表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
それ、ほんまに回るんかいね?……わし、なん?σ (°ロ°)?!!  作者: AZtoM183
第3章 海の向こうは何しとるん?
PR
62/70

8A. 金はどこから出るんじゃ?


【山縣視点】


 密航。



 海外。



 英国。



 部屋の空気は盛り上がっとった。



 高杉は楽しそうじゃ。



 伊藤も楽しそうじゃ。



 井上はもっと楽しそうじゃ。



(なんなんだこいつら)



 山縣には少し理解できん。



 だが。



 もっと理解できんことがあった。



「金は?」



 部屋が静かになった。



 よし。



 聞こえた。



 ちゃんと聞こえた。



 今、


 確かに静かになった。



「船代は?」



 一拍。



「渡航費は?」



「向こうでの生活費は?」



 誰も答えない。



 高杉が天井を見る。



 伊藤が視線を逸らす。



 井上が咳払いする。



(おい)



 山縣は思わず額を押さえた。



「考えてなかったんですか」



「いや」



 高杉が言う。



「考えとった」



「どれくらいです?」



「知らん」



(考えてないじゃん)



 山縣は心の中で叫んだ。



 そのとき。



 大村が紙を出した。



 数字が並んでいる。



 金額も。



 見ただけで嫌になる。



「これくらいじゃな」



 山縣は黙った。



 伊藤も黙った。



 井上も黙った。



 高杉だけが笑った。



「高いのう」



「高いですね」



 珍しく伊藤も同意した。



 その額は、


 若者がどうこうできる額ではなかった。



 ましてや。



 何人も送り出す。



 さらに帰らせる。



 金がいる。



 ものすごくいる。



 そのとき。



「藩に出させる」



 井上が言った。



 即答じゃ。



 だが。



 大村は首を振った。



「難しい」



「なぜです?」



「説明できん」



 一拍。



「英国へ密航したいので金をください」



 部屋が静かになる。



 確かに無理じゃ。



 山縣も納得した。



「じゃあ」



 伊藤が身を乗り出す。



「集めるしかないですね」



 その目が少し危ない。



 何か企んどる顔じゃ。



 山縣は知っとる。



 こういう顔の人間は危険じゃ。



「何を考えてます?」



「商人です」



「はい?」



「長州の商人」



 伊藤が笑う。



「利益になる話なら聞くでしょう」



 その瞬間。



 山縣は少し驚いた。



 昨日まで、


 ただ口の達者な男だと思っていた。



 違う。



 この男。



 人だけじゃない。



 金の流れも見とる。



 高杉が笑う。



「なるほど」



「面白い」



 伊藤が少し得意そうになる。



 その隣で。



 井上が言った。



「俺なら船を探します」



「先に?」



「船がなきゃ始まりません」



 山縣は思わず吹き出しそうになった。



 この二人。



 本当に違う。



 伊藤は金。



 井上は行動。



 どちらも必要じゃ。



 そのとき。



「山縣」



 高杉が聞く。



「お前は?」



 山縣は少し考えた。



 そして。



「帳面です」



 全員が固まった。



「帳面?」



「はい」



 一拍。



「誰にいくら払うか」



「誰が管理するか」



「途中で足りなくなったらどうするか」



 部屋が静かになる。



 嫌な予感がした。



 そして。



 高杉が笑い始めた。



 大笑いじゃ。



「やっぱりお前は変じゃ」



「なんでですか」



「密航の話しとるのに」



 一拍。



「最初に帳面が出てくる」



 伊藤も笑う。



 井上も笑う。



 大村だけが頷いた。



「必要じゃ」



 静かな声。



「一番必要じゃ」



 山縣は少し安心した。



 少なくとも。



 大村は味方じゃ。



 その日の帰り道。



 山縣は考えていた。



 夢を見る者。



 行動する者。



 金を集める者。



 そして。



 帳面を付ける者。



 全部必要なんじゃろう。



 奇兵隊もそうだった。



 長州再建もそうだった。



 きっと。



 海の向こうへ行くのも同じじゃ。



 世界は遠い。



 だが。



 そのために必要なものは、


 案外目の前にあるのかもしれなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ