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灰色ノ魔女  作者: マメ電9
第三章 隣国 ユスティーツ編
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第六十六話 オークション その2

人気のない路地をしばらく進むと、廃墟と化した建物の中に案内された。


レンガでできた外壁は亀裂が入っており、蔦植物に覆われている。おそらく何年も前に誰も住まなくなったのだろう。

それなのに中に入ってみると多少埃っぽいが、誰も暮らしていない割に整備が行き届いている。

元は本屋だったのか木製の本棚がずらっと並び、書物がびっしりと詰まっていた。


外と中の様子に違和感を覚える。


レヴォルはそんな店内を迷いなく歩くが、俺達はただ彼についていく事しかできなかった。


「なぁ、レヴォルはどうしてシロナの場所が分かった?」



振り返らず、進む先を見つめたまま答える。

まるで誰とも目を合わせたくないかのように……


「空からさ。ギルドに着いてすぐに既視感のある黒い馬車を見たんだけど、その後単独行動で空から同じ馬車を見つけ、跡をつけたらシロナとコハクが連行されるところだった…。まぁたまたまだよ」


「あんちゃん、既視感……という事は過去にも似たような事があったんか?」


「…………何十年も前の話さ。ほら、他人の詮索はもういいだろう……ここからは慎重にしてくれよ」



店の奥まで来ると、他の本棚とは木の材質が異なる本棚の前で止まり、ブツブツと呟きながら首元からネックレスを取り出す。

その本棚にも古い本が並べられていたが、一冊だけ微かに魔力を放つ本が紛れていた。レヴォルはその本に重ねるようにネックレスを近づけ、自分の魔力を流し込む。


すると、本は突如光を放ちだした。


手を添え、奥に押し込むとズンッと音が響き、一部の本棚がズレて秘密の入り口が現れた。

入り口の先には等間隔で蝋燭が灯った螺旋階段が続いている。



「何だこれは……っ。奴等は地下空間で闇取引をしていたというのか」


「こんなんそりゃギルドが頑張っても見つからんわけやな。というか、ホンマ何もんなんよあんた」


「詮索はやめてって言ったでしょ〜。さっさと行くよ!こっからはここでのルールで勝ちに行かんとダメだからね!ゼシエちゃん……やっけ?オレ達が勝てるかは君にかかってるんだから〜。まぁ正確に言うと、君のバックの存在の財力に………だけどね♪」



財力、と言うワードにピンと来たゼシエは「ほほぉ〜」とニヤッと微笑むと、堂々とした態度で腕を組み


「ほないっちょ殴り込みに行ったろかいや!!大泡吹かしたるわ!!」


と闘志をメラメラと燃やした。が、エデンは焦りながらゼシエの肩を掴んだ。


「ダメです!またそんな勝手な事したらヘイド様に叱られますよ?!この前だって」


「大丈夫やよ〜。まぁ確かにあんま使い過ぎたら他のことに支障がきたしてくるかもやしなぁ………500万までやったらヘイドも笑って許してくれるやろ!それ以上は流石に勝手にしたら怒られるかもやけどね」


「わかりました。ギルドからも僅かですが、100万デイル軍資金に献上致します。少女一人ならそれで何とかなるのではないでしょうか」


「ほんま?ありがたいわ〜!」



合計600万デイルか。


人間の闇取引される大体の値段は知らないが、それで足りるのか?足りなかったらどうするんだ。



階段をゆっくり降りて行きながら、レヴォルはまた冷静に答える。


「人間は魔物と違って旬の時期が短いからね、あまり高値では取引されないようなんだよ。だからそんなに心配しなくていいんじゃないかな」



そうなのか………というか本当に詳しすぎるなこの男。

実は裏のもんだったりして………流石に元団長がそんな筈ないか。


ますます分からないヒトだ。



階段を降り切ると門番が立っていたが、このお面とローブが入る為の印になっているようで何とか目を欺くことに成功。

両扉をギィっと音を立てて開くと、すでにオークションは始まっていて次の商品がステージに立たされ暴れているところだった。



この目を疑ったが、間違いない。


両手両足を拘束されたシロナの姿が、すぐそこにあった。


「馬鹿助手が」


暴れたことで薬物を注入され大人しくなるシロナを見た瞬間、頭に血が上り思わずステージに上がりかけたがそれを必死に理性で抑え込む。



今は我慢だ。


ここで暴れてしまえば失敗に終わる。






待ってろ





必ず俺達が





お前を…………助ける!










「よ、400万だー!」



時間軸は現在に戻り、ルーク達に対抗している28番札の男は負けじと更に高額な値段を叩き出した。


相手がこの国一番の金持ちだとも知らずに………。



「28番負けじと400万出ましたー!!」


「(ちくしょう、あいつら何なんだ?!まぁ流石にこれ以上は出してこねぇだろ。人間の娘に400万出すなんて野郎はそうそういねぇ………何でかって魔物と違って人間は短命だからなぁ、玩具として遊ぶには少々貧弱で長持ちしねぇから勿体無い。俺みたいなマニアにしか好まれない種族だ、この辺りで引いてくれるだろう。へへへ、俺の勝ちだ!)」





「400万!400万以上出ませんかー?」



少し間が開く。


流石にこれ以上は無理か………。


そう諦めかけた時、また札が上げられた。



「500万!!」





………………………え?


「へ?」


「ひゃ、171番の方500万!!500万が出ましたー!!いませんか?これ以上の方はいませんかー?!」


「そ、そんな」


28番札を上げていたヒトは膝から崩れ落ち、両手を地面につけて明らかに落ち込んだポーズをとった。


そりゃぁ一気に100万も値段が上がれば、誰だって戦意喪失するだろう。



茫然として171番と目を合わせると、アホ毛を立たせたお面のヒトが私に親指を立てて合図を送っている。

やっぱり……


ルークだ!


ルーク達が助けに来てくれたんだ!



嬉しさと安心で強張っていた顔が緩む。



でも500万デイルなんて大金一体どこから出てくるんだ??

そんな大金ルーク持ってたか?もしかしてレヴォル??


いや、あのヒトに限ってあり得なさすぎる。

遊び人のレヴォルがそんな大金持ちには見えない。


だとするとエデンが力を貸してくれたとか?


ギルドってそんなに資金に余裕があるのかな……。



と、とにかくこれで変な人のところに買われなくて済んだんだ!

よかった、これで後はコハクを助けて逃げればいいだけ。



安心感に浸っているのはシロナだけではなく、ルーク達も同様。


これで助かる、そう気を緩めたその時だった。




「1億」




低く、酷く冷たい声が会場を包み込む。



巨額の値段に誰しもが固まり数秒沈黙が続いたが、はっ、と我に返った競売人は番号札を確認し、声に詰まりながらも言った。



「66番札の方1億!!1億でましたー!さ、さぁこれ以上の方はいらっしゃいますか?!」




い、いい、1億????

なっ、何かの間違いじゃないのか?!


私にそんな値段っ。



「嘘やん。1億って何アホな………誰やよ?!そんな事言うとんやつは!」


ルーク達の軍資金は600万、1億には到底及ばない金額。

レヴォルも驚きを隠せないようで、口をポカーンと開けたまま固まっている。




66番札をあげている人物を見ようと探すと一番後ろの隅にそいつは立っていた。



ステージからそのヒトに視線を送ると、お面の隙間から一瞬目がバチッと合った気がした。すると体の奥から悪寒が湧き出し、私の中でロギが反応しているように感じる。


魔力遮断の枷をつけているので、言葉が私に届かないけど、何かを訴えかけている事は分かった。





あのヒト………誰?





「いないですか?1億以上の方」



競売人が呼びかけるも誰も札を上げない。


上げられない。



「それでは1億で落札とさせていただきます」



絶体絶命のピンチとなってしまった。


競売人が木槌を振り上げる。



客席では騒めく声が広がり、一部では今にもステージに上がりそうな勢いで暴れているのが見えた。



ルークごめん。

せっかく助けに来てくれたのにな。


私が馬鹿なばっかり………



私を呼ぶ絶叫が聞こえたが、聞こえないふりをして静かに目蓋を閉じた。




「………ごめんな」




木槌は勢いよく振り下ろされ、会場にカーンと音が響くと思った次の瞬間


「ギュアアアアアアア!!」


けたたましい鳴き声が代わりに会場に響き渡ると、会場の一角がガラガラと音を立て崩壊し始めた。










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