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飛ばされた最強の魔法騎士 とっても自分の星に帰りたいのだが……  作者: 季山水晶
第六章 新たな課題

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98.第二層へ

 向かう先は第二層……サイクロプスの居る場所だ。第二層までは数百キロメートルも離れているので、通常の空間認識魔法では奴の居場所を同定できない。


「もっと近づかないとサイクロプスの居場所は同定できない。先を急ごう」


 手綱をクイっと引くと小竜ミヤビはすぐに俺の意図を理解し、地を蹴って走り出した。


「ちょ、ちょっと待ってよ」


「な、何と行動の速い……ちょっと待ってくれ」


 アリスとリンクの慌てふためく声が耳に届くが、俺はもう止まらない。


 それにしても小竜の乗り心地は快適だ。思いの外揺れないし、おまけに速い。身体を擦る草木が剃刀の様に俺の頬を掠め、耳元では風が唸りを上げる。保護魔法スキンプロテクトをしていなければズタズタに切り裂かれているだろう。


 時速に換算するとおよそ80キロメートル、この調子だと二時間半程で目的に着けるだろう。


 しかし、森の中で木を避けながらこのスピードを維持するなんてもはや駄獣の域を超えている。


 森を抜け、視野が開けたサバンナエリアに入った時、リンクが俺に並びかけ、大声で「止まれ」と言ってきた。


(何か問題でも生じたか)


 周囲に魔物が居ない事を確認し、木陰になりそうな一本木の下で俺は小竜を止めた。


「どうした?何かあったのか?」


 俺は後ろにいるリンクに問いかけた。彼も周囲を見渡し辺りの様子を伺いながら、俺の横にノアを着けた。


「あわただしい奴だな、少し話を聞いてくれ。走らせている間は連絡を取り合えないので、これを耳に装着してくれ」


 リンクは俺とアリスにイヤホンの様なものを手渡した。


「これは?」


「これは『プラティカ』と言う名で魔石を利用した通信機器だ」


 どうやらトランシーバーの様なアイティムらしい。俺がそれを手に取りじっくり眺めているとリンクは腕を組みながらため息をついた。


「出発前に渡したかったのだが、レア殿が飛び出したからな」


「それはすまなかった。つい、気が逸ってしまった」


「ほんとだよ、もう、レアったら直ぐに走って行っちゃうんだから」


 アリスも頬を膨らませて俺の胸にコツンと拳を当ててきた。


「すまなかったな、アリス。それにしても小竜の乗り心地は素晴らしいな。おまけに速い」


「ああ、そうだろう。我がヴィーラ族が誇る小竜だからな。それに……」


「ちょっと静かに、魔物が近づいてくる」


 俺は意気揚々と話すリンクの口を塞いだ。この生臭い様な不穏な空気は以前戦った事がある……ベヒモスだ。ベヒモスも確か第二層に生息する魔物だ。それがこの第三層に居るという事は……


 俺の言葉に反応したかのようにリンクも顔を顰め手で鼻を覆う。


「『黄魔』もしくは『赤渕』に変異したベヒモスがこちらに向かっているという事だ。生命力は……5万近い」


 それから間もなく大地が割れるような地響きと、獣臭が漂いだすと、サバンナに砂煙がたち、大物の魔物の影が肌を刺すような圧迫感を与えて来る。


 アリスはつばを飲み込み、リンクは顔を青くした。


 以前戦った『黄魔』は1万5千ほどの生命力だった。こいつはその上を行く……『赤渕』か


「臭いわね、いったいどんな魔物が近づいて来るの?」


 アリスは音の方向へ眼をやったまま真剣な表情で俺に問いかける。


「ベヒモスだ。以前アリスが戦ったやつよりも格段に強いぞ」


「べ、ベヒモスだと!」


 リンクが驚嘆の声を上げる。彼もベヒモスの恐ろしさは知っているようだ。


 アリスは口を一文字に結んだ。拳を力強く握りしめるとウンと頷いた。


「私にやらしてくれる?レアは小竜たちを守って」


 彼女の真剣な眼差しを見て俺は止める為に出そうとした手を引いた。


(危険ではあるが師匠として、そして仲間として彼女を信じて見守ろう)


「わかった、では支援魔法を……」


「それも要らない」


 師匠として最小限の手伝いを申し出た俺にアリスは首を横に振った。そして落ち着いた口調で話を続ける。


「決して舐めてるわけじゃないよ。考えがあるの。もし怪我をしたら……フフフ、その時は頼りにしてるわね」


 アリスのキャラの変わりように目を丸くしていたリンクは突然髪を振り乱し、俺とアリスの間に割って入った。


「ちょっと待ってくれ。見ているだけだなんて……私、私も戦う」


 アリスは一呼吸置いた後、ゆっくりと頷いた。


「わかった。あなた弓を使えるでしょ?支援魔法をかけるから足止めお願いね」


 以前、俺達がリンクを助けた時、彼の傍にあった弓をアリスは覚えていたのだろう。リンクは震える手でリュックから弓を取り出した。


「ベヒモスを知っている?象の化け物よ。おまけに武具も扱える奴もいるわ。それに長い鼻はまるで第三の腕」


 アリスはゆっくりと息を吐き出し、視線をまだ見ぬ敵の方を睨みつけたまま話を続ける。


「普通に打っても弓は効かないけど目を狙って。私に考えがある」


「あ、ああ。分かった」


 冷や汗が頬を伝い、矢を握る手がかすかに震えるリンクの肩に俺はそっと手を置いた。


「大丈夫だ。お前はお前の仕事をすればいい、後はアリスに任せておけ。そして二人の背中には俺も居る」


「あ、ああ。有難う」


 大きく息を吸ったリンクは震える手でゆっくりと弓を構えて矢を手に取り、何度も深呼吸を繰り返した。


「ブフー」と地鳴りのような呼吸音が辺り一面に響き渡った。


 俺は万が一の惨事に備えスカルサーベルを手に添えた。


 まばらに生えている草木がなぎ倒され、その悲鳴が俺の心臓を殴打する。空気は淀み、遂にうっすらと巨大な魔物の影が現れる。


 間違いない、既に奴は俺達を認識している。

いつも読んで下さりありがとうございます。

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