07 契約者
「なぁ、街にいる人が、最近減って来たと思わないか?」
ここ数日感じている事を朝食の席で口にすると、少し驚いたように顔を上げた男が隣にいたリグと話し始める。
「これは進歩したと言うべきなのか?」
「進歩?」
「それとも、気が付いただけマシと言うべきなのか?」
「二人で話をしていないで、分かるように説明してくれないかな」
彼らが自分の話をしているのは分かっているので、少し怒ったように問いただす。
「お前が言う事が正しいって話さ」
「人が減っているのか?」
「まぁ、そうだな。但し、減り始めたのは俺がここに来た頃からだけどな」
「そうなのか?」
「俺が来た後から、ライ以外の新しいのが増えていないはずだ。思い出してみろ、新しい顔を見た記憶があるか?」
そう言われると、この宿でも新しい人を見た覚えはない。
「どうして?」
「止められているからさ」
「だから、どうしてだよ」
「最近、魔物が強くなったと思わないのか?」
「そうなのか?」
強くなったかと聞かれても、ガマ狩りを止めてから、毎日違う魔物を相手にしているのだから比べようが無い。
「ふ〜ん、感じて無いのか? まぁ、いい傾向なのかもな」
「だからちゃんと説明しろ!」
勝手に納得して話が終わってしまいそうになるのでまた問いただす。
彼は相変わらず言葉が足りないので、聞きたい事がある場合は、多少しつこくても聞き出すしかないと思っていると、案外あっさり理由を話し始める。。
「この時期、魔物が強くなるんだ。それを知らずに狩りに行くと全滅する。
それで新しい冒険者は街に入れないようになるんだ、自分の実力を知っている奴なら大丈夫だろうが、そうでなければ生きて戻れない」
「そんな話、聞いた事ないぞ」
「百年に一度だからな」
「は?」
「気にするな」
「じゃあこれからも魔物が強くなるって事か?」
「手に負えないと思った奴からいなくなるから、昨日辺りで冒険者はほとんどいないんじゃないかな」
「どう言う意味だ」
「残っているのは、ウエストリアの騎士か契約者くらいだ」
騎士はしっかり訓練を受けている連中だし、契約者は領主から仕事の依頼を受けて魔物狩りを専門している連中で、冒険者と呼ばれるものとは格が違う。
「ちょっと待て、俺は冒険者だぞ」
「心配するな、ちゃんと契約者にしてある」
「はぁ?」
「それにコレが終われば報酬が入るぞ、ウエストリアに移籍するくらい可能な額だ」
「いくら報酬が手に入っても、移籍出来るとは限らないだろ」
確かに移籍料を支払えば受け入れてくれるかもしれないが、領主に認められないと移籍は出来ない。
だが確かに高額な報酬が手に入れば、王都で暮らす事は出来る。
「で、これはいつ終わるんだ」
「原因が無くなれば終わる」
「原因?」
「そうだ」
「後、数日だ」
それで話は終わったとばかりに食事を再開した相手は、これ以上話をするつもりが無いらしい。
彼の側にいると、自分では考えてもいなかった道に進まされている気がするのは、間違っていないはずだ。
それが腹立たしく、時に自分を不安にさせているのも事実なのに、離れたいと思わないのは何故なんだろう。




