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それ、ほんまに回るんかいね?……わし、なん?σ (°ロ°)?!!  作者: AZtoM183
第3章 海の向こうは何しとるん?
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7. 密航じゃ


【山縣視点】


 最初は冗談だと思った。



 高杉じゃし。



 いつものように、


 無茶を言い出しただけじゃと。



「密航じゃ」



 だから。



 山縣は笑った。



「ははは」



 一拍。



「そうですよね」



 誰も笑わなかった。



(あれ?)



 部屋が静かじゃ。



 高杉は真顔。



 大村も真顔。



 伊藤も真顔。



 井上も真顔。



(……え?)



「本気ですか」



「本気じゃ」



 高杉が即答した。



 嫌な予感しかしない。



 山縣は頭を抱えた。



「海外渡航は禁止ですよね」



「そうじゃ」



「捕まりますよね」



「そうじゃ」



「下手したら死罪ですよね」



「そうじゃな」



 全部肯定された。



(なんでそんな平然としてるんだ)



 本当に意味が分からん。



 そのとき。



 伊藤が口を開いた。



「でも」



 一拍。



「見てみたいんですよね」



 山縣は振り向く。



 伊藤は笑っていない。



 本気じゃ。



「上海の話を聞いたら」



「余計に」



 静かな声だった。



 だが。



 目は燃えとる。



 井上も頷く。



「見なきゃ分からん」



「分からんまま国を変えるのは嫌です」



 即答じゃった。



 迷いがない。



 山縣は少しだけ驚いた。



 昨日会ったばかりの男たちじゃ。



 生意気で。



 騒がしくて。



 若い。



 でも。



 覚悟だけは本物らしい。



 そのとき。



「山縣」



 高杉が呼ぶ。



「なんです」



「お前はどう思う」



 難しい質問じゃった。



 正直に言えば。



 危ない。



 無茶じゃ。



 やめた方がいい。



 そう思う。



 だが。



 それだけでもない。



 高杉の上海。



 勝の蘭書。



 大村の言葉。



 全部思い出す。



 知らん。



 日本は知らん。



 長州も知らん。



 世界を。



 知らん。



 その事実もまた本当じゃ。



「行く価値はあります」



 気づけばそう言っていた。



 部屋が静かになる。



「ただ」



 一拍。



「帰って来ないと意味がないです」



 高杉が笑った。



 伊藤も笑う。



 井上も笑う。



 大村だけが頷いた。



「その通りじゃ」



 静かな声。



「死んでは意味がない」



 山縣は少し安心した。



 少なくとも。



 大村はまともじゃった。



 そのとき。



「じゃから」



 大村が続ける。



「生きて帰る方法も考える」



 高杉が腕を組む。



 伊藤が身を乗り出す。



 井上が頷く。



 そして。



 山縣だけが思った。



(始まったな)



 奇兵隊を作るときもそうじゃった。



 功山寺へ向かうときもそうじゃった。



 無茶な話は、


 いつもこんな風に始まる。



 最初は誰も信じない。



 次に笑う。



 そして。



 気づけば動き出している。



 窓の外では、


 春の風が吹いていた。



 海はまだ見えない。



 だが。



 その向こうへ行こうとする若者たちは、


 もう止まらなかった。



 そして山縣は、


 一人だけ別のことを考えていた。



(誰を行かせるかじゃない)



(どうやって帰らせるかじゃ)



 たぶん。



 それが自分の役目なのだろう。

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