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それ、ほんまに回るんかいね?……わし、なん?σ (°ロ°)?!!  作者: AZtoM183
2.回し続けられるんかいね?Σ(´д`;)?
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9.あの人がやっとったんで――が、一番危ないんよ


 三日後。


 流れは、確かに変わっとった。


 止まるべきところで、止まる。

 動くべきところで、動く。


 声も、揃っとる。


(……いい)


 山縣は、小さく息を吐いた。


 条件は、浸透し始めとる。


 距離。

 人数。

 時間。


 そして――


 例外。


(……そこまで、伝わっとるかは知らんけど)


 少しだけ、不安は残る。


 そのとき。


「前、三十歩!」


 声が飛ぶ。


 組が、一斉に前へ出る。


(いい)


 歩幅も、揃っとる。


 そのまま――


「止まれ!」


 ぴたり、と止まる。


(……いい)


 山縣は、少しだけ口元が緩んだ。


(回っとる)


 その瞬間。


「今じゃ!」


 前列の一人が、飛び出した。


(……え)


 一瞬、思考が止まる。


 武士。


 まだ若い。


 昨日まで調子の良かったやつじゃ。


(……なんで)


 だが。


 次の瞬間、頭の中で繋がる。


(……あ)


(高杉)


 あの日。


 条件を超えて、前へ出た。


 あの姿。


(真似したな)


「おおっ!」


 周りが、少しざわつく。


 勢いはある。


 速い。


 でも。


(……違う)


 山縣の背中に、嫌なものが走る。


(距離、見えてない)


(横、見えてない)


(戻る場所、決めてない)


(それ)


(勢いだけだ)


 そのとき。


 ――音。


 乾いた音。


 若い武士の足が、止まる。


 一瞬。


 そして――


 崩れた。


「っ!」


 誰かが息を呑む。


 場が、一瞬で凍る。


(……来た)


 山縣の体が、先に動いた。


「前、出るな!」


 叫ぶ。


「持ち場、守れ!」


 数人が、飛び出しかけて止まる。


(……よし)


 でも。


 倒れた本人は、動かん。


(……まずい)


 一瞬、迷う。


(助けに行く?)


(でも)


(また崩れる)


 頭が、一気に回る。


(どうする)


 そのとき。


 ふと、昔の記憶がよぎる。


(……これ)


(部活の試合だ)


 エースが転んで。


 全員が、そっち見た。


 次の瞬間――


(守備、崩れた)


(あのとき負けた)


 一瞬で、繋がる。


(……ダメだ)


(見るな)


 山縣は、息を吸った。


「倒れた者は、後ろが拾え!」


 叫ぶ。


「前は、見るな!」


 一拍。


「動き続けろ!」


 場が、一瞬止まる。


 でも。


 今度は、通った。


 後方の組が動く。


 前方は、止まらん。


(……いける)


 完全じゃない。


 でも。


(崩れてない)


 そのとき。


「ほう」


 後ろから声。


 大村益次郎。


「役目が分かれ始めたな」


 短い。


 でも、少しだけ柔らかい。


(……珍しい)


 そのとき。


「やりよるのう」


 横から声。


 ――高杉晋作。


 笑っとる。


(……いや)


(あんたのせいでもある)


「真似されたな」


 にやり、と言う。


(分かってるよね)


「……されました」


 山縣は、少しだけ睨む。


「悪くない」


 高杉は、さらっと言う。


「でも」


 一拍。


「真似するにも、順番がある」


 珍しく、少しだけ真面目な顔。


(……あ)


 山縣は、そこで気づく。


(この人)


(最初から、“誰でもやっていい”とは思ってない)


「例外は」


 山縣は、ぽつりと呟く。


「誰でも使えるわけじゃない」


「そういうことじゃ」


 高杉が、にやりと笑う。


 その顔を見ながら。


 山縣は、ゆっくり息を吐いた。


(……また増えた)


 条件。

 例外。

 役割。


 そして――


(資格)


 誰が、その例外を使っていいのか。


(……終わらん)


 でも。


 少しだけ、面白くなってきた。


 山縣は、そう思った。

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