第六十四話 捜索開始
子供が生まれたため、なかなか更新できませんがこれからも続けて行くつもりですので、よろしくお願いします。
空が茜色に染った夕刻。
ギルドのメインルームはいつにも増して人がごった返し、沢山の異種属のギルドメンバーが同じ方向に視線を向けている。
その視線の先には銀狼のルークに国王側近ゼシエ、ギルドマスターのエデンが立っていた。
エデンは持っていた刀を地面に突き立て、ここにいる全員に聞こえるよう声を張り上げた。
「いいか、よく聞け!長年に渡りオレ達の目を欺き続けてきた極悪組織、通称『黒い霧』だが、数刻前この街に出現しシロナという15の娘を拐った。オレはまだこの街に潜伏していると見ている、一刻も早く包囲網をはり奴等をこの街から逃すな!絶好の機会だ、これ以上野放しにする訳にわいかない。全勢力を尽くして娘を救い出し、奴等を牢獄行きにする!!いいな!!」
突き立てていた刀を抜き、上に掲げる。
すると、静かにエデンの話を聞いていたギルド員達も一斉に己の武器を上に掲げて、「うおおおおお!」と野太く低い雄叫びを響き渡らせた。
空気や床が震えて、まるでこの部屋だけ地震が起きたようだった。
「独断専行は絶対するな!スリーマンセルになり必ず1人はテレパス魔法を使える奴を加えろ。何かあればすぐにオレに繋げてくれ、指示を出す」
命令を受けたギルド員達は、装備の確認を済ませた順にスリーマンセルを作って外へ出ていく。
エデンは刀を鞘に戻し、ふっと息を吐いてからルークと目を合わした。
「これで人員的に問題は無い。後は時間の問題だろうけど、相手が相手·····何十年も逃れ続けてきた奴等だ。そう簡単にはいかないかもしれないが、オレの責任だ··········シロナは必ず見つけてみせる。この命にかえても」
俺と合わせるその瞳は、メラメラと覚悟の炎で燃えている。
ふと俺は思った。
どうして人間は直ぐに命を懸けたがるのか·····。
俺たち魔物より寿命が短い、儚い種族。
シロナもそうだが短命のくせに無茶しがちだ。
自分の事も守れない弱い存在。
それなのに体を張って守ろうとする。
自分を犠牲にしてでも救おうとする。
遺される者はどんなに苦しいかも知らないで。
シロナ……お前は今……どこにいるんだ?
脳裏に嫌なイメージが流れ、背筋が凍る感覚が走った。
ボロボロになって知らない誰に連れられ、手の届かない遠くに行ってしまうイメージが…。
ふざけるな。
誰かの手に渡る前に
早く
早く
俺がお前を··········
「行くぞ」
スタスタと外に出ていこうとする俺を、エデンとゼシエが後を追う。
エデンが責任を感じていると、ゼシエが肩にぽんと手が置く。ゼシエは笑みを浮かべてエデンを慰めようとしてくれているようだ。
「大丈夫やよ!ウチもおるんやから、もし相手に逃げられたとしてもシロナって子だけは絶対助けよっ。心配いらんて·····ルーくんから聞く限り何だかんだやりはる子なんやってな。きっとなんとかなるわ!·····な?」
「··········はい」
その時、エデンにテレパスで脳に直接声が伝わってきた。
「《ギルマス!目撃情報を掴みました!》」
「何?本当か!すぐ位置を教えろ」
「《はい。1300頃に街の北側の路地で二人組が乗った黒い馬車を見たそうです》」
「北だな·····分かった、引き続き探ってくれ」
「《了》」
ブツんと脳内で音を立て通信が途絶える。
やり取りを何となく察した俺は立ち止まり振り返った。
「北で馬車を見たんだな?」
「あぁ、すぐその周辺に·····っと待ってくれ、また通信が」
先程とはまた違う者からのようだったが、通信を繋ぎ話を聞いているとエデンは驚き考え込んでしまった。
「そんな·····その情報は確かなのか?···············分かった。引き続き頼む」
「どないしたん?」
「··········今度も目撃情報の連絡で、どうも先程連絡のあった馬車と同じものを見たという事らしいのですが··········時間帯と位置がおかしくて」
「どういうことだ」
「1300頃南で馬車の目撃情報が入ったんです、それなのに同時刻に北でも目撃されている。」
「なるほどぉ。それやったら同じ様な馬車が2台あったって事?」
「いえ。黒い霧はそれぞれのペアで乗り物が異なっているようで、馬車以外にも魔獣に乗って移動する者や、転移魔法を駆使する者、不思議な機械的な乗物を使う者もいて、それぞれ移動手段が被らないようにしているのです。この辺で見かけるのは馬車だけですので、この街に潜伏している黒い霧は2人か多くて4人·····馬車を2台も使っている可能性は低い」
「つまり魔法で分身か幻覚を作り、俺たちを錯乱させている·····ということか」
俺の一言にコクリと頷くエデン。
「おそらく、今まで黒い霧を逃し続けてきた原因はこれにあると思う」
ハァ、と深いため息をついて頭を抱える。
多分これから出てくる目撃情報はどれも当てにならない。
デタラメばかりの情報だ。
聞き込み以外の手段で探すしかなくなったわけだが、他にどんな手がある?
こんな時コハクがいれば役に立ったかもしれないが·····コハクも一緒に捕まっていると考えていた方がいいだろう。
クソ
どうする。
他の方法を考えている間にも、エデンに次々と偽目撃情報の通信が来ていた。
仕方ない。こうして悩んでいる時間が惜しい………ここは俺が闇雲にでも探すしか………っ!
街中に向かって走ろうとした瞬間、ビュッっと強い突風が吹いた。
思わず目を閉じ、砂埃が舞うので腕で顔を防ぐと空からレヴォルがフワッと降りてきた。
地面に片足をつけると、風魔法を解いて華麗に着地ポーズを決めてみせる。
「やぁやぁルークくん!何やらお困りのようですね〜」
無駄に格好つけようとするレヴォルに少々イラついたものの、ここは空からも捜索できる人手も欲しいところだ。
特にツッコミを入れる事もなく、直球に話を放り込むことにした。
「いいところに帰ってきた。やってもらいたい事が…──」

内容を伝えようとした俺に近づき、レヴォルは人差し指を口元に当て言葉を発する事を遮る。
そして左目をバチッとウインクすると、ニコッと笑いドヤ顔で話し始めた。
「オレを誰だと思ってるのさ?ま・か・せ・ろ・よ・★」
全てを悟り、もう解決したも同然と言いたげな自信たっぷりの顔に、俺はレヴォルの手を優しく握り退ける。
流石は元騎士団長といったところか。
無駄に長く生きているだけあるな。
そう尊敬しふっと俺は笑みを返した。
あぁ、
ウザい
★
捜索が開始されたその頃、シロナは目隠しされ闇商売人にある場所へと連れて行かれていた。
捕まっていた牢屋から徒歩で数分。
目隠しをされているので正確には分からないけど、同じ敷地内を移動している感じだった。
腕に繋がれた鎖を引っ張られ強制的に歩かされいる中、無数の魔獣や魔物の声が耳に入ってくる。
みんな助けを求めている。
でもそれを救おうとする者はいない。
ここから出る方法は一つ。
誰かに買ってもらう事だけだ。
怖い。怖い。怖い。
何も見えない暗闇の中歩いているので余計に怖い。
不安がどんどん募っていく。
「やめろ、離せ!ボクに近づくな!」
すぐ近くでさっきの緋竜、シャルの声が聞こえた。
私が牢から出された後、シャルも連れてこられたんだ。
すると突然、目の前が光で真っ白になった。
目隠しを外されたようだ。
「お待たせしましたー!お次の商品は灰色の髪の人間の娘です!顔に少々傷はございますが内包する魔力は非常に高く、おまけに翡翠色の瞳。更に更にこの時代では珍しい精霊憑きでございます!今回の目玉商品と言っても過言ではないでしょう!さぁこの商品が欲しくてたまらない方、沢山おられるのではないでしょうか?では………こちらの商品……50万デイルから始めさせて頂きます。オークションスタートです!」




