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問題は、三日後だよね。
トウガ兄に言わせると、二十を過ぎたら、誕生日を祝われてもそんなに嬉しくないんだって。でもさぁ、将軍にはいっつもお世話になってるし、お礼も兼ねて何か贈るべきじゃない?
甘いものが好きじゃないってことは知ってるけど……そういえば、あんまり将軍のことは話してくれないよね。
今そこにいるんだし、エレンさんに聞いたら、何か教えてくれるかな?
「ねね、エレンさん。将軍の好きなもの、知ってる?」
「……ヴァージルの? 誕生日に贈る物を考えているなら、何でもいいと思うわ。私よりはひどくないけど、やっぱり執着は薄い方だから」
「そうなんだ? 訓練とか、お世話になってるし、お礼も兼ねてって思ったんだけど……何でもいい、って思うと、かえって困るよ」
ニヤッて感じの、ちょっと意地の悪い笑顔になったから、エレンさん、何か知ってる? っていうか、むしろ企んでる?
「本人に聞いてから、っていうのも手だと思うけど?」
「あー、うん、そう……って、今はちょっと無理」
聞くにしたって、あんなことした理由をちゃんと教えてもらって、それから、の話。
きっちり納得できたら、その場でさりげなく、欲しいものを聞くってのもありだけどね。
「もし、人に聞かれたくないなら、ヴァージルをここに呼んでおくわ。私はドナと散歩でもしてくるし、ゆっくり話せると思うの」
他の人には、確かに聞かれたくないかも。んでも、二人きりってのも、ちょっと……最近の将軍の言動が、メッチャ不安なんだよね。
今のあたしに取れるのは、明日にでも将軍に理由を聞いて、一応の片をつけるか。もしくは、三日後に、贈りものを用意してから問い詰めるのか。多分、そのどっちかじゃん?
どっちにしても、あたしが納得できなきゃ、結果は一緒だもん。
「善は急げ、って言うし、できるだけ早めに将軍を呼んでもらってもいい?」
「ええ、もちろん。ユノ嬢の頼みだったら、訓練中のヴァージルでも容赦なく連れ去ってくるわ」
「え、えっと……暇してる時の将軍でいいよ? 忙しい時に連れてこられたら、将軍も困ると思うし」
ってか、その状況で、怒ってる将軍に聞くの、あたしが怖いし。
「だったらなおさら、早い方がいいわ。といっても、私もお腹が空いたし、先に朝食を済ませましょ」
そう言ったエレンさんが、ドナがつないであるか確認して、離宮に向かっていく。途中でクルッと振り向いて、ちょいちょいって手招きしてるね。
ひょっとして、おいで、ってこと?
トコトコついてくと、離宮の中に案内してくれた。
ちゃんと掃除はしてるみたい。埃で汚れてるとことか、見当たらないし。多分、ホントだったら、お城みたいに、ここの廊下も絨毯敷いてあるんだよね? 絨毯って掃除が面倒だから、はがしちゃったのかな?
使ってるっぽい部屋には、ちゃんと絨毯があるから……やっぱ、廊下ははがしちゃったんだね。
「簡単なものしか作れないけど、すぐ用意するわ」
「だったら、あたしも一緒に作るよ」
裁縫じゃなければ得意だし。
「そう? じゃあ、一緒に作りましょ。……うふふっ、ユノ嬢と一緒に料理ができるなんて、本当に役得だわ」
エレンさん、本音があちこちからダダ漏れになってるよ?
貯蔵庫からいろいろ出してきてっと。味つけした溶き卵を炒めてみたり、野菜と細切れの塩漬け肉をスープにしたり。
パンは、ドナの早朝散歩が終わった後で、一日分をもらってくるんだって。朝早くだと、人とほとんど会わないからなんだろうね。足りない食材も、その時に一緒にもらうみたい。
エレンさん、完全にここで生活してるんだね。
パチパチはじける音がして、お肉の焼けるいい匂いがしてきた。
焼いた腸詰め肉もおいしいけど、やっぱあれは、ガイルファラで作ったのが一番おいしい。もちろん、マーハルニーファで作ったのも、そこまで悪くないよ? でも、おいしさで言えば、ガイルファラ産!
逆に、マーハルニーファで作ってる野菜は、どこのよりもおいしいんだよ!
メアンラーエのお魚もおいしいし。
セイライ国はよそから買うしかないって、他の国もわかってるからかな? 国として買えば、どこでも売ってくれるんだよ。だから意外と、セイライ国ではいろんなものが食べられるってわけ。
まあ、その分、外でいっぱい働いてこないといけないんだけどね。
あ、あたしが持ってるお金ってのは、個人分の報酬。それ以外は全部、国に送っちゃうんだって。
それに、宮廷騎士団に所属してるセイライ国の傭兵には、給金って形でお金が入ってくるし。全員分を父さんが受け取って、隊長の特別加算は別に避けて、半分を国に送って残りを全員で等分してるんだって。それでも、結構あるんだよ。
実は、傭兵隊隊長の父さんとか、小隊長たちが結構もらってるっぽい。
できあがった料理はトレイに乗せて、厨房の向かいの部屋に持ってって。
いわゆる、サロンって部屋かな? テーブルとソファと暖炉があるだけで、他には何にもないけど。
「さ、食べましょ」
向かい合ってソファに座って、軽くお祈りしてから。
「いっただっきまーす!」
「いただきます。ふふっ、誰かと食事をするなんて、久しぶりだわ」
「そうなんだ? あたしは、いっつも誰かと一緒にご飯食べてるよ」
っていうか、そもそも、あたしが一人で黙々とご飯食べてるとこが想像できないし。
おしゃべりしながらご飯を食べて。
「じゃあ、あたしは片づけとくから、将軍が暇そうだったら呼んできてもらっていい?」
今すぐつかまるなら、さっさと済ませちゃいたいしね!
「そうね、じゃあ、ちょっと行ってくるわ。この時間なら、どうせ中庭にいるでしょうし」
水を張った桶に、使った食器をそっと放り込んで。石けんをつけたリネンでバンバン洗って、桶の外に積んでく。食器を洗ったら、今度は使った鍋とかを洗って……っと。
全部ピカピカになったら、サーッと水洗い。
あ、そういえばこれ、拭いて片づけた方がいいのかな? ってか、どこに片づけたらいいんだろ?
……んー、とりあえず、拭いて机の上に置いとこっと。




