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それ、ほんまに回るんかいね?……わし、なん?σ (°ロ°)?!!  作者: AZtoM183
第3章 海の向こうは何しとるん?
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2. 鬼も蛇も見たことない


【山縣視点】


 外国を知れ。


 高杉はそう言った。



 外国を知る者が足りん。


 大村もそう言った。



 言いたいことは分かる。



 たぶん。



 でも。



(みんな、そんなに外国知っとるん?)



 山縣は少し疑問だった。



 城下を歩きながら考える。



 外国。



 異国。



 黒船。



 攘夷。



 最近よく聞く言葉じゃ。



 だが。



 実際に外国人を見たことがある者は、


 どれくらいおるんじゃろう。



 その日の午後。



 山縣は城下の茶店におった。



 偶然ではない。



 聞き込みじゃ。



 情報集め。



 最近覚えた得意技でもある。



「外国人ですか?」



 店主が首を傾げる。



「見たことありますよ」



 山縣は少し身を乗り出した。



「どんな人でした?」



「鬼みたいでしたな」



(出た)



 山縣は心の中で呟く。



「鬼?」



「背が高くて、目の色が違う」



「なるほど」



 そのとき。



 隣の客が笑った。



「鬼なもんか」



 一拍。



「ただの人じゃ」



 店主が睨む。



「お前、見たことあるんか」



「長崎で見た」



 今度は山縣が振り向く。



「どうでした?」



「普通じゃ」



「普通?」



「飯も食うし酒も飲む」



 一拍。



「ただ、でかい」



 店が少し笑いに包まれる。




 そのあとも話を聞いた。



 漁師。



 旅商人。



 浪人。



 みんな違うことを言う。



「恐ろしい」



「いや、気前がいい」



「野蛮じゃ」



「礼儀正しい」



 全部違う。



(なんじゃこれ)



 山縣は頭を掻いた。



(誰も同じこと言わん)



 そのとき。



 ふと思う。



(これ)



(誰も知らんのじゃない?)



 鬼だと言う者。



 人だと言う者。



 怖いと言う者。



 面白いと言う者。



 だが。



 本当に知っとる者は、


 ほとんどおらん。



 知らんから、


 想像で埋める。



 怖ければ鬼になる。



 興味があれば異人になる。



 その違いだけじゃ。



 夕方。



 山縣はその話を大村へ伝えた。



「なるほど」



 大村は頷いた。



「誰も知らんのです」



「そうじゃろうな」



 あっさり返された。



「驚かないんですか」



「驚かん」



 一拍。



「知らぬものを嫌うのは普通じゃ」



 静かな声。



「じゃが」



 そこで大村は筆を置いた。



「国は、それでは守れん」



 山縣は黙る。



 確かにそうじゃ。



 嫌いでもいい。



 怖くてもいい。



 だが。



 知らないままでは、


 何も決められん。



 そのとき。



 障子が勢いよく開いた。



「おーい!」



 高杉じゃ。



 相変わらずじゃ。



「何しとる」



「外国の話です」



「ほう」



 高杉は笑う。



「で、分かったか」



 山縣は少し考えた。



 そして首を振る。



「全然」



 高杉が大笑いした。



「上等じゃ」



「え?」



「知らんと分かったなら」



 一拍。



「そこから始められる」



 山縣は少しだけ目を見開いた。



 知らない。



 それは恥じゃない。



 始まりなんじゃ。



 外では夕日が沈み始めていた。



 海の向こうは、


 まだ見えない。



 でも。



 少しだけ。



 見ようとは思い始めていた。

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