101.街に戻ってみると……
次話でこの章のラストになります。
俺達は目立つと分かっていて小竜と共にギルドへ向かった。
この国での小竜は幻の神獣で、古来の武人が共に戦っていたという代物。冒険者達の驚く姿が目に浮かび、自然と口角が持ち上がる。
「ちょっと、何をいやらしい顔をしているのよ」
通信機から話しかけてきたアリスは眉を顰める。
「いやあ、冒険者どもが俺達を見てどんな顔をするかが楽しみで……」
「いい趣味ではないな、私達ヴィーラ族としては悪目立ちなどしたくはない」
リンクは微笑みながらも唇の端がかすかに引きつり、その身は一歩引き気味だ。
「ほんと、悪趣味よ。そもそもレアも『目立ちたくない』って言っていなかったっけ?」
アリスも追い打ちをかけて来る。確かにそう言っていた時期もあった、あったが、やはりこの可愛い小竜たちを見て貰いたいではないか。
「いや、へ、変な意味ではなく、この素晴らしい小竜たちを見て貰いたいと思ってだな……」
「あ、そういう事。確かにこの可愛い娘達を見て貰いたいものね」
アリスは軽く微笑み、リンクも満足げに頷く。すまん、本当は口から出まかせだ。
向かいくる風と、鬱蒼とする地面を照らす木漏れ日を受けながら俺達は勢いよく森を駆け抜けている。
気になる所は魔物と殆ど出くわさないところだ。
『赤渕』の影響でノーマルが身を隠してでもいるのだろうか?それとも食われたか……
一抹の不安を抱えながらも俺達は街に着いた。
「やばいな、驚かれるどころの騒ぎじゃないぞ」
街に着いた途端大パニックだ。街の人達が小竜に乗っている俺達を見て逃げ纏っている。叫び倒している人や泣きわめいている子供、挙句の果てにはやかんとアイロンを持って同じところをグルグル回っているおばちゃんまで。
これは確実に魔物が攻めてきたと思われている。
「ねえ、レア……どうしよう」
アリスは顔を歪めこめかみから汗を垂らしている。
するとそこに砂ぼこりを立てながら大勢の人が押し寄せてきた。その手には長剣や杖、弓など物騒なものを所持している。
「魔物は何処だ」
「おい、抜け駆けするな。獲物は俺のものだ」
「弱い奴は下がっておけ、怪我をしても知らないからな」
その集団は姿を見なくてもそのセリフだけでわかる。ギルドの冒険者達だ。
(気持ちは分かるが、お前たちの実力では一瞬で灰だ)
冒険者達の怒号が飛び交うなか、一番に俺達の前に現れたのは手に自身のからだ程のある鉈を持ったスキンヘッドで筋肉隆々のおっさん。そう、ギルドマスターのオリバーだった。
「お前ら、俺の指揮の下で動けよ!誰も死ぬな」
腕を振り上げたオリバーの怒号が響く、冒険者達も「おー!」とそれに続く。見事な統率、さすがギルドマスターと言ったところか。
だが、攻められては困る。
「おい、オリバー!」
俺の声にピクリと首を動かしたオリバーは、辺りをキョロキョロと見渡した。が、なかなか発見して貰えない。
俺がもう一度叫ぶと、ようやく小竜に乗る俺達の存在に気付き、目を剥き手に持つ鉈をゴトリと落とした。
「え?えぇ!レア?なんだそいつは!」
オリバーの大声で後ろに居る冒険者達が飛び跳ねた。
「見ての通り小竜だ」
オリバーは小竜を指さしたまま、顔を青ざめアワアワと開いた口は全く塞がらない。どうやら言葉をド忘れしたようだ。
「なんだ、マスターオリバーともあろうものが小竜を知らないのか」
俺は薄ら笑いを浮かべ、敢えてそう言ってやった。
「小竜……?」
首を傾げるオリバーを見て俺はやれやれとじゃれつく小竜の頭を撫でた。
すると嬉しそうにミヤビは手の羽をバタつかせ、オリバーの方へググっと首を伸ばした。
「あわわわわ」
オリバーが膝から崩れ、その場にへたり込むと後ろに居た冒険者達も思わず後ずさりをする。さっきからまるでピクミンの様で思わず笑いが噴き出してくる。
「もう、ちょっと止めなよレア。大丈夫マスター?」
慌てたアリスが小竜から飛び降りオリバーの元へと駆け寄った。
「あ、アリス。どうなっているんだこれは!」
「まあ、説明すると長くなりますが……」
苦笑したアリスがそう言いかけた時、リンクがアリスの横に並び真顔で胸に手を当てた。
「あなたがギルドマスター殿ですか?私はヴィーラ族のリンクと言う者。お見知りおきを」
「何だと?ヴィーラ族?……そりゃなんだ?」
オリバーは眉を顰め首を傾げるが、その様子を見てリンクは愕然と俯いた。
「なんと、マスターと呼ばれるものがヴィーラ族を知らぬとは」
「ちょ、ちょっと待ってくれ。頭を整理させてくれ」
オリバーは片手で頭を抱え、首を横に振った。だが、次の言葉が出ないうちに後ろからヤジが飛び出してくる。
「おい、マスター指示はどうなったんだよ」
「魔物じゃねえのかよ。どうしてくれるんだよこの状況」
冒険者達の罵声が高鳴るにつれ、オリバーの顔面も紅潮していく。
「やかましい!脅威は去った。解散だ、解散」
オリバーは手で空気を掃き、喉を震わすが冒険者達はその場から動こうとはしない。
「手ぶらでなんて帰れるかよ!」
「ちゃんと説明しろや!このハゲ」
感情の高ぶっている冒険者達は、マスターに対してもぞんざいな態度を取り出す始末。オリバーの身体全体がみるみるとゆでだこ様に赤く染められていく。ギリギリとなる歯ぎしりが鳴りやんだ時。
「誰だ!今ハゲって言ったやつは。ミンチにしてやろうか!」
オリバーは後ろを振り向くと拾い上げた鉈を振りあげた。
顔を青ざめた冒険者達はフナ虫のように散らばっていく。
それを見て少しすっきりしたのか、オリバーは鉈を下ろしニヤリと口角を持ち上げた。
「おっと、言い忘れた。参加者には100ピネル出す。後でギルドまで取りに来い」
不気味な作り笑いを浮かべたオリバーは冒険者達に向かってそう叫んだ。彼らの動きがピタッと止まる。
「まあ、金くれるならよぉ」
「じゃあ帰るか」
金を出すとオリバーが言った途端、あっさりしたものである。その場の冒険者全員が履けると、オリバーはリンクに向き直った。
「改めてゆっくりと話がしたい。ギルドに来てくれないか」
俺達は小竜を連れてギルドに行くことになった。まあ、丁度納品もあるしな。
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