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昨日は、騎士様たちに見つかんないように、こっそり戻った。
で、日課のドナの餌やりしながら、エレンさんに聞いてみたわけ。
「コソッと馬、借りれないかな?」
「さすがに、それは難しいと思うわ。私がただの騎士なら、代わりに借りてあげられるんだけど……あ、今日の午前中でよければ、リーグレーネまで一緒に行けるわ」
やっぱそうだよね。馬自体、高級品だしさぁ。
「って、それじゃエレンさんに悪いじゃん?」
「ユノ嬢が気になったという銀細工が、私も見てみたいの。それに、いろいろな念がこもっているんでしょ? 実際の効力が気になるじゃない」
……エレンさんってさ、時々、あれだよね。
おまじないっぽいことに興味があるのって、ひょっとして、治癒ができるからなのかな? グレースも、そういうの好きそうだし。
そりゃあ、あたしとしては、エレンさんとだったら楽しそうだな、って思うけど……絶対、ドナが悪目立ちするよね。ついでに、エレンさんも目立つよね?
でも、うーん……ドナだったら、お昼までに余裕で戻ってこれると思うし。
「リーグレーネまで、私のことが知れ渡っているかどうかは別として。竜に乗った騎士と、セイライ国の傭兵が一緒だったら、ちょっかいをかけてくる人間は少ないと思うの。メアンラーエの人間がいても、こちらの土地では手出ししてこないはずだから」
まあ、確かに、リーグレーネの辺りは、思いっきりマーハルニーファ側だもんね。
手出ししたら問答無用で切り捨てますよ、って約束がお互いにある分、何かあるなら別の国、ってことだし。
「どう?」
軽く笑って、ちょこっと首を傾けたエレンさんに聞かれた。
行ってみたい気持ちと、申し訳なさを天秤にかけて。
「……お願いして、いい?」
あたしが聞き返したら、エレンさんがニッコリ笑って頷いた。
朝ご飯食べて、エレンさんのお迎えを待ってたら、どっか行こうとしてるリアムと会ったよ。
自主訓練以外は、部屋にいることが多いリアムなのに、珍しいよね。
「ユノちゃん、こんなところでどうしたの?」
あー、うん、宿舎の真ん前だもん、気になるよね。それはわかる。
「エレンさんを待ってんの。リアムはどっか行くの?」
「エレンちゃんを? 二人でどこかに行く予定?」
「うん。リーグレーネに、ちょっといい感じの銀細工作ってる職人さんがいるらしくって、見てみたいなぁ、って。で、エレンさんにお願いして、連れてってもらうんだー」
リアムがニコッて笑った。
……この笑い方は、何か企んでる時のだ。ってことは?
「私も一緒に行っていいかな? それとも、女の子だけで楽しく買い物したい?」
そりゃあ、エレンさんと二人の方が、リアムがいるよりは、多分楽しいと思うよ? だいたい、リアムってさ、エレンさんにメッチャ絡むじゃん?
エレンさん、たまーに迷惑そうにしてんだよね。まあ、普段はそこまで嫌がってないけど。
「あたしはどっちでもいいから、エレンさんに聞けば?」
連れていってもらう身だし、エレンさんがオッケーって言うなら、あたしはかまわないよ?
「ふーん……じゃあ、先に行って、エレンちゃんに聞いてこようかな」
「……脅しちゃダメだよ?」
「大丈夫。エレンちゃんにはしないから」
……エレンさんにはしない、んだ……ホントに?
ってか、誰だったら脅すの!? ……あっ、そういえば、将軍は何度か脅されてたよね? イハル兄……はどうなんだろ?
「そうそう。ユノちゃん、待ってるなら、宿舎の中がいいよ? 今日は騎士団が野外訓練なんだって。そろそろ通るんじゃない?」
野外訓練って、ちょっと遠くでやってくるやつだよね? うっわ、遭遇したらまずいし、リアムの言うとおり隠れてよっと。
それにしても、リアムって、妙なことばっか知ってるよね。だって、エレンさんは野外訓練のことなんて言ってなかったよ?
まあ、そこまで将軍と接してないってことなのかもね。
「ちなみに、聞いたのはイハル隊長経由ね。人を介すと面倒だから、そのうちヴァージル将軍に直接聞けるように、間を取り持ってもらうつもりでいるんだよ」
へ、へぇ……そういえば、イハル兄も、いろいろ知ってるよね。ってか、どこで将軍と知り合って仲良くなったのか、いまだによくわかんないんだけど。エレンさんとだって、勝負を挑まれてんのに仲良くなってるし。
あれ? 前に将軍が、リアムと手を組んだっぽいこと言ってなかったっけ? それなのに、直接話ができないの?
「ああ、私は、ヴァージル将軍と連絡を取る術は持っていないよ。だから、イハル隊長に言づけを頼んでいる形だね。もちろん、ヴァージル将軍からの返事も、イハル隊長から聞くしかなくってね。それじゃ、ちょっと不便でしょ?」
ニッコリ微笑んでるけどさぁ……リアムが将軍と直接悪巧みしたら、それこそ太刀打ちできないじゃん?
「じゃあ、ユノちゃんは大人しく待っててね」
「……はーい」
余計なことは言わないように、って顔のリアムに返事をして、とりあえず宿舎の中に入って、っと。
お城の中か、地下通路か、離宮か。どこかわかんないけど、リアムは多分、きっちりエレンさんをつかまえると思う。で、ちゃーんと約束を取りつけて戻ってくる気がするんだよね。
ボーッと見てたら、お城の向こう側がちょっと騒がしくなった。
まずい、って思って、あたしはその場にしゃがみ込んで、両手で口を覆ってみる。ここでしゃべったって聞こえないと思うけど、念のため、ってやつ。
蹄が土を蹴る音がいくつも近づいてきて、だんだん遠ざかっていく。
危なかったー。リアムが教えてくれなかったら、あたし絶対、将軍に見つかってたよ。ってか、見つかっちゃったら、騎士様たちに質問攻めにされそうじゃん?
計画が台無しになっちゃわなくって、ホントよかった!




