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それ、ほんまに回るんかいね?……わし、なん?σ (°ロ°)?!!  作者: AZtoM183
2.回し続けられるんかいね?Σ(´д`;)?
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28.ほんとかどうか分からん話が、一番人を止めるんよ



 最初に変だと思ったんは、


 同じ話が、


 違う形で三回来たことじゃった。



「俗論派が逃げた!」


 って報せ。


 でも。


「西へ逃げた」


 と、


「いや東じゃ」


 と、


「もう城下にはおらん」


 全部違う。


(……どれ)


 山縣は、


 紙を見ながら眉を寄せる。



「山縣さん!」


 また声。


「幕府側がもう来るって!」


(……は?)


「誰が言った!?」


「えっと……聞いたらしいです!」


(“らしい”禁止!!)


 思わず、


 頭抱えそうになる。



 しかも。


 周囲の空気が、


 少しずつ悪くなっとる。


「もう駄目じゃないか」


「逃げる準備しろ」


「いや、まだだ」


「どっちなんじゃ!」


 声が荒くなる。


 人が止まり始める。


(……来た)


 山縣の背中に、


 嫌な感覚が走る。


(情報じゃなくて)


(空気で動き始めてる)



 その瞬間。


 ふっと、


 昔の記憶が浮かぶ。


(……あ)


 修学旅行。


「明日、台風で帰れないらしい」


 って噂。


 最初は一人。


 でも。


 “先生が言ったらしい”


が増えて、


 最後には、


 みんな半分信じ始めた。


 実際は、


 全然違ったのに。


(……同じだ)


 人って、


 不安なときほど、


 “聞きたい話”を信じる。



「止めます」


 気づけば、


 山縣は言っとった。


 周囲が、一瞬静かになる。


「今から」


 一拍。


「誰が確認したか分からない話は、止めます」


「え?」


「でも!」


「聞いたんです!」


 ざわつく。


 でも。


 山縣は、止まらん。


「聞いた、じゃ動きません」


 一拍。


「確認できた話だけで動きます」


 沈黙。


 空気が、少し張る。



「でも、本当だったら!」


 若い足軽が、思わず声を上げる。


 顔が強張っとる。


 怖いんじゃろう。


 山縣は、


 少しだけ黙った。


(……分かる)


 本当に。


 分かる。



「間違った情報で動く方が」


 一拍。


「もっと危ない」


 静かに言う。


「人が止まります」


「疑い始めます」


「勝手に動きます」


 一つずつ。


「だから」


 山縣は、紙を持ち上げた。


「分からん話は、“分からん”って書きます」


 場が、


 少しだけ静かになる。



(……あ)


 山縣は、


 そこで気づく。


(これ)


(“知らない”を認める話なんだ)


 今までは、


 全部答えようとしてた。


 でも。


(分からんもんは、分からん)


 その方が、


 止まらない。



 そのとき。


「ほう」


 後ろから声。


 大村益次郎。


「嘘を消すのではなく」


 一拍。


「不確かなものを、不確かと言うか」


 山縣は、


 少しだけ息を飲む。


(……また整理された)



「人はのう」


 大村が、静かに続ける。


「分からぬことより」


 一拍。


「分からぬまま、断言される方を恐れる」


 短い。


 でも。


 妙に刺さる。



 そのとき。


「おーい!」


 また、でかい声。


 ――高杉晋作。


「わしの飯、“まだ来るらしい”んじゃがー!」


(……この人)


 一瞬、


 場が止まる。


 でも。


 次の瞬間。


 誰かが吹き出した。


「確認取れてません!」


「不確定情報です!」


「台所担当、確認中!」


 どっと笑いが広がる。



(……あ)


 山縣は、


 そこで少し驚く。


(空気、戻った)


 さっきまで、


 あんなに張ってたのに。



 そのとき。


 伊助が、小さく言う。


「山縣さん」


「なんじゃ」


「“分からん”って言っていいんですね」


 山縣は、


 少しだけ黙る。


 そして。


 小さく頷いた。


「分からんもんを」


 一拍。


「分かった顔する方が、危ない」


 伊助が、


 ふっと笑う。


「……それ、なんか安心します」



 山縣は、


 机の上の紙を見下ろした。


 嘘。


 噂。


 不安。


 でも。


(昨日より、崩れてない)


 長州は、


 まだ揺れとる。


 でも。


 ちゃんと、


 前を向き始めとった。

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