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それ、ほんまに回るんかいね?……わし、なん?σ (°ロ°)?!!  作者: AZtoM183
第3章 海の向こうは何しとるん?
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7K. 生意気な若造


【勝麟太郎視点】


 嫌な予感は当たる。



 本当によく当たる。



 その日、


 勝は会議の末席に座っていた。



 末席。



 本当に末席じゃ。



 入口に近い。



 逃げやすい。



 ありがたい。



 だが。



 話はありがたくなかった。



「長州についてじゃ」



 上役が口を開く。



 部屋の空気が変わる。



 勝は黙って聞いた。



「いまだ反省の色なし」



「徹底的に締め上げるべきですな」



「甘い顔をした結果が今じゃ」



 賛同の声が上がる。



 誰も反対しない。



 勝も黙っていた。



 まだ。



 そのとき。



「外国の脅威を考えるべきでは」



 誰かが言った。



 勝は少し顔を上げた。



 珍しい。



 だが。



「まず長州じゃ」



 すぐに否定された。



「国内を正さねば外はない」



 また賛同の声。



 勝は机を見る。



 木目が見える。



 逃げたい。



 帰りたい。



 だが。



 頭の中で、


 あの資料が浮かぶ。



 英国海軍。



 フランス海軍。



 蒸気船。



 造船所。



 工場。



 そして。



 長州。



(大きさが違うだろ)



 思ってしまった。



 まずい。



 こういう時は大体まずい。



「勝」



 呼ばれた。



(ほらな)



 勝は心の中でため息をつく。



「お前はどう思う」



 聞かれてしまった。



 聞かれなければ黙っていたのに。



 本当じゃ。



 たぶん。



「申し上げてよろしいので」



「言え」



 勝は少しだけ考えた。



 そして。



「長州を潰してどうするんです」



 部屋が凍った。



 見事じゃった。



 本当に凍った。



 音が消えた。



 勝は思った。



(やっちまった)



 だが。



 もう遅い。



「何を言う」



 案の定じゃ。



 声が飛ぶ。



 勝は頭を下げた。



「失礼しました」



 一拍。



「ですが」



 顔を上げる。



「長州を潰しても」



「船は増えません」



 さらに凍る。



「工場も増えません」



「海軍も強くなりません」



 一拍。



「外国は待ってくれません」



 静まり返る部屋。



 勝は続けた。



 止まらなくなった。



「長州が敵かどうかは分かりません」



「ですが」



「外国は確実におります」



 また沈黙。



 誰も笑わない。



 誰も頷かない。



 ただ。



 睨まれている。



 とても。



 睨まれている。



「生意気な」



 誰かが言った。



 その通りじゃ。



 勝もそう思う。



 だが。



 引っ込められない。



「若造が」



「はい」



 勝は素直に頷いた。



「若造です」



 一拍。



「だから聞きたいんです」



「十年後」



「二十年後」



「日本はどうなっているんです」



 誰も答えない。



 勝も答えを持っていない。



 だから聞いた。



 本当に聞きたかった。



 長州を潰した後。



 その先を。



 だが。



 答えは返ってこなかった。



 会議は終わった。



 勝は見事に怒られた。



 予想通りじゃ。



 少し安心した。



 予想外の方が怖い。



 廊下を歩く。



 ため息をつく。



「終わったな」



 そう呟いたとき。



「勝」



 後ろから声がした。



 振り向く。



 会議にいた年配の役人じゃった。



「はい」



「お前」



 一拍。



「言い方は下手じゃな」



 勝は苦笑した。



 自覚はある。



「申し訳ありません」



「だが」



 老人は少しだけ笑った。



「言っとることは分かる」



 勝は黙った。



 老人はそれ以上何も言わない。



 そのまま去っていく。



 廊下には勝だけが残った。



 少しだけ。



 本当に少しだけじゃが。



 嬉しかった。



 味方ではない。



 理解者とも言えん。



 だが。



 一人くらいはおるらしい。



 そう思うと、


 少しだけ前へ進める気がした。



 勝は空を見上げた。



 世界は広い。



 幕府は大きい。



 そして。



 自分はまだ若い。



 だからこそ。



 言えることもあるのかもしれなかった。

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