第二十四話 《エキナシアの独白》
僕は元勇者様に拾われた。
なんて運がいいんだろう!
僕のお母さんは病気にかかった。それは昔々、獣の新鮮な内臓を生で食べるっていう流行りがあったらしいんだけど、その時にエルフ族の間で流行った流行り病で、今は生で食べることはなくなったから沈静化している。
けど、どれだけ加熱しても極稀にかかるエルフが出てくる。
不幸なことに、それが僕のお母さんだった────。
生で内臓を食べることはしなかった。けれどお母さんは感染してしまったんだ。単純に運が無かったんだろうって、お医者様は言っていたんだ。
ただし、治らない病気じゃないって聞いて少し安心した。数年に一度、月と太陽が重なる時がある。その時にだけ花を開く、特殊な薬草を調合に使えば治るんだって。
でも、数年に一度だけ花を開く薬草はとても高い。
普段はなんてことない普通の草に擬態しているからだ。それも葉っぱや根や種などに統一性がなく、月と太陽が重なる時だけ同じ色の花を開かせる。だからその時まで分からないんだって。
そのお薬を手に入れるためには────ざっと300万ガル……。
僕は眩暈がした。お父さんが月に稼いで来られるのは10万ガル、そこからさまざまな出費を換算すると全く手元に残らない。だから貯蓄は殆ど無いに等しかった。
大黒柱のお父さんが涙を流して大泣きしてるのは、人生で初めて見た。それを見てショックを受けたのと同時に、僕も何かしなければならないという焦燥感に駆られた。
「お父さん! 僕、人間の里に行くよ!」
だから僕は冒険者になることを決めたんだ。
エルフから冒険者になろうとする人は人間よりも少ない。元々弓矢による狩猟を生業として、ほぼ自給自足のような生活を送っていたから、冒険者になるくらいなら家を守るためにエルフの里に留まることが多かったんだ。
でも、勇者様たちの活躍で冒険者を夢見るようになるエルフが増えて、冒険者になればお金がたんまり入ることも周知されるようになっていた。
だから手っ取り早く一攫千金を狙うなら、冒険者になるのが一番だったんだ。
そう意気込んで王都の冒険者になったけど、僕は戦いが下手で下手で……事情を話して同じパーティを組んでくれた人に申し訳なくなるくらい足を引っ張っちゃったんだ。
だから一人で頑張ることにした。
そこでソロになったのを狙いすましたかのように選ばれたのがあのクエスト────元《斥候の勇者》様を探し出してほしいっていうクエストだった。それも《弓の勇者》様に名指しで────。
疑う余地はなかったから、すぐに情報をくれるという貴族様に会いに行って話を聞いた。それによると、《斥候の勇者》様は王都の南にある田舎町・フラッド町で目撃されたと。
そこからはまぁ……なるようになったよね。
師匠からお金を肩代わりしてもらって、こないだ届いた手紙にはお母さんは元気になってるって書いてあった。
そして今、僕は冒険者を続けさせてもらっているんだけど中々ランクが上がらない。師匠は「短剣を止めれば上がりやすい」とは言っていたけど、「好きこそものの上手なれっていうしな。がんばれ」って応援してくれたから短剣で頑張ることにしたんだ。
だが、ローリエさん、エルダーさん、リコリスさんのお三方が三か月足らずでAランクに到達した冒険者と考えるとちょっぴり劣等感を感じちゃう。
それ以上に、お三方といつか肩を並べて戦えるようにするというのが僕の目下の目標だ。
あ! それよりも師匠にお金を返すのが一番先ですよね!
けど師匠に肩代わりしてもらったお母さんの治療費は300万ガルもするんだ……。僕がEランクなんかで燻っていたらそんな簡単に返せる額じゃない。だからもっと強くなるんだ!!
「そういえばエキナシアはどうして短剣を使っているんだい?」
「実は、僕は《光の勇者》様に憧れているのです! ですから剣を使おうと思ったのですが重くて使えなくて仕方なく短剣で妥協を……あ! だからと言って、《斥候の勇者》様を追放したことを良しとしている訳ではありませんゆええぇ!!!」
「ふふっ……だから俺は気にしてないってば。しかしエルフと言えば、弓のイメージが強かったからね。ちょっと意外だなって思っただけだよ」
「確かに僕の周りは弓使いばかりでした。しかし! 短剣を使える凄腕エルフって格好良くないですか!?」
「どうなんだろうね」
「私はー、早く冒険者として一人前になりたいならー、エキナシアちゃんは弓を使うべきだと思うな☆」
うぐっ!
わ、分かっているのですそれくらい!
けど師匠はお金を返すのはいつでもいいと言ってくださったのです! ですから、どうせならエルフ初の短剣使いAランク冒険者になりたいのですよ!!
見ていてください師匠!
いつかきっと、《Sランク短剣使いの冒険者》の師匠様と呼ばせてみますからね!




