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灰色ノ魔女  作者: マメ電9
第三章 隣国 ユスティーツ編
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第五十七話 尋問


ギルマスに奥の部屋へと引っ張られると、頑丈そうな扉が開かれた。


中に誘導されるとそこは小さな個室となっており、部屋の中央に二人向かい合って座れる小さめの机と椅子。

角の方に一人だけ座れるデスクが配置されている。


部屋は薄暗く、小さな鉄格子の窓から光が差し込む。

昼間はこれでいいのだろうけど夜は相当暗いはず。


辛うじての灯りは、机の上にあるランプ程度だった。



日が暮れた暗い個室で尋問とか‥‥そんなの怖すぎるっ

今が昼間で本当に良かったと少しホッとする。


いやいや、全然そんなホッとできる状況でもないんだけどな!

私はまだ手錠をされたままだし、ギルマスの顔は怖いし、付き人っぽい下っ端の男の人も大きくて怖い。


それに、さっきからロギに話し掛けているのに返事が無い。

多分だけど、この手錠は魔力を遮断する能力があるって言ってたからロギと繋がりにくくなってるんだ。


私の中にいる感覚は確かにあるのがその証拠だと思う。

ノイズもさっきから頭に響くし、恐らくロギも中からどうにかしようとしているのかも‥‥。



ここは、私一人で乗り切る他ない‥‥っ!


覚悟を決めるんだ‥‥っ!私!!





「座れ」と中央の席に誘導され大人しく従うとギルマスは私の向かいに座った。



「では始めようか」



極度の緊張から生唾を吞み込む。


ギルマスが言葉を発したと同時くらいにガタイの良い男が角の席に座り、紙を広げて何かを書きだす。

恐らく会話を記録しているのだろう。





この時私は察した。



ここでもし私が変な事を言ってしまうとルーク達が大変な目に遭うのでは‥‥?


一体、どこからどこまでを話して良いのか私には分からない。


一応今回ここに来た理由は魔軍のお使いがメインな訳で、このギルド、人間相手では無い。

魔軍は人間と対立しているところがあるから、そんな簡単に魔軍の情報を人間に流しちゃダメなんじゃないのか??


まだ私は完全に魔軍から、スカーレットから認められた訳じゃ無い。下手に喋ってしまえば裏切り者と言われ殺されてしまう。





‥‥ここは慎重に話さないとダメだ。



膝に置いた拳に力を込め、私は腹を括りギルマスの目を見た。



さぁ‥‥‥来い!!



「ふん、やる気十分のようだな。では答えてもらおう‥‥お前は何故この街を目指していた。目的は何だ?」



キタ。


この質問には手紙の事はふせて素直に答えておこう。



「ルークは薬師で私はその助手をしている。それで薬の納品先がこの街の人だったから納品に来ただけだ」



答えた瞬間、ガリガリと書記のペンが走る音が聞こえてくる。

威圧感を放つ音が私を不安にさせた。



だ、大丈夫。まだ何も変な事は言ってない。

この調子で答えていこう。



「納品な‥‥その納品相手は誰だ?」


「それは知らないんだ。ルークが着いてからのお楽しみって言って‥‥でもお得意様って前に言ってたぞ」


「‥‥闇取引か?」


「ち、違う!!ルークはそんな奴じゃない!仕事には真面目に取り組む奴なんだ、そんな汚い商売はしない!」


「その根拠は?」


「前にコハク‥‥ホワイトドラゴンの子供の命を無償で助けてくれた。金目的に商売してるならそんな事したりしないはずだ!」


「お前、相当あの犬魔物を信用しているみたいだな。騙されている可能性もあるんじゃないのか?」


「‥‥ルークは確かにいつも嫌味しか言ってこないけど、私にとって大事な命の恩人だ。‥‥悪人な訳が無い!

第一、この街に来たのも今日が初めてだし今回のその闇取引?とは全く無関係だ!私達は何も知らない」



言い切った!


言い切ってやったぞ!



ドヤっているとギルマスは何かの資料をペラペラのめくり確認する。


「‥‥うん、確かに最近の入国手続き一覧にお前達の様な者は記されていない。嘘では無いみたいだな」


「と、当然だ!私は嘘をつかないぞ!」


「なら質問を変えよう。お前は奇襲してきた敵の何を知っている?洗いざらい吐け」


「!」



あ〜。その質問が来たか。


とりあえず、手紙と魔軍の事を避けて当たり障りの無い答えにしよう。



「私がいた街に凶暴化魔物が現れて暴れた事があったんだ。他にも風の噂で隣の国でもここと同じ様に突然何処からともなく凶暴化魔物が出現し街を襲われたとか‥‥。

その話と今回の奇襲が似てるなぁと思っただけで‥‥」


「凶暴化魔物‥‥なるほど、奴らは他の国にも攻撃しているのか。魔物と一緒に行動している人間だから敵のスパイか何かかと思ったが、どうやら違うみたいだ」



先程まで鋭い眼光で突き刺す様に私を見ていたギルマスだったが、肩の力を抜き腕を組んでリラックスし始めた。


突然の空気の変わり様に「へ?」と間抜けな声をこぼしてしまった。



「し、信じてくれるのか?私達は何もしてないって‥‥」


「何だ?もっと疑って欲しいのかお前」


「いやいや!んな訳じゃっ!‥‥ただあっさり過ぎるというか、もっとグイグイくるものだと‥‥」



簡単に信じて貰えたことに私が信じれず戸惑っていると、ギルマスはフッと笑い答えた。



「オレは少し特殊でな·····相手の心が読み取れる。まぁハッキリとまではいかないが、嘘をついているかどうかくらいは分かる」




相手の心が?そんな事が可能なのか!


まぁ嘘をついてないって信じてもらえそうで良かった‥‥。

もっと酷い目にあわされるかと思ってたけど、これでみんな解放してもらえるだろう。




私は身体中に入っていた力が一気に抜け安堵した。



「じゃぁコハク達を牢屋から出してくれるのか?そろそろ魔力供給しないと‥‥」



そう、この手錠をかけられてから魔力を遮断されているためコハクに魔力を流せないでいたのだ。

最近コハクも成長しているのか自分自身に貯められる魔力量が増えている様で、暫く魔力供給をしなくても耐えられるようになっていた。

でも、それもそろそろ限界。


なるべく早く供給を行わないと魔力不足に陥ってしまう。



「コハク‥‥あぁ、あの一緒にお前にくっついていたドラゴンか。ドラゴンが人に懐くなどあり得ない事だ、ましてや子供のドラゴンだなんて‥‥。

灰色の髪にその顔の痣‥‥おまけに微力に感じるドラゴンの魔力と別の何か。お前‥‥‥‥人間か?」


「なっ!!」



またその誤解かっ!!!!

そんなに珍しいのかこの髪色は?!


それに私の中のドラゴンの魔力とロギに気付いてる?!


ど、どうしよう‥‥‥素直に話すか‥‥?

下手に嘘をついても見抜かれそうだしな‥‥。




考えた末の決断。




‥‥仕方ない。


ここはストレートに言おう。

信じてもらえなかったらその時考えよう。




決心し、私は口を開いた。


「私は人間だ。でも普通の人間じゃないかもしれない‥‥、信じてもらえないかもしれないけどこれが真実だ」


「‥‥‥構わん、言え」



暫くの沈黙の後、私の声だけが部屋に響く。



「私は元始の魔女の娘。‥‥闇の精霊術師の最後の生き残りだ」


「「!!」」



余程驚いたのだろう。

隅に座っていた男は椅子をガタッ!と鳴らしてこちらを凝視し、ギルマスも目を見開いている。


私は元始の魔女のことさえ最近知ったのでどれほど凄いことなのかピンとこないけど、この反応を見る限り人間界でもかなりパワーワードのようだ。



「お前が‥‥‥あの魔女の娘‥‥だと?」


「そう‥‥らしい、私も数日前に知ったばかりだから証拠は?って聞かれると困るんだけど。

ドラゴンの魔力に関しては私にも分からなくて‥‥‥。

子供を助けた時に母親から貰ったんだ。私の代わりにこの子を頼むって」




また沈黙が部屋を埋め尽くす。



あああ。流石にこればっかりは信じてもらえないか────っ



黙り込んでしまっているギルマスの顔をチラッと覗くと、彼女は俯いたまま肩小刻みに震えさせ何かを耐えている。


すると次の瞬間「ブッ」と吹き出し「ハハハハハ!!」と笑い出した。



いきなりの爆笑に固まってしまう私。


何か私面白い事言ったか??




笑いが治るとギルマスは立ち上がり私の手錠を解除した。

手錠はゴトンと音を立てて床に落ちる。


そして書記の方を向きこう言った。



「おい、ドラゴンを連れてこい。あとついでに他の奴らも解放してやれ」


「え?いいのですか?!」


「構わん、それと今から少し出る。あとは頼んだぞ」


「は、はい‥‥」



指示を出し終えた後、すぐにコハクは私の元へと連れてこられた。

取られていた武器やカバンなんかも一緒に返してもらい、コハクも元気そうだ。


これでようやく自由に‥‥‥


「お前、シロナ‥‥とか言ったか」


「?」



私の前に立ち、ギルマスは手を伸ばして笑みを浮かべる。



「オレの名前はエデン。少し付き合ってくれないか」





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