06 十日目
「貴方が気に入ったのは分かりましたが、彼をどうするつもりなんです?」
「どうするかじゃぁない、どうなるかだ」
「どういう意味です?」
「今に分かる」
「まぁ、いいでしょう。それよりまだなのですか?」
「まだだなぁ。なぁ、面白いのがいて良かっただろ?」
「先月もあったばかりでしょう? いい加減怒られますよ」
ウルフレッドが気に入った人をウエストリアに移籍させたり、屋敷に連れ帰ったりするのはいつもの事で、先月も王都の外壁の外にいた女性を連れて来ていた。
「おかげで屋敷のメシが旨くなったぞ」
「そうかもしれませんが、、、また連れて帰るつもりですか?」
「だから言っただろ、決めるのは俺じゃぁない、どうなるか選ぶのは二人さ」
「まさか、彼をですか?」
「多分な、文字を教えておけよ、俺が最初に渡した物くらい読めなくては話にならん」
「オルグ、知っていたのですか?」
「ウルは、無駄な事をしない」
「確かに魔力は強いと思いますが、、、まぁいいでしょう。そうなれば、確かに決めるのは私達ではありません」
ここ数日、疲れて動けなくなっていると彼らが意味の分からない事を話し出す。
「頼むから訳の分からない話は止めてくれ」
「お前が面白いと言っているだけだ」
「誉められている気になれない」
「心配するな、誉めてない」
くそ! 腹が立つ。
毎日沼地でドロドロになりながら剣を使い、炎刃を何とか使って面倒になりそうなガマを狩る。
だが沼地のガマは相変わらず学習して強くなるし、何日も通って狩っているのに一向に数が減る様子も見えない。
「どうなっているんだ?」
「何がだ」
「これだけ狩っているのに、いくら何でもおかしくないか? 確かに領地内でも現れると排除しにくい魔物だが、こんなに数が戻る事はないだろ?」
「こいつらは両性体だからな、一匹いればいくらでも増える。それに元々この辺りに生息していたなら、すでに卵も沢山産んでいるのさ」
「卵?」
「親の数が減ると卵が孵るし、卵の数が減ると親が卵を産む。心配しなくても練習相手には不足しないから大丈夫だぞ」
「心配している訳じゃない」
そんな話をしながら沼で相変わらずガマ狩りを続ける。
そして双剣で炎刃が自由に使えるようになった約束の十日目。
前日仕掛けて置いたらしい蜜を背に、散々共喰いをしたアリアントの相手をする羽目になった。
「俺は今、使える剣がない」
彼はリグと二人で高みの見物を決め込んだが、ライは“風使い”が得意らしく殺されそうになるとアリアントの動きを止めてくれたおかげで命拾いした。
「お前、ライに感謝しろよ。コイツが居なかったら、五回は死んでいるぞ」
腹は立つがその通りで、おまけにこれで道具屋への支払いが完了した。
「それ、手放す気ないのかい?」
「悪いな、必要になるかも知れないから今はダメだ」
随分残念そうにしていた道具屋から小袋を取り上げて答えている。
何を渡していたのか気にはなるが、聞いても教えてはくれないだろう。
「ありがとう、礼を言うよ。ちょっと悔しいけど、結局は俺の剣の代金のためだし助かったよ」
「礼はいい、だがコレは貸しだ。覚えておけよ、一つ貸しだからな」
コイツに貸しを作るのはちょっと嫌な気がするが、分かったと頷いて話を続ける。
「なぁ、そろそろ森の奥に行っても大丈夫じゃないか?」
「お前、ライがいなかったら今日、何回死んでいると思っているんだ、それにガマ狩りが本当に面白くなって来るのはこれからだぞ」
「今日、色の違った奴は狩って来たぞ」
「心配するな、俺がちゃんと作っておいた」
そう言ってニッと笑う。
俺はコイツに礼を言えばいいのか?
それとも一発殴った方がいいのだろうか?




