表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
琥珀  作者: 優希
第二章
PR
8/13


「猫用の扉を作ってあげないといけないね」


琥珀の言葉に、俺は頷く。


「確かにな。いちいち開けてやるの面倒だし」


「ゴウ、日曜大工とか出来る?」


「一応な」


「高性能だね」


「今さらな感心だな」


「工具は一通り揃っているから、ちょっと待ってて」


「あぁ」


俺は皿で餌を食べている猫を見る。


「お前用の扉を作ってやるんだから、サイズ測るの協力しろよ」


「にゃあ」


「本当に意味分かってんのかな、こいつ…」


目の端に背伸びして棚の上に手を伸ばしている琥珀を捉えた。

俺は椅子から立ち上がり、琥珀に声をかける。


「おいおい、大丈夫か?俺がとろうか?」


「いい。あとちょっとだから…あ、届いた」


背伸びの体勢が辛かったのだろう。

琥珀は、工具に手が届いた瞬間、ぱっと引っ張った。

棚が、ぐらりと揺れる。


「あ、やばっ…」


食器などが入っている棚が琥珀の上に倒れるのを想像して、ぞっとした。

俺は咄嗟に駆け寄り、琥珀を庇うようにしゃがみこむ。

直後、肩に軽い衝撃があった。

それ以外は、何もない。

俺は、ホッと息を吐いた。

床を見ると、それはダンボール箱のようだ。

重いものは入っていないのだろう。それほど、軽い衝撃だった。


「棚が倒れてこなくて良かったな」


揺れたときは本当に焦った。


「怪我ないな?」


琥珀を見ると、…琥珀は、工具を抱きかかえたまま、ぽろぽろと涙を流していた。

琥珀は自分が泣いていることにも気付かない様子で、驚いてる俺をじっと見つめた。


「ゴウは…怪我…」


「いや、落ちてきたのは軽いダンボールだけだぞ?ちょっと驚いたかもしれねえけど、そんな泣くこと…」


琥珀は、くしゃっと顔を歪めた。


「なんで…なんでっ…」


「な、何がだよ?」


「なんで私を庇ったりするの…っ!」


「は?」


俺は首を捻る。何を言ってるんだ、こいつ。


「私なんかを庇ったりするから…!」


「おい、琥珀?」


こいつは、何処を見ている?

瞳には、確かに俺しかいないはずなのに、琥珀は俺を見ていない。


「だから”君”は…!」


「琥珀!」


俺は琥珀の肩を掴んだ。


「俺は、ここにいるぞ!」


琥珀の濡れた目が、俺を捉える。


「あ…」


琥珀は慌てて目元を拭った。


「ごめん、何か、動揺して…」


「大丈夫か、お前?」


琥珀は誤魔化すように笑った。


「涙はね、心から溢れ出すものなんだよ」


「は?」


「だから、驚きで心が揺れて、涙が溢れたの。それだけ。だから、気にしないで」


明らかにそれだけの感じではなかったが、琥珀がそう言っている。


「…そうか」


俺はそう言うと、ただ黙って琥珀が泣き止むことを待った。

猫はその騒動で驚いたのか、いつの間にかいなくなっていた。

扉を開けっ放しにしておいたので、そこから出たんだろう。

結局、猫用の扉を作るのは後日になった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ