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■ 第1章 解説:それ、ほんまに回るんかいね?……わしなん?
長州は、まだ壊れてはいなかった。
少なくとも――
表向きは。
藩はあり、役目はあり、命令もあった。
武士は武士として並び、百姓は百姓として働く。
誰が上で、誰が下か。
何に従い、どこへ向かうのか。
それは、生まれたときから決まっている。
――はずだった。
だが。
海の向こうから来た黒い船は、
国だけでなく、人の中にあった“当たり前”まで揺らし始めていた。
京では争いが起こり、
江戸では決めきれず、
藩の中でも、見る先が少しずつ食い違い始めていた。
武士だけで、足りるのか。
命令だけで、間に合うのか。
身分だけで、守れるのか。
まだ、誰も答えは持っていない。
だが。
“このままでは間に合わない”
そう感じ始めた者たちがいた。
一人は、火をつける男。
思いついたら、もう止まらない。
一人は、回らないものが気になる男――いや、女かもしれない。
見えない違和感を、見過ごせない。
そして、もう一人。
まだ姿は見せぬが、
人ではなく、仕組みで戦を見る男。
この出会いが、
止まり始めた時代を、
少しずつ動かしていくことになる




