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灰色ノ魔女  作者: マメ電9
第一章 灰色から虹色世界へ
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第二十二話 闇精霊


言葉が出なかった‥‥‥‥。


だって、いきなり気づいたら1人でこんな所に居て。

そこには魔物の様なのが鎖に縛られていたのだから‥‥。


状況を飲み込めずに、私はただそこに立ち尽くしていた。


「テメェ‥‥魔法をあれだけ使うなって言ったのに、何故使いやがった。なぁ?シロナ」


魔法‥‥?


そういえばこの声‥‥聞き覚えがある。

というかこいつ‥‥


「魔物‥‥何故私の名前を知ってるんだ‥‥?ここは何処だ。あんたは‥‥なんでこんな所に縛られて‥‥?」


疑問が溢れ出す。

そいつは不機嫌そうに眉に皺を寄せながら答えた。


「‥‥俺はテメェが産まれる前から知ってる。あと、俺をあんな下等生物共と一緒にすんじゃねぇ」


産まれる前から???

どういう事だ‥‥それ?


「俺は闇精霊の生き残り。ロギアン。そしてここは、俺とテメェとの間に出来た精神世界‥‥」


待て‥‥話についていけない。


「ここはテメェ自身の中だ」


「私の中‥‥??‥‥ちょっと待て‥‥何だそれ?じゃぁ私が子供の頃からあんたは私の中に‥‥いた?」


コイツが私の中に‥‥?

闇精霊って‥‥。

何でそんなのが‥‥。

しかも、確か闇精霊は大昔に滅びたってルークが言っていたような‥‥。


生き残りって‥‥どういう‥‥。


話を聞けば聞くほど混乱して、冷や汗が頬を伝っていった。


すると突然空間がグラグラと揺れだし、私は腰を落として耐えた。


「な、何だ?!」


ただでさえ困惑しているのに、次から次へとやめてほしい!


「チッ、接触し過ぎたか。シロナ、テメェは早く向こうに帰りやがれ。後これから魔法は絶対使うな」


「それって、どういう意味何だ?!もっと分かりやすく説明しろ!この地震は何なんだ?!」


もう軽くパニックである。


「この鎖を見ろ」


足首、手首、首に縛られている鎖。

よく見るとその鎖はどれもヒビが入っていた。


「これは俺を封印しているもんだ。テメェが魔法使えば使うほど、この鎖は崩れていく」


封印‥‥それってモノンが解除したって言ってたやつか‥‥。


「この鎖が砕け散れば、悪夢なんてもんより本当の呪いがテメェに降り掛かる事になるぞ」


「呪いって‥‥それはどういう‥‥」


話の途中でまた空間が揺れだした。


「糞がっ!時間がねぇな。‥‥シロナ、もうここには来んじゃねぇぞ。お前のクソ親父の為にもな」


「!!」


父さん‥‥?

あんた父さんの事‥‥!


声に出そうとした。


でも出なかった。


何故なら、また激しい頭痛が襲ってきてそのまま意識を失ったから‥‥。





あいつは‥‥



父さんの何を




知って‥‥‥‥‥‥――――――。






シロナが精神世界から消えた後。

ロギアンは深い溜息をついた。


頼むから魔法は使うんじゃねぇぞ‥‥。

魔力を抑えてる封印に負荷が掛かりすぎて、もう持たねぇ‥‥。


頼む‥‥。


頼む‥‥‥‥‥‥。



届くかわからない願いと、鎖の音が闇の中へ溶けていった。










意識がボーッとする。


私は‥‥どうなったんだ‥‥?


でも暖かい‥‥。

これは‥‥ベッドか‥‥?



ゆっくり目を開けると、見慣れた自分の部屋の天井がそこにあった。


「‥‥夢‥‥か‥‥?」


首を横に向けると隣にコハクが眠っていた。


その小さな頭を優しく撫でて体を起こす。

窓からは朝の太陽の日差しが差し込み、小鳥の鳴き声も聞こえてくる。


私は一晩中眠っていたらしい。


何やら、お腹あたりに重いものを感じ、ゆっくり身体を起こした。

その重かった正体は‥‥。


着替えもせず、ここでずっと様子を見ていてくれたのだろう‥‥。


疲れ切っているルークの姿があった。


小さな椅子に座り、私のベッドに倒れかかって眠っている。



ずっと‥‥看病してくれてたのか。


そう思うと胸の奥が熱くなって、気づくと私はルークの頭を撫でていた。





まつ毛が長い‥‥。




寝顔も子供みたいだ‥‥。


起きてたら皮肉ばかり言うくせに、寝顔だけは純粋に見えるのは不思議だな‥‥。




すると耳がピクっと動き、私も急いで手を引っ込めた。


ムクっと体を起こすルーク。

私は何事もなかったかのようにした。


「お、おはよぉ」


少し寝ぼけた顔をしていたが、私が目を覚ましている事に気づくと私の肩をガッと両手で掴んだ。


勢いよく立ち上がったので椅子も倒れてしまっている。


「シロナ‥‥っ!お前っ!心配したんだぞ!どこも何ともないか?!」


驚いた。


ルークのこんな慌て具合、今まで見たことがない。


「あ、あぁ。もう大丈夫。ちょっと頭が痛かっただけだから‥‥」


「本当かっ?もう痛みはないか?」


「うん、何ともない‥‥。心配‥‥かけたな‥‥。ごめん」


ルークは掴んでいた手を離し、ため息混じりに倒れた椅子を戻して腰掛けた。


「全く‥‥。今後体調が悪かったら先に言え。‥‥まぁ昨日は魔法と武術の練習を詰め込みすぎたからな‥‥無理もないか、今日は魔法の練習は止めておこう。武術はどうする?」


体に疲れとかは無い。

何故か筋肉痛も治っているし。


今は余計な事を考えたくなしな。

体は動かしていたい。


「武術はする。もう全然動けるし、後、モノンの薬も作らないと」


よく分からないけど、魔法さえ使わなければいいってアイツも言ってたしな‥‥。


「分かった。無理はするなよ」


そう言ってルークは立ち上がり部屋を出ようとした。


「シロナ、もう少しゆっくりしてろ、朝飯出来たら呼ぶから」


「分かった」


そして扉が閉じた。



ルークにあの事を言うか‥‥。



でも言ったところで、夢だろ?

って言われるのが目に見えてる。


でも‥‥もし、夢じゃなかったら‥‥。





考えれば考える程、私の中で疑問が渦巻いていく。


謎は深まるばかりだ。







時計の針は13時を指す頃。

私はジェイトと武術の特訓に励んでいた。


「シロナー!そこもーちょっと歩幅を狭めに!」


「こっ、こうか?!」


ジェイトの教え方は上手く、分かりやすい。

だからか分からないが、武術はとても楽しかった。


「あ、そういえばシロナの武器だけどよ。今日最終加工の予定だからもうすぐ完成するぜ?」


「えっ!本当か!いつ?いつ持ってこれる?!」


今使っている短剣はジェイトからの借り物。

自分専用の武器と聞いて胸が踊るのは仕方ない!

仕方ないのだ!!


「ん〜明日には持ってこれると思うけど」


その答えを聞いて肩を落とす。


「あぁ、明日か‥‥。明日は納品で出掛けるんだ」


そう、明日はモノンの所に薬を届けるのと、施設に行かなければならない。

だから家に誰も居ないのだ。


「お〜そっかそっか。なら朝イチに来たら間に合う感じ?」


ジェイトは、そんな事かよと言いたげにニッと笑って言った。


「え!来てくるのか?!そんなすぐに完成する感じなのか?」


「まぁ、普通の鍛治職人がやりゃぁ2日は掛かる工程だが、俺にかかりゃんなの半日で済むような事だしな。問題ないな!」


「おお〜」


前から思ってたけど、この男。


なんでも出来て凄すぎる‥‥。

フリーター王と自分で言うだけあるな。


と、私の中でジェイトに対する関心度が上昇したところで今日の武術を終え、次は仕事場へ向かった。


施設に納品する薬は出来上がっていたが、モノン用の薬はまだ手をつけていなかったからだ。

明日納品予定‥‥急がないとっ。


ルークに大丈夫か?無理してないか?

と心配されたが、私は薬作りに熱中した。


何かしてないと、色々考えてしまうから‥‥。


この答えはきっと、誰に相談したとしても答えられない問題。

私にしか分からない問題だ。


そう思うと、何だか急に孤独な気分になった。




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