいな」

「エイア、エイア、もっとくいたい」

「ならもう一度作れ。氷が解けてきたら足せ」

「ん!」

満足いくまでアイスを作ってから、リィは口の周りについたのを舌で舐め取って言う。

「うまかった。でも、くだものぶっ壊すやつもやりたい」

「……なんすかそれ?」

「あれはお前にはできない」

「じゃ、またやって」

「まあ、別に構わないが……」

「ん、約束。こんどはバイパインでやって」

「分かったよ……全く、偉大な魔導士の力をなんだと思ってるんだ、君は……」

その後は三人で屋台のご飯を食べ、そのまま先輩と別れてリィと二人で家に帰った。リィは何か言いたそうにしていたが、結局何も言わずに寝てしまった。

・・・・・・

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