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部屋に戻ってから、そういえば、グレースとリディには話してなかったって気がついた。で、二人がそろってたから、ホント恐る恐る打ち明けてみた。
「あのさ、グレース、リディ。あたしが、セイライ国の王様の姪だって言ったら、どうする? 母さんのお兄ちゃんが、王様なんだって」
「……は? 何かの悪い冗談じゃなくて?」
いきなり、リディに鼻で笑われたんだけど!
まあ、あたしもそう思うけどさぁ……。まだびっくりして、目を大きくしてるグレースのが、マシな反応でしょ。
「それが本当だとして、何か変わるの?」
「別に、何にも変わんないよ」
あたしはあたしだし。
急に王族らしく振る舞え、なんて言われても、無理無理。できるわけないじゃん。
「だったら、どうでもいいじゃない。王族だからそれらしく扱え、って言われるのかと思ったわ」
「えっと……ユノさんの伯父さんが、王様ということですよね? すごいですね、それ」
ああ、もう! グレースのちょっとズレてる感想、ホント癒やされるんだけど!
思わずグレースにギュッて抱きついて、すぐにリディにも抱きついた。
「そうだよね。あたしはあたしだもん。今までと何にも変わんない……それでいいじゃん」
一人ずつって嫌になって、グレースにちょいちょい手招きして、二人をまとめてギュッてしてみた。
二人とも、大好き!
「それにしても、急に何でそんな話が出てきたのよ」
「ほら、三日前だっけ? 四日前? 頑張ったね会の時にさぁ」
リディの眉が、ググッと近づいて仲良しになった。グレースも、笑いたいのを我慢してるみたいな、変な顔してるし。
小難しい言葉、覚えてられないんだからしょうがないじゃん。それに、何日前だったかなんて、正確じゃなくってもいいっしょ。だいたいでわかれば。
「お貴族様の女の子に絡まれて、ほっぺた叩かれたんだよね。もちろん、やり返したけど。そしたら、母さんが見てたらしくって、相手の子にメッチャ怖いこと言ってて。そん時に初めて知ったんだけど」
「ああ、貴族は面倒よね。王族同士でも面倒くさいのに、王族に単なる一貴族が何かしたら、もっと大変なことになるんでしょ?」
む。リディ、妙に詳しいじゃん。
「何で詳しいわけ? あたし、ずっと傭兵してても、お貴族様って面倒くさい、しか思ってなかったのに」
「昔、リアムに聞いたのよ。貴族は面倒くさいって。あと、ジャレッドさんにも、確認ついでにいろいろ教えてもらったの」
「へっ!?」
「え……?」
あたしとグレースの疑問の声が、思いっきりかぶった。
一緒に驚いてたら、リディもびっくりしたって顔で、こっち見てくるし。
「あら、言ってなかった? リアムとは元々、同じ孤児院にいたのよ。といっても、一緒に暮らしてたのは一年くらいかしら? あっちは貴族に引き取られて戦場送り、あたしは盗みで孤児院の生活を助けて、って生活をしてたわ」
ぽかーんとするって、こういうことだよね。
あたし今、絶対、すっごい間抜けな顔してる。だって、リアムが孤児ってことは知ってたけど、リディと同じ孤児院にいたなんて、知らなかったし。
……ってか、リアム、リディを知ってるって、教えてくれなかったよね?
後で絶対、忘れずに聞き出してやるんだから!
「解放軍で顔を合わせたけど、お互い知らんぷりだったしね。子供の頃、ほんの一年ばかり一緒に暮らした相手の、それも異性なんて、わざわざ話し込みたいほど仲がいいわけないじゃない」
あー、そっか。たった一年じゃ、共通の話題なんてないよね。あたしとイハル兄とは、違うんだ……。
でも、リアムにはリディのことを聞く。これはもう絶対、そう決めたから。
「そういや、リアムって言えば、お貴族様に啖呵切ったんでしょ?」
「そうらしいわね。意外な一面を見たって、エレンさんが言ってたわ。別に意外でも何でもないと、あたしは思うけどね」
「うんうん。リアムならやるよね。ってか、何言ってそこまで怒らせたかのが、気になるっしょ」
「そうよねぇ……子供の頃ですら、一年いた間に一回、軽ーく怒っただけだもの」
えー。やっぱ、小さい時はちょっと忍耐足りなかったの? それとも、リアムの忍耐力を突破した強者がいたってこと?
どっちにしても、ちょこっとだけ、見たかったなぁって思う。
「あの後、割とすぐにリアムが引き取られていったから、みんなホッとしてたわ。さすがにあれを見て、キャアキャア言う子もいなくなってたし」
……そっか。犯人は、忍耐力を突破したんだね。
今のリアムだって、メチャクチャなことしなければ、怒ることはしないじゃん? 笑顔で、冷ややかな怖い空気出して、「ダメだよ?」くらいは言うけど。
「本気で、どうやってあの忍耐力を突破するのか、知りたくない?」
ベネットがバカやってると、つい突っ込みたくなるのに、リアムってスルーできるんだよ? そこにいないみたいな扱いでさぁ。
それができないって、かなりすごいよね?
「えっと、多分ですけれど、エレンさんに何かあったのではないでしょうか。リアムさんは、女性には優しい方ですから」
「ああ、うん、そうなんだよね。エレンさんにいっつも絡んでくるお貴族様だったらしいけど、でも、エレンさんも自力でいっつもあしらってるんだって。それでもリアムが怒るって、相当だよね、って話」
そうそう。騎士のおじさんからちゃんと聞いたじゃん。うっかり忘れてた。
っていうか、グレースにまで、女性『には』優しいって言われちゃうリアムって、どうなの? そりゃあ、グレースに『だけ』優しいイハル兄に比べたら、断然マシなんだろうけどね。




