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コソコソっと遠回りして避けて、離宮の周りを走ってみた。その間も、エレンさんはずっと、ドナとやり合ってたみたい。
で、離宮の前で腕立てとか腹筋とかしてたけど、やっぱりまだやってた。
素振りも含めて、ひと通り終わって休憩してみたんだけど、それでもまだカンカンやり合ってて。
エレンさんの体力すっごいね。
ってか、竜の力に負けないって時点で、腕力も相当すごいと思うけど。
このエレンさん見たら、リノ姉とはいえ、負けたのがわかるよ。シノ姉でも、竜込みだったら、確かに負けるかも。
ぼけーっと見てたら、終わったみたいで、エレンさんがドナに治癒の魔法をかけてこっちに来た。
「退屈させちゃった?」
「ううん。竜と対等だなんてすっごいなぁ、って見てたよ」
「ふふっ、ありがとう」
嬉しそうに笑ってるから、今の、ちゃんと褒め言葉になってたんだよね。
「そういえば、エレンさんって、いつ竜騎士になるって決めたの?」
どんな人でも、やっぱ、そうなるきっかけってあるじゃん?
あたしは、家族みんな剣士で傭兵で、他に思いつかなかったってのもあるけど。
「そうねぇ……剣を握ったのは、確か四歳くらいだったかしら? 兄さんとヴァージルが訓練しているのを見て、真似たのが始まりね。それから、七歳で僧侶の資質もあるとわかって、そっちも勉強しながら剣の訓練をして……八歳の時、騎竜の里でドナに会ってからは、竜騎士になるために槍の訓練も始めたの。初めてドナに乗ったのが十歳の時ね」
……うん、すっごいね。何か、いろいろ普通じゃない。
そりゃあ、セイライ国でも、子供はおもちゃみたいな剣で練習するよ? 感覚がわかんないから、少しずつ重くして、四歳くらいで本物持つことが多いんだけど……エレンさんの言い方だと、いきなり本物いったんだよね?
あ、シノ姉は、二歳で剣をちょこっと持ち上げたって逸話があるけど、それは例外。普通の子だと、まず動かないから。
つまり、エレンさんは元々すごかったってことなんだよね。
「私が剣を持った頃には、ヴァージルは騎士を目指していたから、もう見習い騎士だったわ。十歳で従騎士になるなんて異例のことをしでかすから、その頃から女性関係に苦労はしていたみたいだけど」
エレンさんはクスクス笑ってるけど、それってさ、十歳でもう、縁談申し込まれたりしてたってことだよね? うっわ、ますますイハル兄みたい。
イハル兄は、年上のお姉さんにも押しかけられてたからさぁ……しょっちゅう、傭兵として出てっちゃってたっけ。で、十四の時に決定的なことがあったみたいで、帰ってこなくなっちゃったんだよね。
あ、もちろん、出ていく前にちゃんと挨拶はしてくれたよ? でも、理由は教えてくれなかったからさぁ。
そういえば、あの後、シノ姉はいろいろ言われたみたい。元から数ヶ月単位で見ないシノ姉だけど、戻ってきた時は険悪な女の子に囲まれてたもん。んでもって、何か言っては泣かせてた。
多分、裏でイハル兄と取引してたんだろうね。
きっちりやり返してくるシノ姉に、口以外でケンカ売る人は、さすがにいないだろうし。
「目の前を目標が走ってくれていたから、本当に助かったわ」
「あ、それで、三年の年月をなかったことにしちゃったんだよね」
「あら……それ、ヴァージルが言ったの?」
「うん。いつだったか聞いたよ? その時、エレンさんがまだ二十歳ってのも教えてもらったし」
言ったとたんに、エレンさんがニッコリ笑った。メッチャひんやりした笑顔だよね、うん……。
「まったく、あの男ときたら……ああ、そうだわ。ユノ嬢に、いいことを教えてあげる。三日後が、ヴァージルの二十四の誕生日なの。私はそのちょうど二ヶ月後に、二十一になるのよ」
「へっ? そうなの?」
月は違っても日が同じだから、ケンカしたことありそうだよね。
へぇ……でも、三日後が将軍で、その二ヶ月後がエレンさんなんだね。うん、ちゃんと覚えとかないと。
ってか、今すぐ紙に書いて机に置いとかないと、絶対忘れるよね、あたし。
「ユノ嬢はいつなの?」
「えっと……冬に入るか入らないかくらい? いっつも、母さんがお菓子用意してくれてて、それで誕生日ってわかるんだよね」
あ、今エレンさん、絶対呆れたでしょ? ため息つこうとしたっしょ?
「……マノ隊長に聞くのが確実なのね」
「うん。母さんか、カノ姉なら覚えてるかも」
あたしと父さんは、他人の誕生日はもちろん、自分の誕生日も興味ないから。暑いとか寒いとか、季節で何となく覚えてる程度。
だから、お兄ちゃんたちのマメさは、ホント頭が下がると思うよ? よく覚えてるなぁ、って感心してたもん。
嬉しかった覚えがあるから、寒くなってきた頃があたしの誕生日だと思う。お兄ちゃんお姉ちゃんたちのは、誰がいつか覚えてないし。イハル兄も、一緒にお祝いしてた気はするんだけど……。
「でも、冬が近づいたらユノ嬢の誕生日が来るのね。ふふっ、今から贈り物を考えておかないと」
「んじゃあ、あたしも、エレンさんの誕生日に何か贈るよ。忘れてそうだったら、言って? 覚えてられる自信ないし」
家族は無条件だけど、友達とか親しい仲間から誕生日にもらったら、やっぱお返ししないとね!




