表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
それ、ほんまに回るんかいね?……わし、なん?σ (°ロ°)?!!  作者: AZtoM183
2.回し続けられるんかいね?Σ(´д`;)?
52/56

34.A 回り始めた長州 ―山縣―



【山縣視点】


 久しぶりに、


 一人じゃった。



 机の上には、


 紙が積まれとる。



 西門。



 異常なし。



 城下。



 米価安定。



 下関。



 外国船目撃。



 兵糧。



 不足なし。



 山縣は、


 一枚ずつ目を通していく。



 気づけば、


 これが日課になっとった。



(……変な感じじゃ)



 少し前まで。



 自分は百姓じゃった。



 いや。



 今も百姓じゃ。



 たぶん。



 でも。



 今は長州全体の話を見とる。



(人生って分からん)



 思わず苦笑する。



 功山寺へ向かった夜。



 三十七人。



 雨。



 暗闇。



 あのときは、


 長州のことなんか考えとらんかった。



 ただ。



 目の前のことだけじゃ。



 でも今は違う。



 紙を一枚めくる。



 長州地図。



 西。



 東。



 北。



 南。



 ようやく、


 全部が繋がって見える。



(見えるようになった)



 本当に。



 人。



 物。



 報せ。



 流れ。



 全部。



 少しずつ。



 少しずつじゃけど。



 見えるようになった。



 そのとき。



 机の端に置かれた別の地図へ、


 目が止まった。



 長州の外。



 九州。



 大坂。



 江戸。



 そして。



 海。



(……海か)



 高杉の顔が浮かぶ。



 海じゃ。



 外国じゃ。



 大村の顔も浮かぶ。



 外国を知る者が足りん。



 山縣は、


 しばらくその地図を見つめた。



 長州は見える。



 ようやく。



 やっと。



 見えるようになった。



 でも。



 その外は、


 まだ見えん。



 外国がどんな国か。



 何を考えとるか。



 どれほど強いのか。



 何一つ知らん。



(……知らんなあ)



 思わず、


 そんな言葉が漏れる。



 その瞬間。



 修学旅行の記憶が浮かんだ。



 京都駅。



 外国人観光客。



 英語。



 中国語。



 誰も答えられんかった。



 知らんかった。



 ただ、それだけじゃった。



(同じか)



 知らんままじゃ、


 話にも入れん。



 勝負にもならん。



 山縣は、


 ゆっくり地図を畳んだ。



 長州は、


 立ち上がった。



 でも。



 歩き始めただけじゃ。



 その先には、


 もっと広い世界がある。



 そして。



 その世界は、


 たぶん待ってはくれん。



 障子の外から、


 春の風が吹き込む。



 紙が一枚、


 ぱらりと揺れた。



 山縣は、


 そっとそれを押さえる。



 そして、


 もう一度だけ、


 海の向こうを思った。



(さて)



 一拍。



(海の向こうは、何しとるんかね)



 その呟きは、


 誰にも聞かれなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ