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飛ばされた最強の魔法騎士 とっても自分の星に帰りたいのだが……  作者: 季山水晶
第六章 新たな課題

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番外5 マイクの剣

番外編です。

 ミラージュの所で修行をしていたマイク。


 なんとかスカルサーベルに水魔法を纏わせることが出来るようになると「後はそれを続けろ、魔物を沢山倒して経験値を稼げ」とミラージュに言われ、追い出されてしまった。


 現時点で水の刀身を出し続けられるのは20分が限度。そこで魔力が底をついてしまう。長時間戦い続けるには刀身の無いスカルサーベルでは厳しい。


「あぁ、俺も剣を手に入れないとな……」


 大きなため息がマイクから漏れ出す。今持っている武器は練習用の安い長剣と、レアから借りているスカルサーベルのみ。元々自身の持っていた長剣はベヒモスとの戦いで折れてしまった。


 それ以来何を持って戦っていいのか分からず、剣を新調していなかったのだ。


 ミラージュの隠れ家から第四層の森を抜けるまで、何体かの魔物を倒した。その中には赤っぽいサーベルウルフや、そこに居るはずのないヒドラも含まれていた。


 刀身を出せる制限時間に限りがあるので、切る直前に刀身を出す技術を会得した。よって、ここまで問題なく森を抜けられたのだが、魔法量欠乏による疲れがたまっていく。


 ようやくマイクがいつも練習で使っていた街外れの空き地に到着すると、目の前にあった丸太を抱きかかえるように倒れ込んでしまった。


「だ、大丈夫ですか?」


 マイクは声のする方に目を向けると、そこには心配そうに見つめてくる少年の姿があった。


 少年はマイクを抱き起すと腰に付けていた水筒を取り出し、彼の口へ運んだ。


「さあ、これを飲んで下さい」


 少年の声が微かにマイクの耳に入って来る。


 マイクは口の外に垂らしながらも運ばれた水を「ゴクッ」と喉に流し込んだ。


 単なる水だが、喉に通過する感触でマイクは少し意識を取り戻した。


「すまない……」


 僅かだが動けるようになったマイクは懐から小瓶を取り出し、震える手でそれを口に運んだ。


 徐々に力が戻り、視界も明確になってきた。呼吸を整え、マイクは目の前の恩人の手を取った。


「助かった。有難う。俺はマイクと言う名の冒険者ワーカーだ」


 少年はマイクの名を聞き一瞬眉を動かし、静かに視線を送った。


 マイクは有名な冒険者ワーカーだ。知らぬものは居ないと言われる程、だが、少年は敢えてそれを口にはしなかった。


「僕は武器職人のスミスと言います。冒険者ワーカーさんがこんな所でどうしたのですか?先程のは薬?何かご病気でも……」


 いや、実は……とマイクは魔法量の枯渇から起こる昏迷状態だったことを告白した。そして、スカルサーベルと練習用の安い長剣を取り出した。


「今まで使っていた長剣がモンスターとの戦いで折れてしまった。かと言ってこの練習用の剣では心もとないし、スカルサーベルでは魔力が枯渇してしまうんだ」


 マイクはスカルサーベルに水の刀身を出し、スミスに見せた。


 それを見たスミスの目が大きく見開いた。


「その技見たことが有ります。アリスさんという冒険者ワーカーさんが使っていました」


 スミスは師のバルディーニがアリスの細剣を打った事を話した。


「アリスはバルディーニ氏の武器を得たのか……かたや俺の方は」


 剣を折ってしまったのは自身の力量不足でもある。着実に強くなっていくアリスにマイクの鼓動は早くなっていく。


 マイクは俺も……と言いかけたが、バルディーニの気難しさは有名だ。おいそれと武器を作って貰えるとは思えない。かと言って、たった今知り合いになったこの少年に口利きをして貰うなど許されるわけもない。


 ──俺の事は俺が何とかするしかないな。


 あきらめにも似た吐息がマイクから漏れ出る。


「さて、ライザーの店に行って武器を見繕うかな」


 マイクがゆっくり立ち上がると、スミスは両拳を握りしめ真剣な眼差しでマイクを見つめた。


「あの、僕にあなたの剣を打たせて貰えませんか」


 ──あの技を使えるこの人の剣を打つ。打たねばならない。


 スミスの頭の中はその事で占められた。


「俺の剣を打ってくれるのか?」


 スミスの鍛冶の実力を知らないが、子供らしからぬ分厚い手に無数の打ちダコ。むしろマイクからお願いしたいほどだった。


 居ても立っても居られないスミスは、息をするのも忘れ工房へ向けて駆け出した。


  ◇ ◇ ◇


「師匠、剣を打たせてください」


 金槌を振るバルディーニは眉をピクリと動かした。


「打ちたいのか」


「はい。ある冒険者ワーカーさんの剣を打ちたいんです」


 スミスがそう言うとバルディーニは立ち上がり汗を拭うと、オリハルコンの小さな塊を彼に投げてよこした。


「それだけしかないが、思うものを打ってみろ」


 バルディーニはそれだけ言って再び金槌を振りはじめた。


 スミスは濃青色に輝くオリハルコンを拾い上げた。希少なオリハルコンを自分に預けてくれたことに胸の奥が熱くなり、涙が溢れ出す。


 スミスはオリハルコンを両手で抱え、バルディーニにひれ伏した。


「師匠!ありがとうございます」


 オリハルコンを見つめると胸の打ちが熱くなっていく。


 ──私の全てを使って、最高の剣を打つ。


 金床に置いたオリハルコンにスミスは力を込めて金槌を振った。工房内に甲高い金属音が響き、同時に火花が飛び散る。


 ──そうだ、この音だ。これが私の最高の一振りの音……


 口角を持ち上げたスミスは、再び金槌を振いあげる。


 この後、スミスの最高傑作と言われる剣が作られることになる。


いつも読んで下さりありがとうございます。

次章開始までしばらくお待ちください。

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