表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
それ、ほんまに回るんかいね?……わし、なん?σ (°ロ°)?!!  作者: AZtoM183
第3章 海の向こうは何しとるん?
PR
69/70

6K. 敵は誰だ



【勝麟太郎視点】


 長州は敵。



 最近、


 何度も聞く言葉じゃった。



 役所でも。



 茶屋でも。



 酒の席でも。



 長州。



 朝敵。



 討つべし。



 潰すべし。



 皆同じことを言う。



 勝も否定はせん。



 実際、


 禁門の変もあった。



 幕府に逆らった。



 事実じゃ。



 だが。



 何か引っかかった。



 その日の午後。



 勝は役所の一室におった。



 最近与えられた仕事じゃ。



 外国関係の資料整理。



 読める者がおらん。



 だから回ってくる。



 ありがたいような。



 ありがたくないような。



 微妙な仕事じゃ。



 机の上には、


 報告書が積まれている。



 英国。



 仏蘭西。



 露西亜。



 米利堅。



 見慣れた名前ばかりじゃ。



 勝は紙をめくる。



 港。



 船。



 砲。



 鉄。



 工場。



 そして人口。



(多いな)



 何度見ても思う。



 多い。



 大きい。



 強い。



 そのとき。



 長州の話を思い出した。



 朝敵。



 討伐。



 征討。



 皆が熱く語っとる。



 だが。



 資料へ目を戻す。



 英国。



 フランス。



 ロシア。



 どれも長州より大きい。



 幕府より大きい。



 日本より大きい。



(敵か)



 ふと思う。



 敵とは何じゃろう。



 長州か。



 外国か。



 それとも別の何かか。



 答えは出ない。



 ただ。



 少しだけ違和感があった。



 そのとき。



「勝」



 声がした。



 顔を上げる。



 上役じゃった。



「はい」



「少し来い」



 嫌な予感しかしない。



 だが断れん。



 勝は立ち上がった。



 案内された部屋には、


 見知らぬ男が二人おった。



 着物も立派じゃ。



 偉い人じゃろう。



 たぶん。



「勝麟太郎か」



「はい」



「外国資料を読んでおるそうだな」



「少しだけ」



 男たちが苦笑した。



 最近このやり取りが増えた。



「海軍の話も分かるか」



「多少は」



「多少らしいぞ」



 もう一人が笑う。



 嫌な感じではない。



 むしろ試されている感じじゃ。



「勝」



 一拍。



「今後、海軍関係の資料も扱え」



 勝は少し固まった。



「海軍ですか」



「そうじゃ」



 男が頷く。



「外国を見るなら」



「船が要る」



「船を見るなら」



「海軍が要る」



 当たり前の話じゃ。



 だが。



 勝には嬉しかった。



 世界へ一歩近づいた気がした。



「やります」



 即答じゃった。



 男たちが少し笑う。



「好きそうだな」



「好きです」



 正直に答える。



 部屋に笑いが起きた。



 その帰り道。



 勝は一人で考えていた。



 長州。



 幕府。



 外国。



 全部が動いている。



 そして。



 自分も少しずつ、


 その中へ入っていく。



 敵は誰か。



 まだ分からん。



 長州かもしれん。



 外国かもしれん。



 もっと別のものかもしれん。



 だが。



 知りたいとは思う。



 知らんままでは、


 決められん。



 夕暮れの江戸を歩きながら、


 勝は小さく笑った。



「また仕事が増えたな」



 愚痴のつもりだった。



 だが。



 その顔は少し楽しそうだった。



 世界は広い。



 そして。



 勝の仕事も、


 少しずつ広がり始めていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ