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それ、ほんまに回るんかいね?……わし、なん?σ (°ロ°)?!!  作者: AZtoM183
2.回し続けられるんかいね?Σ(´д`;)?
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29.変なやり方だったはずなんに、いつの間にか普通になっとった


 気づけば、


 誰かが勝手に紙を置いていくようになっとった。



 西門、異常なし。

 火薬、残り三樽。

 見張り交代済み。

 台所、人手不足。



 しかも。


(……前より読みやすい)


 字まで、ちょっと整っとる。



「山縣さん」


 今度は、武士。


「東の見張り、交代しました」


「ありがとうございま――」


 言いかけて、


 山縣は少し止まる。


(……あれ)


 普通だ。


 昨日まで、


 百姓に従うかで揉めとったのに。


 今、


 武士が自然に報せを持ってきとる。



 そのあと。


「伊助!」


 武士が、廊下の向こうへ声を飛ばす。


「西門、あと二人回せるか!」


「いけます!」


 百姓の声が返る。


 しかも。


 誰も止まらん。


(……っ)


 山縣は、


 そこで小さく息を飲む。


(普通に喋ってる)


 身分とか、


 上下とか、


 昨日まであんなに重かったのに。



(……変わるんだ)


 人って。



 そのとき。


「山縣さん!」


 若い足軽が走ってくる。


「これ、確認済みです!」


 紙を置く。


 しかも。


 端に、小さく書いてある。



 確認:西門担当



(……っ)


 山縣は、


 少しだけ目を見開いた。


(書いてる)


 言ってないのに。


(勝手に増えた)



 その瞬間。


 ふっと、


 文化祭の記憶が浮かぶ。


(……あ)


 最初は、


 誰も片付けの場所を守らんかった。


 でも。


 何人かが続けると、


 いつの間にか、


 みんなそこへ戻すようになった。


(……同じか)


 “ルール”じゃない。


 いや。


(いや、ルールって言葉やめたんだった)


 山縣は、


 小さく頭の中でツッコむ。


(……流れ)


 流れができると、


 人は自然に合わせ始める。



「何、笑っとる」


 後ろから声。


 振り向く。


 大村益次郎。


「……いや」


 一拍。


「回り始めたなって」


 大村が、


 周囲を静かに見る。


 走る人。


 紙。


 報せ。


 声。


 でも。


 昨日みたいな怒鳴り合いは、減っとる。



「文化になる」


 大村が、ぽつりと言う。


「……え?」


「最初は、変なことでも」


 一拍。


「続けば、人はそれを普通にする」


 静かに続ける。


「それが、国じゃ」


(……国)


 山縣は、


 その言葉を少し見つめる。



 そのとき。


「おーい!」


 また、でかい声。


 ――高杉晋作。


「飯、確認済みかー!」


(……また来た)


 周囲が、


 一瞬だけ笑う。


「確認済みです!」


「今向かってます!」


「遅延なし!」


 誰かが返す。


 どっと笑いが広がる。



(……あ)


 山縣は、


 そこで気づく。


(空気が、軽い)


 昨日まで、


 刀抜きそうだった場所なのに。



 そのとき。


 伊助が、小さく言った。


「山縣さん」


「なんじゃ」


「前より、怖くないです」


 山縣は、


 少しだけ周囲を見る。


 武士。


 百姓。


 町人。


 足軽。


 まだ、完全じゃない。


 でも。


(昨日より、同じ方向向いてる)



「……うん」


 山縣は、


 小さく頷いた。


「たぶん」


 一拍。


「長州、回り始めた」


 その瞬間。


 廊下を抜ける風が、


 少しだけ、


 前より軽く感じた。

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