表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
それ、ほんまに回るんかいね?……わし、なん?σ (°ロ°)?!!  作者: AZtoM183
第3章 海の向こうは何しとるん?
PR
68/70

14K. 国賊らしい



【勝麟太郎視点】


 長州の若い連中が、


 外国へ逃げたらしい。



 最初に聞いたとき、


 勝は意味が分からなかった。



「逃げた?」



「そうだ」



 同僚が頷く。



「密航だそうだ」



 一拍。



「国賊だな」



 勝は黙った。



 昼休みの役所じゃ。



 茶を飲みながら、


 皆好き勝手なことを言っとる。



「長州だからな」



「攘夷だ何だと言っといて外国へ行く」



「笑い話だ」



 笑い声が上がる。



 勝だけ笑わなかった。



(変だな)



 そう思った。



 攘夷の長州。



 外国嫌いの長州。



 その若者が、


 命を懸けて外国へ行く。



 話が合わん。



 何かがおかしい。



 その日の夕方。



 勝は資料を整理していた。



 外国船。



 貿易。



 英国。



 上海。



 最近読むものは、


 そんな話ばかりじゃ。



 そのとき。



 ふと思う。



(なんで行った)



 国賊なら、


 わざわざ外国へ行かん。



 逃げるだけなら、


 もっと楽な場所がある。



 危険を冒して、


 海を渡る必要はない。



 そのとき。



 部屋の隅に積まれた資料が目に入った。



 英国海軍。



 フランス海軍。



 蒸気機関。



 造船所。



 勝は苦笑した。



(見たいんだろうな)



 自分と同じじゃ。



 たぶん。



 知りたいんじゃ。



 見たいんじゃ。



 だから行った。



 それだけのことじゃ。



 その瞬間。



 妙に親近感が湧いた。



 顔も知らん。



 名前も知らん。



 長州の若者たち。



 だが。



 同じ匂いがする。



 好奇心じゃ。



 知らないものを見たい。



 分からないものを知りたい。



 それは罪なんじゃろうか。



 勝にはそうは思えなかった。



 翌日。



 上役の部屋へ資料を届ける。



 すると。



 部屋の中でも同じ話をしていた。



「長州の密航者どもか」



「厳罰にすべきですな」



「見せしめが必要でしょう」



 勝は黙って聞いていた。



 届け物を置いて帰ろうとする。



 そのとき。



「勝」



 呼び止められた。



「はい」



「お前はどう思う」



 勝は少し考えた。



 そして。



「もったいないと思います」



 部屋が静かになった。



 全員がこちらを見る。



(あ)



 言っちゃった。



 勝は少し後悔した。



 だが。



 もう遅い。



「もったいない?」



「はい」



 一拍。



「命を懸けて学びに行く者です」



「それを潰すのは」



「もったいない」



 部屋は静まり返る。



 怒られると思った。



 だが。



 誰も怒らなかった。



 ただ。



 妙な顔をしていた。



 理解できない。



 そんな顔じゃ。



 勝は内心で苦笑した。



(まあそうだろうな)



 長州。



 幕府。



 敵味方。



 みんなそこを見る。



 でも。



 勝には違って見えた。



 そこにいるのは、


 ただの若者じゃ。



 命を懸けて、


 世界を見ようとしている若者。



 それだけじゃ。



 部屋を出る。



 夕日が差し込んでいた。



 勝は廊下を歩きながら、


 小さく呟く。



「会ってみたいな」



 長州。



 その若者たちに。



 そして。



 その若者たちを送り出した者たちに。



 そんな人間がいる藩なら、


 少し面白いかもしれん。



 勝は空を見上げた。



 海の向こうへ向かった若者たち。



 そして。



 その帰りを待つ長州。



 まだ会ったこともないその藩が、


 少しだけ気になり始めていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ