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誰かと街に出る時は、ちゃんと私服に着替えるんだけどね。今日は一人だし、目で見てわかる方がいいかな、ってことで、このままで!
この恰好だと、セイライ国の人間だって、たいていの人ならわかってくれるし。子供じゃないよ、傭兵だよ、って、見てわかるじゃん?
あと、よっぽどおかしい人じゃない限り、傭兵にはまずちょっかいかけないしね。
簡単に盗られないように、お財布はしっかり隠して。それから、おやつを買うためのお金もちゃんと入れたし。
うん、準備オッケー。
宿舎の出入り口が、お城に向いてるからね……騎士様たちが走り込みしてたら、出た時に見つかっちゃうし、部屋の窓から確認してっと。
あたしたちの部屋の窓って、お城側の外が見えるんだよね。しばらく見てれば、今走り込みしてるかどうか、すぐわかるんだよ。で、こっちは上の方だから、騎士様たちがわざわざ見上げない限りはバレないし、見上げてもわかんないかもね。
しばらく見てたけど、騎士様たちは走ってこない。ってことは、まだ走り込みの時間じゃないってこと。
よーし、今のうちっと。
急いで廊下に出て、階段を駆け下りる。念のために、外に出る前にコソッとお城の方を確認して。
……うん、大丈夫!
全力で走ってお城の敷地から街へ。
何だか、いつもと違う感じでドキドキするね!
さーてと。どこを見ようかな? ってか、エレンさんが言うには、将軍って、ものが欲しい人じゃないんだよね?
んー……首飾りだったら、大丈夫かな? 鎖じゃなくって、革紐の。嫌なら、つけなくってもいいし、しまっとくにしても、そんなに場所、取らないかな? って思うんだけど。あたしも、そのくらいだったら、もらっても困らないかな、って。
それとも、もっと別のものがいいのかな?
でもさぁ、武器とかの手入れ道具って、やっぱ使い慣れたもんがいいじゃん?
……むー、ちゃんと聞いてからがいいのかなぁ?
うん、まあいいや。歩いてて、これだったらいいよね、ってものが見つかったら買う。そうじゃなかったら、おやつだけ買って帰ろうっと。
ってことで、あたしはお店を覗きながら、あっちこっち自由に歩き回ってみる。
まあ、でも、すぐにお菓子を売ってるお店に近寄っちゃうのはしょうがないよね。だって、おいしそうな匂いが、遠くまで届くんだもん。
それに、セイライ国だと、あんまり他国のお菓子は手に入らなかったんだよね。かといって、家でお菓子が作れるくらい、材料があるわけじゃないし。だから、誕生日のお菓子はすっごい贅沢で。
こんなふうに、割といつでもお菓子が買えるって、あたしとしてはかなり幸せなわけ。
とりあえず、いくつかおやつを買って……っと。
おやつは腕にしっかり抱え込んで、お菓子じゃないものを売ってるお店も眺めてみる。
あたしは、ちっちゃなリネンは割と使うし、可愛いの見るとついつい欲しくなるけど。さすがに、将軍に可愛いのあげたら、すっごい微妙な顔されるよね。普通の、可愛くないのなら大丈夫かな?
そもそも、将軍って、このちっちゃいリネン使うの? 男の人って基本的に、ちっちゃいのは持ち歩かないよね。お兄ちゃんたちは「紳士のたしなみ」とか言って持ってたけど、使い方がちょっとおかしかったし。
うーん……人にあげるものって、やっぱ難しいね。
装飾品を売ってるお店があったから、ちょこっと寄ってみた。どっちかって言うと、可愛い感じの。グレースに似合いそうなのが多いかな?
あ、でも、これなんかリディに似合いそう。ちょっと大人っぽい雰囲気でさ、赤い石が入ってるのが、リディっぽいし。
訓練中のエレンさんに似合いそうだったら、将軍でもいけるかな?
ここは可愛いのばっかりだから、違うお店も見てみよっと。
フラフラ見てたら、銀細工のお店があった。こんなお店、今までにあったっけ? この辺、何度か通ってるはずなんだけど……ひょっとして、新しいお店?
見覚えがないから、何となく入ってみた。指輪と首飾りばっか。それも、何か妙にごっつい感じの。
こんなのつける人、いるの? って思うような、微妙な形が多いんだけど……。
「あ……」
何だろ? これだけ、ちょっと違うっぽい?
目のつぶらなクマなんだか、メッチャ筋肉質のウサギなんだか、よくわかんない動物だったり、花っぽい気がする新種の何かだったり。とにかく、他のはとことんメチャクチャなんだけど。
これだけ、ちゃんとしてる。変な言い方だけど、見てはっきりわかるっていうか。
盾の手前に剣があって、柄と切っ先がちょこっとずつはみ出してる。盾にも剣にも、飾りとかないんだけど、こういうの、あたしは好きだなぁ。
「傭兵のお嬢ちゃん、いいのがあったかい?」
お店のおじさんに声をかけられたけど、この首飾りから目が離せなくって。
「ああ、それは、以前いた職人の作品だな。武運を祈って作ったと聞いているが……」
「へぇ……じゃあ、他のやつは別の人が作ったの?」
「そうだ。そいつをつくった職人は、今は別の街で自分の工房を出しているそうだ」
なーるほどね。だから、他のはいまいちなんだ。んでもって、きっと、売れ残ってるってことだよね?
「ねね、その人って、他にどんなの作ってたの?」
「そうだなぁ……恋愛成就やら、健康祈願やら、家庭円満やら、とにかくいろいろ作ってたらしい」
へぇ……ってことは、その別の街に行ったら、もっといろいろあるってこと?
「その人、どこに行ったの?」
「……確か、リーグレーネだったな」
「そっか。ありがとね!」
でも、リーグレーネって、メアンラーエ寄りのちょっとおっきな街だよね? こっからだと、馬じゃないと無理じゃん? 歩いたら、往復三日くらい?
んー……馬を借りるとなると、騎士様に声かけなきゃいけないし。かといって、エレンさんに頼んで乗せてってもらうのも、何か違うような?




