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それ、ほんまに回るんかいね?……わし、なん?σ (°ロ°)?!!  作者: AZtoM183
第3章 海の向こうは何しとるん?
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1. k 海の向こうは何しとるん?



【勝麟太郎視点】


 長州がまた騒がしいらしい。



 そんな話を聞いたのは、


 塾の帰りじゃった。



「高杉晋作が」



「功山寺で」



「藩を取り返した」



 話は人によって違う。



 だが。



 長州で何か起きたことだけは分かる。



 勝は黙って歩いていた。



 江戸の空は青い。



 平和じゃ。



 少なくとも見た目は。



(長州か)



 名前だけは知っとる。



 尊王攘夷。



 外国嫌い。



 過激。



 そんな評判ばかりじゃ。



 だが。



 勝の興味は、


 そこには向かなかった。



 家へ戻る。



 机に向かう。



 そして。



 蘭書を開く。



 最近借りた海軍関係の本じゃ。



 読める。



 全部ではない。



 でも。



 少しずつ。



 少しずつ。



 世界の形が見えてくる。



(でかいな)



 何度見ても思う。



 船の数。



 大砲の数。



 港。



 貿易。



 人口。



 全部が違う。



 江戸と比べるのも馬鹿らしい。



 そのとき。



 ある数字で手が止まった。



 英国海軍。



 保有艦艇数。



(……は?)



 勝は思わず本を見直した。



 もう一度見る。



 やっぱり同じじゃ。



(嘘だろ)



 頭の中で、


 黒船が浮かぶ。



 あれが何隻も。



 何十隻も。



 世界中におる。



(勝てるわけねえじゃん)



 思わず声が出た。



 その瞬間。



 長州の話を思い出す。



 攘夷。



 外国を追い払う。



 言葉だけなら簡単じゃ。



 でも。



 この数字を見たあとでは、


 違う。



(追い払うって)



(どうやって?)



 勝は本を閉じた。



 しばらく天井を見る。



 静かじゃ。



 でも。



 頭の中は静かじゃない。



 長州。



 幕府。



 朝廷。



 みんな、


 同じ日本の中を見とる。



 どっちが正しい。



 どっちが悪い。



 そんな話ばかりじゃ。



(でも)



 勝は窓を開けた。



 冷たい風が入る。



 その向こう。



 さらに向こう。



 海。



 そして。



 世界。



(見てる場所が違うんじゃねえかな)



 ふと思う。



 長州は、


 長州を見とる。



 幕府は、


 幕府を見とる。



 でも。



 海の向こうは、


 日本全部を見とる。



 その差が、


 妙に怖かった。



 そのとき。



 部屋の外から父の声がした。



「麟太郎」



「なんです」



「飯だ」



「今行く」



 本を閉じる。



 だが。



 立ち上がる前に、


 もう一度だけ地図を見る。



 日本。



 小さい。



 思ったよりずっと。



 そして。



 海の向こうは、


 思ったよりずっと近い。



 勝は小さく息を吐いた。



「長州なんか見てる場合かねえ」



 誰にも聞こえない声だった。



 だが。



 その言葉は、


 これからの勝自身を決める言葉でもあった。

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