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それ、ほんまに回るんかいね?……わし、なん?σ (°ロ°)?!!  作者: AZtoM183
1.それ、ほんまに回るんかいね?……わし、 なん? σ (°ロ°)?!!
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4.誰が決めるんか、決めとらんじゃろ

 翌日。


 場は、少しだけ“まとも”になっとった。


 人は分かれ、

 役割もでき、

 流れも、かろうじて通っとる。


(……回っとる)


 山縣は、そう思った。


(いや、“回り始めた”くらいか)


 昨日よりは、確実に前に進んどる。


 でも――


(まだ、引っかかる)


 何かが、足りん。


 その違和感の正体は、すぐに顔を出した。


「こっち行け言われたぞ!」


「いや、そっちじゃない言われた!」


 また、声がぶつかる。


(ほらな)


 今度は、昨日ほどひどくはない。

 でも、確実にズレとる。


「誰が言うたんじゃ!」


「……あいつが」


「いや、わしは違う言うたぞ!」


 責任が、宙に浮いとる。


(……これ)


(指示が“複数”ある)


 だから、ブレる。


 だから、迷う。


 だから、止まる。


(そりゃそうじゃろ)


 山縣は、小さく息を吐いた。


(誰が決めるか、決まっとらん)


 そのとき。


「まあまあ!」


 あの声じゃ。


 ――高杉晋作が、楽しそうに割って入る。


「細かいことはええ!」


 手をひらひらさせる。


「臨機応変じゃ、臨機応変!」


(出た)


(それで崩れるやつ)


 山縣は、一歩前に出た。


「よくないです」


 静かに言う。


 場が、ぴたりと止まる。


 高杉が、少しだけ目を細めた。


「……ほう?」


 面白そうな顔じゃ。


 山縣は、そのまま続ける。


「いまの状態だと」


「誰の指示が正しいのか、わかりません」


 周りの何人かが、はっとする。


「それだと、動きがバラけます」


「結果、止まります」


 一拍。


「……昨日と同じです」


 空気が、少しだけ重くなる。


 高杉は、黙って聞いちょる。


「だから」


 山縣は、はっきり言う。


「決める人間を、一人に絞るべきです」


 ざわ、と小さく空気が動く。


「指示は、その人間からだけ出す」


「それ以外は、勝手に動かない」


(トップダウン)


(まあ、今はこれしかない)


 沈黙。


 数秒。


 ――そして。


「……おもしろいのう」


 高杉が、口元を歪めた。


「縛るわけか」


 軽く言う。


 でも、その奥に、少しだけ温度がある。


「自由に動けんようにして、どうする」


(来たな)


 山縣は、内心で小さく頷いた。


(この人、ここ引っかかるよな)


「違います」


 即答する。


「動けるようにするためです」


 一瞬、間。


「……ほう?」


「いまは、誰もが勝手に動いてます」


「だから、ぶつかる」


「止まる」


「崩れる」


 言葉を、重ねる。


「一本にすれば、迷いがなくなります」


「結果、速くなります」


 高杉は、黙る。


 少しだけ、考える顔。


(……通るか?)


 山縣は、じっと待つ。


 数秒。


 そのあと――


「はっ!」


 高杉が、笑った。


「ええのう!」


 いつもの調子じゃ。


 でも、少しだけ違う。


「じゃあ、決めようや」


 軽く言う。


「誰にする?」


(……そこ、わしに振る?)


 一瞬、間。


(いや、まあ)


(言うしかないか)


 山縣は、息を吐いた。


「あなたです」


 まっすぐに言う。


「全体の判断は、あなたがやるべきです」


 周りが、ざわつく。


 高杉が、少しだけ目を細めた。


「……わしか?」


(いや、あんたしかおらんでしょ)


「あなた以外に、全体を見れる人間がいません」


「だから、あなたが決める」


 一拍。


「その代わり」


 少しだけ言葉を強める。


「決めたことには、責任を持ってください」


 静かになる。


 高杉は、黙る。


 ほんの一瞬だけ、真面目な顔をした。


 ――そして。


「ええじゃろ」


 軽く言う。


 いつもの調子に戻る。


「わしが決める」


 くるりと振り返る。


「聞いたか!」


 声が響く。


「これからはな!」


「最終判断は、わしじゃ!」


 どや顔。


(まあ、そうなるよね)


「他は、勝手に決めるな!」


「わしに持ってこい!」


 場が、一気に動き出す。


 今度は、迷いが少ない。


 流れが、一本になる。


(……変わった)


 山縣は、静かに見ていた。


 さっきまでのバラつきが、消えとる。


(やっぱり、ここじゃったか)


 指揮系統。


 それだけで、ここまで変わる。


 そのとき。


「ほれ」


 高杉が、軽く肩を叩いてくる。


 ――近い。


(近いって)


「ええ感じじゃろ?」


 にやりと笑う。


(いや、それわしの設計なんだけど)


 でも、もう突っ込まん。


 山縣は、小さく息を吐いた。


(まあ、ええか)


 回り始めた。


 確かに、回り始めた。


 でも――


(この人がトップで、大丈夫なん?)


 一瞬、そんな考えがよぎる。


 すぐに消す。


(いや、今はこれでええ)


 視線を、全体に向ける。


 動きは、昨日より明らかに速い。


 迷いも、少ない。


(……回っとる)


 今度こそ、そう言えた。


 ただし。


(このまま続くかは、別じゃな)


 山縣は、静かに目を細めた。

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