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それ、ほんまに回るんかいね?……わし、なん?σ (°ロ°)?!!  作者: AZtoM183
2.回し続けられるんかいね?Σ(´д`;)?
46/56

31.誰が偉いんか分からんのに、なんで回っとるんです?



 使者は、


 思ったより若かった。


 二十代後半くらい。


 細い目。


 整った身なり。


 でも。


(……めちゃくちゃ見てる)


 山縣は、


 入ってきた瞬間にそう思った。


 机。


 紙。


 走る人。


 報せ。


 武士。


 百姓。


 全部。


 目が止まっとらん。



「失礼」


 使者が、小さく頭を下げる。


「幕府側より参りました」


 周囲の空気が、


 少しだけ固くなる。


 でも。


 前みたいな張り方じゃない。


(……慣れてきた)


 山縣は、


 少しだけそんなことを思う。



「確認したい」


 使者が、静かに言う。


「今の長州を」


 一拍。


「誰が動かしているのか」


 場が、


 一瞬だけ静かになる。



(……来た)


 山縣は、


 思わず周囲を見る。


 高杉。


 大村。


 武士。


 百姓。


 でも。


(……誰だ?)


 昨日なら、


 高杉って答えたかもしれん。


 でも今は、


 少し違う。



「わしじゃ」


 横から声。


 ――高杉晋作。


(いや言うんだ)


 周囲が、


 一瞬だけ固まる。


 でも。


 高杉は、にやにや笑っとる。


「……と、言いたいところじゃが」


 一拍。


「違うのう」


 使者の眉が、


 ほんの少し動く。



「では、どなたが」


 高杉は、


 そこで周囲を見た。


 伊助。


 報せを運ぶ足軽。


 紙を書く町人。


 指示を飛ばす武士。


 そして。


 山縣の机。



「勝手に回り始めた」


 さらっと言う。


(……いや)


(説明になってない)


 山縣は、


 思わず頭抱えそうになる。



 でも。


 使者は、笑わんかった。


 むしろ。


 少しだけ真顔になる。


「……それが」


 一拍。


「一番、気味が悪い」


 静かに言う。


 場が、


 少し静まる。



「普通は」


 使者が続ける。


「上が命じ」


「下が従う」


「だから、止める場所も分かる」


 一拍。


「ですが、今の長州は」


 周囲を見る。


「誰を止めれば止まるのか」


「分からない」


 山縣の背中に、


 何かが走る。


(……あ)


 それだ。



 江戸の組織は、


 “上”を押さえれば止まる。


 でも。


 今の長州は違う。


 百姓も動く。


 町人も動く。


 情報も流れる。


 だから。


(止まらない)



「怖いですか」


 気づけば、


 山縣は聞いとった。


 使者は、


 少しだけ山縣を見る。


「怖い」


 即答。


「ですが」


 一拍。


「少し、羨ましい」


(……え)


 山縣は、


 少しだけ目を見開く。



「江戸では」


 使者が、小さく笑う。


「誰も、勝手に動かない」


「動けない」


 一拍。


「だから、止まる」


 静かな声。


 でも。


 妙に本音っぽい。



 そのとき。


「おーい!」


 また、でかい声。


 ――高杉じゃ。


「飯、まだかー!」


(……この人)


 使者が、


 思わずそっちを見る。


 すると。


「今向かってます!」


「確認済みです!」


「台所通ってます!」


 周囲が、


 勝手に返し始める。



 使者が、


 そこで完全に止まった。


「……今の」


 一拍。


「命令では、ないですよね」


「ないですね」


 山縣が答える。


「でも、動くんです」


 使者は、


 しばらく黙っとった。



 そのとき。


 後ろから声。


 大村益次郎。


「組織とは」


 一拍。


「命令で動くものではない」


 静かに続ける。


「流れで動くものじゃ」


 使者が、


 ゆっくりその言葉を見つめる。



 山縣は、


 その横顔を見ながら思った。


(……外から見ると)


(やっぱ変なんだな、今の長州)


 でも。


 その“変”が、


 もう戻らんところまで来とる気がした。

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