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それ、ほんまに回るんかいね?……わし、なん?σ (°ロ°)?!!  作者: AZtoM183
第3章 海の向こうは何しとるん?
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11. 行く者、残る者

明日の朝の分、間違えて投稿してしまいました。



【山縣視点】


 人が決まる。



 金も集まり始める。



 船の話も進んどる。



 気づけば、


 密航は夢ではなくなっていた。



 だからこそ。



 少し怖くなった。



 その日の夜。



 山縣は一人で帳面を見ていた。



 名前。



 金額。



 協力者。



 必要な品。



 不足しているもの。



 いつもの仕事じゃ。



 だが。



 今日は手が止まる。



 帳面の端。



 そこに書かれた名前。



 伊藤俊輔。



 井上聞多。



 その文字を見ていると、


 妙な気分になる。



(本当に行くんじゃな)



 今までは話だった。



 計画だった。



 でも。



 もう違う。



 現実じゃ。



 そのとき。



「難しい顔しとるのう」



 高杉じゃった。



 いつの間にか入ってきている。



 相変わらずじゃ。



「別に」



「嘘じゃな」



 即答された。



 山縣は小さくため息をついた。



「死ぬかもしれません」



 一拍。



「向こうで」



「海で」



「病で」



 高杉は黙って聞いている。



「帰って来れないかもしれません」



 言葉にすると、


 急に重くなった。



 高杉はしばらく何も言わなかった。



 珍しい。



 そして。



「そうじゃな」



 静かに言った。



 否定しない。



 慰めもしない。



 ただ認めた。



 それが余計に重かった。



「なら止めますか」



 山縣が聞く。



 高杉は少し笑った。



「お前は止まるか?」



 山縣は黙る。



 もし自分が選ばれたら。



 どうする。



 危険じゃ。



 怖い。



 帰れないかもしれん。



 でも。



 世界を見られる。



 知らないものを知れる。



 しばらく考える。



 そして。



「……たぶん」



 一拍。



「行きます」



 高杉が笑った。



「じゃろうな」



 そのとき。



 障子が開いた。



 大村じゃ。



 最近この部屋、


 出入りが自由すぎる。



「ちょうど良かった」



 大村が言う。



「何がです?」



「その話じゃ」



 一拍。



「行く者と残る者の話じゃ」



 山縣は顔を上げた。



 大村は静かに続ける。



「皆が行けるわけではない」



「はい」



「皆が行く必要もない」



 部屋が静かになる。



「行く者がおる」



「残る者がおる」



「どちらも必要じゃ」



 山縣は黙る。



 大村の言葉は、


 いつも静かじゃ。



 でも。



 妙に残る。



「向こうで学ぶ者」



 一拍。



「帰る場所を守る者」



 山縣は帳面を見る。



 名前。



 数字。



 計画。



 地味じゃ。



 派手さもない。



 歴史にも残らんかもしれん。



 でも。



 誰かがやらねばならん。



 そのとき。



「山縣」



 高杉が言った。



「なんです」



「お前は残る側じゃな」



 少しだけ笑っている。



 からかっているのかと思った。



 だが。



 違った。



「お前がおらんと」



 一拍。



「帰って来る場所がなくなる」



 山縣は何も言えなかった。



 褒められたのか。



 仕事を押し付けられたのか。



 よく分からん。



 ただ。



 少しだけ胸が軽くなった。



 窓の外では、


 春の風が吹いていた。



 海へ向かう者がおる。



 長州に残る者がおる。



 どちらが大事でもない。



 どちらも必要なんじゃ。



 山縣は帳面を閉じた。



 出航の日は近い。



 そして。



 別れの日も近かった。

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